第386章 危機重なる

庄司家の屋敷。

シャネルの最新オートクチュールを身にまとったセレブが、ソファに座り、心を込めて老夫人にお茶を淹れながら、優しく言った。「お祖母様、九兄がしばらくご不在なので、小百合はお祖母様がお寂しくないようにと思って、お伺いさせていただきました。」

老夫人は數珠を手に持ちながら、表情を変えることなく頷いた。「ええ、気遣ってくれてありがとう。でも、私のことは心配しなくていいのよ。あなたたち自身のことを大切にしなさい。」

セレブは急いで相槌を打った。「お祖母様のおっしゃる通りです！実は、お祖母様の お相手なんて、私がすべきことではないのですが、ただ...」

セレブは意図的に言葉を切り、老夫人の様子を窺ってから続けた。「聞くところによりますと...九兄のあの方も一緒に行かれたそうで、九兄がいらっしゃらない間、若葉姉は会社の仕事で忙しくて、手が回らないと。それで私が余計なことかもしれませんが、伺わせていただきました。お祖母様、どうかお気になさらないでください！」

老夫人はそれを聞いて、數珠を回す手を一瞬止めた。「由衣が九と一緒にB国へ行ったというの？」

「はい、お祖母様はご存じなかったのですか？私が余計なことを申し上げてしまいました！」セレブは、自分が失言したかのような表情を浮かべた。

「由衣がどうして九と一緒に行くことになったの？」老夫人は尋ねた。

「それは...」老夫人に問われ、セレブは困ったような表情で話し始めた。「おそらく雨宮さんと九兄の仲があまりにも良すぎて、離れたくなかったのでしょう！」

「朝からずいぶん騒いだそうで、体調が悪いと言ったかと思えば、今度は悪夢を見て九兄に危険が及ぶような夢を見たとか言って、どうしても九兄を行かせたくないと。九兄も仕方なく、一緒に連れて行くことにしたそうです！」

老夫人はこの話を聞いて、平静な表情に僅かな陰りが差した。

特に「九兄に危険が及ぶ」という言葉を聞いた時。

旧家の人間はこういったことを特に忌み嫌う。たとえ何気なく言った言葉でも、やはり不快に感じずにはいられない。

ただ九を引き止めたいがために、こんな言葉を軽々しく口にするなんて？

老夫人は目を閉じ、心の中で長いため息をついた。

結局まだ若くて、未熟なのね...