彼女に誰かを紹介するの?
おばあ様がわざわざ紹介したい人って、誰なのかしら?
雨宮由衣は不審そうな表情でおばあ様の傍らについて歩いた。
リビングを通り、中庭に入ると、見覚えのある人影が不意に目に飛び込んできた。
数本の貴重な牡丹の前に、すらりとした背の高い人影が立っていた。
栗色の巻き髪の女性は、カジュアルなキャメル色のコートを着ていた。特別に美しいというわけではないが、端正で気品があり、落ち着いた雰囲気を持っていた。その所作の一つ一つから自然と漂う高貴な優雅さは、真の名家でなければ醸成できないものだった。女性らしい端正さと優雅さを持ちながら、眉間には男性にも引けを取らない凛とした気配が漂っていた。
これぞ都会随一のレセブ——秋山若葉!
転生してからこれほどの時を経て、ついに再会した。
その人を認めた瞬間、雨宮由衣の瞳孔が急激に縮んだ。天敵を目の当たりにしたかのように、本能的に全身の警戒心が一気に高まった。
「由衣、この子は私の甥の孫娘の秋山若葉よ。九の親友でもあるの!」おばあ様が誇らしげな口調で紹介した。
おばあ様の声を聞いて初めて、由衣のざわめく頭がやや冷静さを取り戻した。数々の記憶が一気に押し寄せてきた。
庄司輝弥の亡き祖父には秋山満雄という義兄弟がいて、秋山若葉はその孫娘だった。
秋山若葉の立場は、おばあ様が軽く言った「九の友人」という言葉では片付けられないものだった。
彼女は庄司輝弥の右腕であり、庄司輝弥の側近として誰にも代えがたい存在だった。
会社でも、家族の中でも、そして水面下の勢力においても、秋山若葉は極めて高い威信を持ち、誰もが未来の当主夫人と目していた。
しかし、前世で庄司輝弥が娶ったのは自分であって、彼女ではなかった。
庄司輝弥のような男は、確かに恐ろしい存在だが、時折見せる優しさは女性の心を揺さぶるものだった。特に、周囲の反対を押し切って自分を娶り、庄司夫人の地位を与えてくれた時は、心が揺らがなかったと言えば嘘になる。
前世では、変えられないなら受け入れようと思ったこともあった。
しかし、現実は彼女を幾度となく失望させた。
秋山若葉の手腕からすれば、直接手を下して庄司輝弥の機嫌を損ねるような低レベルな手段は使わない。彼女は数言で、無数の人々に代わりに動かせた。
影流はその最たる例だった。