その雰囲気は先ほどの雨宮望美に劣らず、むしろ、悠然と歩む落ち着いた表情は、より一層主人としての風格を醸し出していた。
挨拶を交わした後、雨宮由衣はついに本題に入った。「本日は、ご親族や友人の皆様がお集まりの機会に、少しお時間を頂戴して、一つご報告させていただきたいことがございます!」
報告?
会場からは即座にざわめきが起こり、雨宮由衣が一体何を言い出すのかと、好奇の目が注がれた。
この時、老会長はすでに執事の荒井明邦を呼び、あらゆる事態に備えるよう指示を出していた。
荒井明邦は目を輝かせ、すぐさま警備員たちを呼び寄せ、近くで待機させた。
雨宮靖臣は壇上を睨みつけながら、グラスいっぱいの酒を一気に飲み干した。
澄んだ声が宴会場に響き渡る——
「皆様ご存知の通り、私は黒田グループ執行社長、黒田悦男様と婚約関係にございます。」
ここまで聞いて、参列者たちは案の定という表情を浮かべた。やはりそのことについて話すのだと。
「これは...主権を主張して、相手を追い詰めようとしているのか?」
「あの二人が仲睦まじくしているのを見て、完全に無視されているから焦っているんでしょう」
「雨宮昇平が今こんな状態で、家から追い出されて借金まみれなんだから、彼女が黒田悦男という大木にしがみつくのも当然でしょう!」
人々が私語を交わす中、壇上で少女は続けた。「しかしながら、大変申し訳ございませんが、本日この場をお借りして、私、雨宮由衣は、ただ今より黒田悦男様との婚約を正式に解消させていただくことをご報告申し上げます!」
雨宮由衣の最後の言葉が響き渡った瞬間、広大な宴会場内は水を打ったように静まり返った。
誰もが雨宮由衣が今何を言ったのか理解できずにいた......
しばらくして、静寂に包まれていた宴会場は突如として騒然となった。
「今、雨宮由衣が何て言った?婚約解消?正気を失ったのか?」
「ガムのように黒田悦男にしがみついていた雨宮由衣が自ら婚約解消を?あり得ない」
「嘘でしょう!信じられない...」
......
壇上で、黒田悦男の表情は一瞬にして極限まで冷え切った。
雨宮由衣が自ら彼との婚約解消を持ち出すなんて?