第291章 彼は私の人だ

周藤史良は服の襟を整え、怒りを抑えながら歩み寄った。

ちらりと見ると、雨宮白の手にあるのは確かに引継ぎ書類だった。

周藤史良は顔を曇らせ、素早く契約書と書類に目を通し、万年筆を取り出して、いくつかの確認書に署名した。

周藤史良は深く息を吸い、「これでいいか?」

「ありがとうございます!」雨宮由衣は満足げに書類を片付けた。

「さっさと出て行け!」周藤史良は腹に火がついていた。

丸三年、ついさっきやっと等々力辰を手に入れられそうだったのに、このガキに邪魔されてしまった。

雨宮白のような生意気なガキは、いつでも懲らしめられる。だが今日の等々力辰は絶対に逃がさない。

等々力辰は今日の周藤史良が簡単には自分を見逃してくれないことを知っていた。周藤史良が客を送り出すような不機嫌な表情を見せ、二人の業務引継ぎも完了し、あの見知らぬ男が去った後、また周藤史良と二人きりになることを考えると、顔が一瞬で青ざめた……

案の定、周藤史良が署名を終えると、男はそれ以上留まることなく、ゆっくりと立ち上がった。

等々力辰は氷の窟に落ちたかのように、心臓が底まで沈んでいった……

しかし男が立ち上がった瞬間、その輝く瞳が突然彼に向けられ、心が揺らいだ。

そして、男が彼を見つめながら言った。「等々力辰くんだね?私と来てもらおうか」

等々力辰は不意に相手の視線と合い、その場で固まってしまった。

自分に話しかけているのか?

等々力辰だけでなく、周藤史良も瞬時に表情を変えた。「雨宮白!何のつもりだ?」

男は眉を少し上げ、長く白い指で書類のある箇所を軽く指し示した。「周藤総監、先ほどご覧になっていなかったのですか?」

「何をだ?」周藤史良は苛立たしげな表情を浮かべた。

男は意味ありげに彼を一瞥し、物憂げな様子で口を開いた。「等々力辰は、今や私の人間です」

「何を...言っている?」周藤史良の表情が突然こわばった。

傍らの少年も同様に固まり、彼の言葉の意味が理解できないようだった……

「言ったでしょう。等々力辰は、今や私のタレントです」男は再度繰り返した。

周藤史良は冷笑を漏らした。「ふん、お前の人間だと?大口叩くな。等々力は三年前から俺の名義で契約している!お前に何の権利がある?」

男は当然のような口調で、「先ほどの確認書にもはっきりと書かれています」