第326章 寿宴に来る

「雨宮昇平は今、小さな会社で働いていて、自身の生活すら困窮している状態だ。彼の娘といえば、有名な不良少女で、しかも醜い容姿の持ち主だ。そんな彼女が黒田悦男に釣り合うはずがない。黒田悦男にしても黒田グループにしても、目が見えなくなったわけでもない限り、雨宮由衣なんか見向きもしないだろう」

「そうよね！私も聞いたけど、当時は雨宮昇平が黒田悦男と黒田グループに無理やりこの婚約を認めさせたんだって...実際、当時黒田悦男が好きだったのは雨宮望美だったのに...」

「噂話とはいえ、嘘とは思えないわ。あの雨宮由衣は醜いだけじゃなく、体重も驚くほどで、とても太っているの。あんな太くて醜い姿で、誰が彼女と結婚したいと思うでしょう？当初、権力を笠に着て、卑劣な手段で黒田悦男と雨宮望美を引き離さなければ、黒田悦男の婚約者の座なんて、彼女のものにはならなかったはずよ」

雨宮由衣の容姿について、これらのメディア記者たちのほとんどは伝聞で、実際に見たことはなかった。

しかし、皆が口を揃えて雨宮由衣は醜くて性格が悪いと言うので、それほど違いはないだろう。

噂を何度も聞いているうちに、嘘も真実になってしまう。世間の噂とはそういうものだ。

メディア記者たちは数時間ほど待機し、この場所を行き来する芸能人の数も次第に減少し、雨宮家の屋敷での来客の出迎えもようやく終盤を迎えていた。

しかし、多くの記者はまだ帰ろうとしなかった。雨宮様の誕生日会の最中に、新たなニュースが飛び出す可能性も否定できないからだ。

人気芸能人の酔った姿を捉えることができれば、この待機も無駄ではない。

さらに30分ほど経過し、雨宮様のお祝いに来た人々はほぼ全員到着し、新たな来客は見られなくなった。

夕方になって、一台のタクシーがゆっくりとこの場所に入ってきた。高級車が並ぶ中、その少し古びたタクシーは特に目立っていた。

「道を間違えたんじゃないか...」

タクシーを見た数人の記者は困惑の表情を浮かべた。雨宮家の誕生日会に、タクシーで来る人などいるはずがない。

雨宮家の警備員は規制区域の外でタクシーを止め、私有地なので通行禁止だと告げた。

運転手はタクシーを停め、少し不機嫌そうに後部座席の三人家族を振り返った。