庄司夏はもちろんのこと、傍らに控えていた井上和馬も少し呆然としていた。丸二年もの間、雨宮由衣がどれだけ騒いでも無駄だったのに、今回は様々な条件を出したものの、ご主人様が本当に折れたのだ。
彼女はまだ高校も卒業していない小娘で、家族との関係も最悪。この二年間、贅沢三昧な生活を送り、出入りの際にはボディーガードや使用人が付き添っていたのに、今突然一人で外に出すなんて、どうやって生きていけるというのだろう?
もしかして、ご主人様は戦略を変えて、外で苦労させて自ら彼の側に留まることを望ませようとしているのだろうか?
庄司夏は勢いよく立ち上がった。「雨宮由衣、頭おかしくなったの?こんな不平等な契約に署名するなんて?」
雨宮由衣は、せっかくまとまりかけた話が台無しになることを恐れ、すぐに彼を睨みつけた。「私が大好きな彼に身を捧げたいのよ、何か問題でも?」