帝都、庄司グループ本社。
井上和馬は電話を受けた後、表情を変え、急いで社長室のドアをノックした。「九様、たった今学校から電話がありまして、庄司夏様が発作を起こしたとのことです!」
庄司輝弥はその言葉を聞くと、書類の山から顔を上げ、無表情で言った。「車を用意しろ」
「はい!」井上和馬は予想通りの表情を浮かべた。
庄司夏様は手に負えないほど反抗的で、誰も制御できず、両親の言うことさえ聞かない。そのため、老夫人は当主に特別な注意を払うよう言い付けていた。もし何かあれば、当主は軽ければ責任を問われ、重ければまた疑いをかけられることになるだろう。
清風学園では、校長と極少数の上層部だけが庄司夏の身分を知っていた。
庄司輝弥が直接来ると聞いて、校長は早くから裏門で待っていた。到着すると、自ら保健室まで案内した。
「どうして突然発作を起こしたんですか?」傍らで井上和馬が尋ねた。
校長は汗を拭い、ケアが不十分だと責められることを恐れ、急いで答えた。「それは...それは...リハーサル中に少し驚いてしまって...」
「驚いた?」井上和馬は首を傾げた。リハーサルで何に驚くというのか?
校長は困った表情で答えた。「彼と対戦相手の女子生徒の容姿が...少し怖かったようで...」
井上和馬:「えぇ...」
その女子生徒というのは...まさか雨宮さんでは...
「状態は?」庄司輝弥が口を開いた。
「今は大丈夫です。少し熱があるだけで、点滴を打っています」
清風学園、保健室。
全員が去った後、保健室には雨宮由衣と庄司夏だけが残され、にらみ合いの状態となっていた。
袖を掴まれたままで、仕方なく雨宮由衣は口を開いた。「どうした?もう一度裏庭に行きたいのか?」
病気なので刺激したくなかったのに...
その言葉が落ちた瞬間、彼女をしっかりと掴んでいた指が「シュッ」という音と共に引っ込んだ。
雨宮由衣は効果に満足し、手を引っ込めながら言った。「言うべきことは昨夜すべて言ったはず。無駄な努力はやめなさい!」
井上和馬と当主が保健室のドアに着いた時、中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。この声は...まさか雨宮由衣!
まずい!なぜ彼女もいるんだ?