第48章 九様は恋をした?

黒川尊がそう考えていた矢先、まるで人間の感情を持ち合わせていないかのような若旦那が、突然笑顔を見せたのを目の当たりにした。

不気味な冷笑でもなく、恐ろしい嘲笑でもなく、信じられないほど自然な喜びの笑顔だった。まるで万里に渡る氷の山々が一瞬にして溶け出したかのように……

無表情の庄司輝弥でさえ絶世の美男子だったのに、笑顔を浮かべた庄司輝弥は男さえも惚れてしまいそうなほどだった!

黒川尊以外で最も驚いていたのは、老夫人だった。

老夫人は体を震わせながら、突然目を潤ませた。もう随分と……随分と九が笑顔を見せなくなってから時が経っていた。

「九や!何を見てるの?そんなに嬉しそうで?」老夫人は緊張した面持ちで、先ほど見た光景が幻ではないかと恐れるかのように、慎重に尋ねた。

庄司輝弥の表情にはまだ温かみが残っており、普段より柔らかな口調で答えた。「彼女からのメッセージです。」

老夫人はそれを聞いて一瞬固まった後、喜びに満ちた表情を浮かべた。「彼女!九、お前付き合ってる人がいたの?なるほど……なるほど、何か様子が違うと思ったのよ!恋をしていたのね!相手はどんな子なの?年は?仕事は?実家は何をしてるの?名前は?」

傍にいた黒川尊は庄司輝弥の言葉を聞いて、呆然とした。

彼女?

まさか、あの頭の回転が少し遅い雨宮由衣のことを言っているんじゃないだろうな?

庄司輝弥は長い指でスマートフォンを軽くタップしながら答えた。「由衣、雨宮由衣です。」

黒川尊:「……」やっぱりそうか!

老夫人は真剣な表情で頷いた。「由衣?素敵な名前ね!もう、彼女ができたのになぜおばあちゃんに言わなかったの?おばあちゃんはずっとお前が早く落ち着くことを願っていたのよ。そばに女の子がいて面倒を見てくれるのが一番いいわ。お前の周りはみんな粗野な男ばかりで、人の面倒なんて見られないでしょう!早く彼女を連れてきておばあちゃんに会わせなさいよ!」

庄司輝弥の機嫌は明らかに良く、その提案を拒むことなく答えた。「彼女に聞いてみます。」

老夫人は喜びを抑えきれない様子で、「そうそう、彼女によく説明してあげてね。怖がらせないように。緊張することないって言っておいて、ただの顔合わせよ!」

「はい。」

「由衣ちゃんは何か好きな食べ物はある?苦手なものは?キッチンに前もって準備させないと!」