橋本羽は驚愕した。情場を股にかけ、若い男たちを手玉に取ってきた新津香織が赤面するのを初めて見たのだ。
自分が連れてきた手前、橋本羽は彼女が度を越してしまうことを心配し、急いで彼女を連れ出した。
橋本羽が車を運転する中、雨宮由衣は助手席に座っていた。完全に酔っ払っているらしく、焦点の定まらない目で彼の顔をじっと見つめていた。
橋本羽は彼女が酔いすぎて気分が悪いのかと思い、運転しながら隣の青年の方を少し向いて尋ねた。「どうした?吐きそう?車にゴミ箱があるぞ!」
助手席で、青年の目が次第に焦点を取り戻し、彼の顔を見つめ続けながら、ふっと微笑んだ。その笑みは目元から溢れ出し、夜の闇の中でその瞳は千の木々に咲く白い花のように輝いていた。「ふふ、こんな綺麗な顔を見て、吐きたくなるわけないでしょう?」
「キィー!」という音とともに、橋本羽は大通りで「S字」を描いてしまった……
……
ヒヤヒヤの末、ようやく車はマンションに到着した。
橋本羽は急いで彼を玄関まで支え、早く部屋の中に放り込みたい一心だった。
こいつは……本当に酒癖が悪すぎる……
酔っ払って女の子に手を出すのはまだしも、男にまで手を出すなんて!
先ほど車の中で見せた彼のあの微笑みを思い出すと、心臓が数拍抜けた気がした。
「お前という厄介者…」
以前は雨宮白の彼女が厳しすぎると思っていたが、今は彼の彼女に同情を禁じ得なかった……
橋本羽はため息をつきながら彼を支えてエレベーターを出て、前に進もうとした時、玄関前に一人の人影を見つけた。
あの……庄司九だ……
雨宮白の友人……
男は何かの正式な場から直接来たようで、真っ黒なスーツを着ていた。完璧な仕立ての服が長身の体つきを際立たせ、煙のように冷たい眉、高い鼻筋、墨のように深い瞳、薄い桜色の唇が、極限まで美しい完璧な顔を形作っていた。
あまりにも威圧的なオーラのせいで、空間全体が息苦しく感じられた。
男の骨まで凍りつくような視線が自分に向けられ、まるで不倫現場を押さえられたような奇妙な感覚に襲われた。
橋本羽は一瞬の後に我に返り、慌てて口を開いた。「あー、庄司様、雨宮白を探しに来られたんですか?こいつ、酔っ払ってまして……」