一家が出ようとしたその時、後ろから二宮家秀の声が聞こえた。
「姉さん……」
二宮美菜は足を止め、二宮家秀を感情のない目で見つめた。
かつてこの弟をどれほど可愛がっていたかと同じくらい、今は失望している。失望が積み重なりすぎて、もはや悲しみさえ残っていない。ただ麻痺しているだけだった。
「姉さん、本当に引っ越すの?」二宮家秀が尋ねた。
二宮美菜は娘の方を見て、目が決意に満ちた。「ええ、長い間お世話になったわ」
「姉さん、私は……」二宮家秀はため息をついた。「姉さんと義兄さんが昔私たちを助けてくれたことは分かってる。申し訳ない、私も本当に困っていて……それで、会社の方は、義兄さんはまだ来てくれるの?」
傍らに立っていた雨宮由衣は冷笑した。これだけ話して、結局父が会社に来るかどうかが知りたいだけなのね。