「なんてこと!見て!入り口にいるのは橋本羽じゃない?」
「あの事件の後、芸能界から姿を消していたのに、今日突然現れるなんて!本当に引退して海外で隠居生活するのかと思ってたのに!びっくりした!」
「そんなわけないでしょう。災い転じて福となす、今や若手俳優のトップスター、人気絶頂よ!今回の件で加瀬哲哉や宮本旭よりも格上になったわ!」
先日の橋本羽の一件は芸能界全体を揺るがし、誰もが注目していた。そんな中、長らく姿を見せなかった橋本羽が突然公の場に現れ、瞬く間にすべての視線を集めた。
当時、芸能界全体が橋本羽は今回で終わりだと思っていた。ユニバーサルまでも見放す準備をしていたと聞いていたのに、状況は一転。橋本羽は没落するどころか、この件で地位を固め、人気と評価は頂点に達し、芸能界の正義の象徴となった。以前の不評が大きかった分、今では絶大な人気を誇っている。
芸能界は上に媚び下を踏む世界。橋本羽が窮地に陥った時は皆が遠ざかったのに、復帰となれば今度は皆が近づいてきて取り入ろうとする。
さらに、橋本羽の隣にいる見慣れない顔にも多くの注目が集まった。
「ちょっと待って!橋本羽の隣にいるの誰?すごくイケメン!」
「知らないわ、見たことない。ユニバーサルの新人?」
興味津々で、すでに誰かが前に出て尋ねていた。「羽さん、この方は?」
「友人の雨宮白です」
「ユニバーサルにこんな素敵な新人がいたなんて知らなかったわ!」
「彼はマネージャーです」と橋本羽は答えた。
雨宮由衣はタイミングよく今日作ったばかりの名刺を差し出した。「はじめまして、こちらが私の名刺です」
「マネージャー?」相手は一挙手一投足に独特の雰囲気を漂わせる若い男性を驚いた様子で見つめた。
芸能界にもタレント並みのルックスを持つマネージャーはいるが、これほど若くてイケメンというのは珍しい。
橋本羽がなぜ突然新人マネージャーとこんなに親しくなったのか?まさか、マネージャーを変えるつもりじゃないよね……
雨宮由衣も一度で何か仕事を取れるとは期待していなかった。ただ橋本羽の側について顔を売り、同時に会った人々を全て記憶に留めた。
芸能界という場所は、いつどのコネクションが役立つかわからないものだ。
橋本羽は雨宮由衣を連れて何人かの知人と挨拶を交わした後、片隅に座って雑談を始めた。