「はっくしょん!」雨宮由衣が言い終わると、風に吹かれてくしゃみをした。
仕方がない、彼女は最前列に座っていて、入り口の正面だったので、冷たい風が彼女に向かってビュービューと吹き込んでくる。
天候の変化により、この時間になると多くの保護者たちが慌てふためいて、自ら来るか、家の使用人を遣わしてハニーたちに服を届けに来ていた。
雨宮由衣が雪を冒して寮に毛布を取りに戻ろうかと考えていた時、ふと向かいの教室棟のA組の入り口に見覚えのある人影を見かけた。
その人を見た瞬間、雨宮由衣の表情が一変し、パッと立ち上がった。
お兄ちゃん……
沢田夢子が薄手のワンピース姿でクラスから出てくると、入り口で雨宮靖臣が手提げ袋から長めの綿入れコートを取り出し、しっかりと沢田夢子を包み込んだ。彼女の手を取って温度を確かめ、すぐに心配そうな表情で何かを話しかけていた。