第225章 自ら診察する

井上和馬は目を見開き、目の前の光景を信じられない思いで見つめていた。

おかしいことに、人間との接触を最も嫌うスルートが、今や雨宮由衣のそばに寄り添って大人しく横たわり、毛を引っ張られたり手足を抱きしめられたりしても、彼女を引き裂くことはなかった！

しかし、雨宮由衣の様子がどこか変だ。

井上和馬が胸騒ぎを感じ、由衣の異変に気付いた瞬間、傍らから人影が素早く歩み寄り、白の胸から由衣を抱き上げた。

「我孫子先生を呼んでこい！」

「はい！」井上和馬は冷や汗を流しながら、急いで飛び出した。

もし由衣に何かあれば、この屋敷の者たち全員が道連れになるかもしれない！

三十分後、錦園全体が明かりで照らし出されていた。

全ての使用人が血の気を失い、居間で震えながら一列に並んでいた。屋外に黒い車が停まり、白髪の老人が若い男に支えられて降りてきた。

二人は井上和馬の案内で、急いで屋内へと向かった。

錦園の上空全体が暗雲に覆われているようだった。

我孫子先生と彼の首席弟子が到着した時、ベッドに横たわる少女と、ベッドの縁に座り、少女に手を強く抱きしめられている庄司輝弥の姿があった。

少女の顔を見た瞬間、傍らの若い弟子の瞳に驚きの色が走った。

この少女は余りにも美しかった。病で頬を赤く染め、虚弱そうな様子でさえ、極限まで美しく、噂の凶暴な当主をここまで心配させるのも納得できた。

まさに美人薄命というべきか。この少女はいったいどんな重病なのだろう？

「ご面倒をおかけします、我孫子先生」

庄司輝弥はそう言いながら、少女の腕から自分の手を抜こうとした。

しかし、少しでも動こうとすると、少女は苦痛に満ちた表情を見せ、最後の救いの木のように、さらに強く抱きしめた。

庄司輝弥は老人を見て言った。「このままでは脈を取れませんか？」

我孫子先生はそれを聞いて軽く咳払いをした。「申し訳ありませんが、それは難しいでしょう。診断結果に影響が出てしまいます」

彼は若い当主が長期の不眠で体調を崩したのかと思っていたが、患者は彼ではなく、一人の少女だった。

庄司輝弥は少し躊躇した後、力を込めて腕を抜き、少女の手を脈枕の上に優しく置いた。

男が手を引き抜いた瞬間、少女の目から悲しそうな涙が零れ落ちた。

我孫子先生は躊躇なく、弟子に診させることなく、自ら少女の脈を取った。