雨宮由衣が目を覚ましたのは翌朝のことだった。
広々とした部屋は静まり返り、窓の外はすでに晴れ渡り、空は洗い流したように青く、空気には草木と土の新鮮な香りが漂っていた。
名も知らぬ小鳥が枝先で跳ね回りながら鳴き、羽をバサバサと羽ばたかせてすぐに遠くへ飛び去っていった……
「目が覚めたか」
雨宮由衣が窓の外へ飛んでいく小鳥をぼんやりと見つめていると、突然低い声が耳元に響いた。
雨宮由衣が横を向くと、庄司輝弥が彼女のベッドの横の椅子に座っているのが見えた。片手には書類を数枚持ち、もう片方の手は……なんと彼女がしっかりと抱きしめており、しかも自分の胸元に押し付けていた。
雨宮由衣は驚いて、急いで庄司輝弥の手を放した。何か言おうとしたが、喉が火で焼かれたようで、唇もひび割れていた。
「動くな」
庄司輝弥は書類を置き、綿棒に水を含ませて、彼女の唇を丁寧に拭った。そして彼女を起こし、ベッドの枕元にあった水を彼女の唇元まで持ってきた。
雨宮由衣は反射的に口を開け、適温の水が乾いた喉を潤し、たちまち楽になった。
「私、どうしたの?」水を飲み終えた由衣は不思議そうに尋ねた。
確かリビングで問題を解いていたはずなのに、なぜ一瞬で寝室に?しかも夜が明けている?
「熱を出していた」庄司輝弥は答え、表情が少し冷たくなったように見えた。「自分では気付かなかったのか?」
雨宮由衣は熱が下がって目覚めたばかりで、まだ少しぼんやりとした表情で呟いた。「昨夜は少し具合が悪くて、頭がぼーっとしていたけど、数学の問題を解いていたせいだと思って、気にしなかったの……」
庄司輝弥の表情が冷たくなっているのに気付き、雨宮由衣は思わず布団の中に身を縮めた。
庄司輝弥は結局何も言わず、身に纏っていた冷気を強引に収め、そばにあるメイドを呼ぶベルを押した。
雨宮由衣は我に返ると、目の前の男性を不思議そうに見つめた。なぜ目が覚めた時から彼がここにいるのだろう、ちょうど来たところなのだろうか?
すぐにドアがノックされ、メイドがお粥の入った椀を持って入ってきた。
庄司輝弥は自ら受け取り、「少し食べろ」と言った。
気のせいかもしれないが、庄司輝弥は相変わらず怖そうに見えるものの、口調はいつもより柔らかいような気がした。