「竜の台頭は近年の大友先生の自信作なのに、まさか……」
会場の来賓たちは一瞬呆然となった。雨宮由衣が贈ったものは一体何なのか、大友照が'竜の台頭'と交換してまで欲しがるとは?
宴会場の来賓どころか、雨宮弘本人も困惑の表情を浮かべていた。
「はっはっは、雨宮の親父、この前まで私の竜の台頭を気に入っていたじゃないか……さあさあ、交換しようよ!」大友照は熱い眼差しで、雨宮弘に向かって話しかけながら、その目は骨細工から離れることはなく、その中には並々ならぬ熱意が込められていた。
対応策を考えていた雨宮由衣は大友照を見て、茫然自失の表情を浮かべた。
えっと、私は誰で、ここはどこで、何が起きているの……
彫刻の名匠・大友照が、'竜の台頭'と、彼女が骨董市場で百元で買った'正体不明の物'を交換したいだって?
「雨宮の親父、これで決まりだ。これは私が持って帰る。明日すぐに竜の台頭を持ってこさせよう。」大友照は骨細工を自分の方に引き寄せ、返す気配が全くない様子だった。
雨宮家の当主である雨宮弘は、並外れた洞察力の持ち主だ。すぐさま「それを返せ」と言い放った。
「なんだ、交換しないのか?お前、これは縁起が悪いって言ってたじゃないか」大友照は途端に不機嫌になった。
「今は交換しない」雨宮弘は無表情で言った。
「お前…なんてケチなんだ。じゃあこうしよう、竜の台頭に孔雀南東飛を加えよう!」大友照は歯を食いしばった。
「孔雀南東飛?!」
主賓席のテーブルから、驚きの声が上がった。
'孔雀南東飛'は大友照の初期の作品で、'竜の台頭'には及ばないものの、やはり並の作品ではなかった。
「雨宮の親父、絶対に交換するなよ。大友のこいつ、今まで損したことなんてないんだから!」里村教授が真っ先に我に返り、急いで忠告した。
「交換しない」雨宮弘は力強く言い切った。
それを聞いた大友照は失望の表情を浮かべ、非常に不本意ながら骨細工を雨宮弘に返却したが、その目は依然としてそこから離れなかった。
大友照が極めて不本意ながら骨細工を雨宮弘に返却した後、主賓席の年配者たちは皆、好奇心を持って骨細工を観察した。
しかし残念ながら、彼らには何も分からなかった。
見識の広い雨宮弘でさえ、何も見出すことができなかった。