第359章 絶対に私を見捨てない

「お父さん、お母さん、心配しないで。私が兄を説得するから」雨宮由衣は両親を慰めながら、瞳の奥に冷たい光が走った。

兄の今の状況を考えると、目を覚まさせるには強い薬が必要だわ。よく計画を立てないと……

「由衣はいい子ね！」娘を見て、二宮美菜と雨宮昇平はようやく少し安心した。

別荘には専属の管理人がいて、毎月清掃を行っているので、長期間人が住んでいなくても、きちんと整頓されていた。

家の中の高価な調度品は既にオークションで売られていたが、他のものはまだ残っていた。

雨宮由衣はこの見慣れた場所を見つめ、思わず目が潤んできた。

やっと家に帰ってきた……

実は、この小さな建物は場所が良いだけで、土地が高価なだけだった。母がこの周辺の環境を気に入っていたので、これまでずっと住んでいて、何年も引っ越さなかった。家自体はそれほど大きくなく、年月が経っているので古くなっていた。

将来、お金を稼いだら、もっと良い家を買ってあげよう。

雨宮由衣は両親を心配させたくなかったので、渡辺光の下で働いていることはまだ話していなかった。ただ、以前友人を助けたことがあり、その友人が最も困っていた時にお金を貸したこと、家は友人が恩返しとして買い戻してくれたこと、そして今はその友人のスタジオで手伝いながら実習していることだけを話した。

家族三人は久しぶりの再会で、長い時間話し込んだ。

彼女のことの他に、二宮美菜と雨宮昇平が一番聞きたがったのは、彼女のごく普通で実直な……彼氏のことだった。

「由衣ね、あなたの好きな人って……もしかして雨宮白という友達じゃないの？」二宮美菜は探るように尋ねた。

「えっと……その友達じゃないわ……お母さん、私が黒田悦男のように騙されて、同じ轍を踏むんじゃないかって心配してるでしょう？でも大丈夫、私の彼は絶対に利益のために私を裏切ったり、お金や権力のために見捨てたりしないから！」

雨宮由衣はこの言葉を平然と言い切った。

ふふっ……だって庄司輝弥なんだもの……

彼自身がお金と権力の化身なんだから、どんなお金も権力も彼を誘惑できないわ……

「私たちの関係がもっと成熟したら、必ず彼を紹介するわ！」

うん、悪魔様をもっと「普通」に見せる方法を考えないと……

……