車を降りて、試験会場に入る前に、雨宮由衣は雨宮靖臣にメッセージを送った:「お兄ちゃん、センター試験が終わったら、会えないかな?」
以前、彼女は沢田夢子が学校でしたことについて兄にメッセージを送ったが、予想通り、兄からは何の返事もなく、電話をかけても全く出なかった。
今日のメッセージも、いつものように、まるで石を深い海に投げ込んだかのように、返事はなかった。
雨宮由衣はしばらく待ったが、結局携帯の電源を切り、雑念を払い、深く息を吸って、試験会場に入った。
まあいい、今は自由に行動できるのだから、試験が終わったら、いつでも会いに行けるはずだ。
その後の二日間、雨宮由衣は精神を集中させ、全力で試験に挑んだ。
二日目の午後、最後の数学の試験も終わり、彼女の高校生活もついに終わりを迎えた。
雨宮由衣は試験会場を出て、頭上の青い空を見上げると、心身ともにすっきりとし、まるで新しい人生を得たかのような気分だった。
周りの生徒たちは、まるで牢獄から解放された小鳥のように、迎えに来た両親に向かって歓声を上げながら駆け寄っていった。
雨宮由衣は人混みを見つめていると、突然目の前でちらりと見覚えのある後ろ姿が……
お父さん……?
でも、もう一度見た時には、その人影はもう消えていた。
きっと恋しさのあまり幻を見たのだろう……
「由衣!」
その時、後ろから江川麗子の声が聞こえ、傍らには風間川治がいた。
二人は偶然にも彼女と同じ学校で試験を受けており、上の階の試験会場にいた。
「由衣姉、試験どうだった?きっと上手くいったでしょう!」風間川治は興奮気味に尋ねた。
「まあまあかな。二人はどう?」雨宮由衣は聞いた。
風間川治は照れくさそうに頭を掻きながら、「数学の最後の大問は空白のままだったよ。あまりにも変態的で、見たことないような問題だったんだ!みんな範囲外じゃないかって話してたよ!」
雨宮由衣は軽く咳払いをして、「そんなに難しかった?」
実は範囲外ではなく、ただいくつかの知識を巧みに組み合わせて作られた大問だった。
庄司輝弥が特訓で出した地獄級の難問と比べれば、大したことはなかった。
もともと彼女はそこそこの点数が取れればいいと思っていた。数学であまり点を落とさなければ、文系の成績なら帝都メディア大学に合格するのは問題ないはずだった。