第353章 一つの事を宣言する!

雨宮靖臣は腹立たしさのあまり、もう構わないと思い、ただ雨宮由衣が一歩一歩と壇上の黒田悦男と雨宮望美の方へ向かっていくのを見つめるしかなかった。

「だから言っただろう。彼女は黒田悦男を見るだけで理性を失うって。今なら私の言葉を信じてくれるだろう!」雨宮靖臣の瞳の底に潜む暗い色の中に、一筋の痛みの色が隠れており、グラスを握る指は白くなるほど力が入っていた。

あのろくでなしさえいなければ、妹との関係がこんなことにはならなかったのに……

二宮美菜は娘を見つめる視線に心配の色を浮かべ、「靖臣、由衣をそんな風に言わないで。由衣は今回本当に変わったわ。もう衝動的な行動はしないと信じているの……」

雨宮昇平はため息をつき、何も言わなかった。たとえ娘が感情を抑えきれず衝動的に何かをしたとしても、父親として娘の幸せすら守れない自分に、彼女を責める資格も、止める資格もないのだから。

壇上に近づいていく赤い姿に気づくと、その場にいた全ての人々の視線が、黒田悦男と雨宮望美から雨宮由衣へと移った。

雨宮由衣のその容姿と気品は余りにも人目を引くものだった。彼女がいる場所では、自然と全ての視線が集まってしまうのだ。

黒田悦男は、ゆっくりと壇上に上がってくる少女を見て、表情が徐々に冷たくなっていった。

正直に言えば、今日の雨宮由衣は確かに彼の目を見張らせるものがあった。しかし、それだけのことだ。彼は落ちぶれた男の娘を、何の価値もない女を妻にはしない。

そんな女は愛人や寝物として持つことはできても、黒田悦男の妻となる資格は絶対にない。

雨宮由衣のこのような執着は、男としての虚栄心を満たすものではあったが、やりすぎれば嫌われるだけだ。特に今日のような大切な日に。

雨宮由衣が近づいた瞬間、黒田悦男はすぐに雨宮望美を自分の側に引き寄せて守るような姿勢をとり、警戒心を露わにした表情で「雨宮家の次女様、何かご用でしょうか?」

雨宮由衣の絵のように美しい眉目に、ゆっくりと微笑みが広がり、丁寧に「黒田さん、マイクを少しお借りできますか?」と尋ねた。

その微笑みは、まさに……妖艶で……魅惑的で……人々の心を虜にするものだった……

会場からは一斉に息を呑む音が聞こえ、黒田悦男でさえ一瞬怔然としたが、鋭い双眸を細め、黒く沈んだ瞳で目の前の少女を観察するように見つめた。