芸能界は巨大な名利の場であり、階級がはっきりとしている。デビューがどれほど早くても、知名度がなければ最底辺に位置し、虫けらのように誰からも踏みつけられる存在だ。
この三年間、等々力辰はそのことを痛いほど理解していた。最初は自分の権利のために戦おうとしたが、やがてすべてに対して何も感じなくなっていった。
林浩は隣の若手タレントに目配せをした。若手タレントはすぐに意図を察し、肩で等々力辰を強く突き飛ばした。「すみませんが、これから撮影が始まるので、邪魔にならないように出て行ってもらえますか?」
以前なら、等々力辰はすぐに立ち去っただろう。しかし昨夜のマネージャーの忠告を思い出し、一瞬足を止めた。
若手タレントは意地悪そうに嘲笑った。「日本語が分からないんですか?こんなしつこい人見たことないわ。先輩、売名に必死過ぎじゃないですか?大物に取り入って得意になってるくせに、新人の撮影現場にまで出しゃばってくるなんて」