沢田夢子は胸が高鳴っていたが、突然、庄司輝弥がF組の方向に向かっているのを見て、顔色が一変した。
庄司輝弥は雨宮由衣を探しに行くの?
そうなると、みんなが庄司輝弥と雨宮由衣の関係を知ることになるじゃない?
あのバカ女、さぞ得意になるでしょうね!
そう考えると、もう一刻も座っていられなかった。まるで自分のものを奪われたような気分だった。
絶対にダメ!
その時、沢田夢子は何かを思いついたのか、突然興奮した表情を浮かべた。
違う!もう終わりだわ!雨宮由衣、今日で終わりよ!今頃まだ庄司夏の服を着てるんじゃない?
ハッ!雨宮由衣のバカ、庄司輝弥みたいな男をしっかり掴まないで、庄司夏に惑わされるなんて!
今日こそ、あの子の努力を水の泡にしてやる!
でも、庄司夏に庄司輝弥...二人とも庄司姓...何か関係があるのかしら?庄司って珍しい姓なのに。
沢田夢子の瞳に疑念が浮かんだが、すぐに頭から追い払った。
庄司夏の家柄がどんなに良くても、庄司家とは関係ないはず。それに庄司夏は深都から転校してきたんだから、実家はせいぜい地元の有力者程度でしょ。
「きゃーーー!来た来た!本当に私たちのクラスに来たわ!」
「誰を探してるの?服を届けに来たの?」
「うわぁ!まさか!一体誰なの?」
F組の女子たちは完全に取り乱していた。
庄司輝弥が近づいてくるのを見て、雨宮由衣は思わず机の下に潜り込みたくなった。
熱い芋でも触るように服を庄司夏に押し付けながら、「は・や・く・服・を・着・て!!!」
庄司夏は冷たく鼻を鳴らした。「着ない!」
雨宮由衣は歯ぎしりしながら、「早く着なさい!殴るわよ!」
庄司夏はふふっと笑って、「じゃあ、ズボンも脱いじゃおうか?」
雨宮由衣:「……」節操はどこへ!
話している間に、庄司輝弥は教室の入り口まで来ていた。
傍らにいた井上和馬は、雨宮由衣が手に持って押し付けている服を見て、そして上半身裸の庄司夏少爷を見て、完全に混乱してしまった。
やばい!これは一体どういう状況だ!
もう頭がおかしくなりそう!
雨宮由衣は井上和馬の世界の終わりのような表情を見て、黙って顔を手で覆った。もう忘却川に飛び込んでも洗い流せないわ、くそ……