第289章 まったく良い趣味だ

もともと橋本羽が終わったら、会社は必ず宮本旭を押し上げて、橋本羽の位置を埋めるはずだった。しかし今、橋本羽は元気なだけでなく、人気も評判も上がっている。そのうえ、彼は桧山春樹にずっと押さえつけられている。

そう考えると、周藤史良は冷笑を浮かべた。「雨宮白か...よし!俺の邪魔をしただけでなく、俺のテリトリーで好き勝手やるとはな!今度こそ、全ての借りを返してもらおう!」

ボスがそう言うのを聞いて、部下は少し安心した様子で、すぐにお世辞を言った。「武志さんがいれば、誰が来ても大丈夫ですよ!」

太った男は何度もお世辞を言いながら、ソファに座る顔色の悪い若い男の方をちらりと意味ありげに見た。

「他に用か?」周藤史良は不機嫌そうに彼を一瞥した。

「いいえ!ありません!」

「用がないなら、さっさと消えろ」周藤史良は明らかに向かいの等々力辰のことばかり考えていて、邪魔されて不満そうだった。

「はい、はい、すぐ行きます!すぐ行きます!」太った男は察して、素早く部屋を出て、わざと扉をしっかりと閉めた。

太った男が去った後、広いオフィスには二人だけが残された。

周藤史良は指で机を軽く叩きながら、眉間に苛立ちの色を浮かべた。「等々力、私の忍耐にも限界がある...」

等々力辰は何か屈辱を受けたかのように、瞳孔が急激に収縮し、氷のように凍りついた。

周藤史良はその様子を見て、偽善的に優しい口調に変えた。「ああ、等々力よ、なぜそんなに頑固なんだ?私についてくれば何が悪い?」

周藤史良は話しながら、ゆっくりと等々力辰の前まで歩み寄り、声を引き延ばしながら続けた。「お前が素直に言うことを聞けば、お母さんの医療費も私が面倒を見てやる。それに、お前を売れっ子にしてやるぞ...」

周藤史良が近づいてきたため、等々力辰の体は弓のように緊張し、先ほどから脇で握りしめていた拳は、今にも爆発しそうだった。

周藤史良は彼が反抗できないと確信して、にこにこしながらさらに近づき、手を等々力辰の肩に置いた。「等々力よ、十八歳から二十一歳まで、もう三年も私に逆らい続けているな。まだこの我儘を続けるつもりか?

芸能人の全盛期なんてほんの数年だ。お前にはあと何個の三年が残っている?