第358章 いい思いをしておきながら調子に乗る

一家が出ようとしたその時、後ろから二宮家秀の声が聞こえた。

「姉さん……」

二宮美菜は足を止め、二宮家秀を感情のない目で見つめた。

かつてこの弟をどれほど可愛がっていたかと同じくらい、今は失望している。失望が積み重なりすぎて、もはや悲しみさえ残っていない。ただ麻痺しているだけだった。

「姉さん、本当に引っ越すの?」二宮家秀が尋ねた。

二宮美菜は娘の方を見て、目が決意に満ちた。「ええ、長い間お世話になったわ」

「姉さん、私は……」二宮家秀はため息をついた。「姉さんと義兄さんが昔私たちを助けてくれたことは分かってる。申し訳ない、私も本当に困っていて……それで、会社の方は、義兄さんはまだ来てくれるの?」

傍らに立っていた雨宮由衣は冷笑した。これだけ話して、結局父が会社に来るかどうかが知りたいだけなのね。

一人を何人分も働かせ、まるで牛馬のように使い、こんな便利な労働力を手放したくないのは当然だわ。

このおじさんには全く経営能力がない。この間、父がいたおかげで、どれだけ楽をしていたことか。

でもこの一家は、いいところだけ取って、図々しい態度を取り続けている。

両親が答える前に、雨宮由衣が口を開いた。「従姉妹の言う通り、子供として両親を外で苦労させるわけにはいきません」

この一言で、二宮家秀一家との関係を完全に切り離した。

親戚として面倒を見るならまだしも、この恩知らずの一家は他人以下だった。

後ろで、北条敏江はそれを聞いて慌てた。「そんなことできないわ!会社にはまだ途中の仕事がたくさんあるのよ!彼がこのまま去るなんて、あまりにも無責任すぎるわ!」

雨宮由衣は微笑んだ。「あら、無責任ですって?それなら父に社長になってもらって、最後まで責任を持ってもらいましょうか?そういえば、この会社は元々父が投資して作ったんですよね?」

「あ、あんた……夢でも見てるの!」北条敏江の顔色が一変した。

「おばさまほど夢見がちではありませんよ」雨宮由衣は言いながら、軽く笑って、落ち着いた口調で続けた。「おばさま、そんなに緊張しないでください。家も会社も、私たちは興味ありません。捨てた骨を拾い集めるような趣味はないので」

その言葉には、明らかに彼らを豚や犬以下だと嘲笑う意味が込められていた……