雨宮由衣は複雑な心境の中で、その手袋を受け取った。
嬉しくない……
手を繋いで雰囲気を和らげれば、彼の怒りも収まるかと思ったのに!
でも、今の状況で、彼は本当に怒っているのかどうか……
感情鈍いのはまだいいけど、無表情だし、こんな彼氏を持つなんて本当に大変。全く心が読めない……
雨宮由衣が残念そうにため息をついている間、周りの人々は入り口にいる絶世の美男美女のカップルに驚きのあまり言葉を失っていた。
「私...私、何を見てるの...雨宮由衣が...本当に彼氏がいるなんて...」
「しかもめちゃくちゃイケメンじゃない!」
「庄司夏よりもスペックが上だって言うのは全然大げさじゃないわ!この顔だけでも十分でしょ!」
周りの噂話を聞きながら、藤原雪はその場で固まったように動けなくなり、顔色は異常なほど蒼白になっていた。まるで何か恐ろしいものを見たかのように。