第48章 九様は恋をした?

黒川尊がそう考えていた矢先、まるで人間の感情を持ち合わせていないかのような若旦那が、突然笑顔を見せたのを目の当たりにした。

不気味な冷笑でもなく、恐ろしい嘲笑でもなく、信じられないほど自然な喜びの笑顔だった。まるで万里に渡る氷の山々が一瞬にして溶け出したかのように……

無表情の庄司輝弥でさえ絶世の美男子だったのに、笑顔を浮かべた庄司輝弥は男さえも惚れてしまいそうなほどだった!

黒川尊以外で最も驚いていたのは、老夫人だった。

老夫人は体を震わせながら、突然目を潤ませた。もう随分と……随分と九が笑顔を見せなくなってから時が経っていた。

「九や!何を見てるの?そんなに嬉しそうで?」老夫人は緊張した面持ちで、先ほど見た光景が幻ではないかと恐れるかのように、慎重に尋ねた。