等々力辰が化粧室から出てきた時、全員の目が輝いた。
それまで髪が長すぎたせいで、等々力辰は全体的に暗い印象だったが、今は黒髪を短く切り、前髪も整えられ、清潔で豊かな額と極めて美しい目が露わになっていた。
メイクを落とすと生気のない欧米風の二重まぶたとは違い、等々力辰の目は特に古風な雰囲気を持つ切れ長の目で、二重の弧は非常に自然で流麗だった。薄い唇は自然な桜色で、見ているだけでキスしたくなるような魅力があり、肌は毛穴一つない程に繊細だった。
等々力辰の服装は雨宮由衣の以前の要求通り、派手すぎないようにしていた。上着はシンプルなクラシックスタイルの白いシャツで、唯一の装飾は襟の星の刺繍だけで、下は黒いズボンだった。
このメイクと服装はシンプルで清潔感があり、等々力辰本来の気質と相まって、淡い冷たさと距離感を醸し出し、誰もの青春の記憶の中にある、美しくも懐かしい、しかし手の届かない影のようだった。