第351章 私には見向きもしない

黒田悦男は正義感に満ちた表情で言い終わると、すぐに雨宮由衣の方を向いて言った。「私と由衣には元々何の感情もありません。ただ雨宮おじさんが権力で押し付けただけです。今まで表面を取り繕ってきたのは、すでに人としての道理を尽くしたからです!」

黒田悦男の言葉を聞いて、雨宮靖臣は握り締めた拳を振り上げそうになるのを必死に抑えた。

明らかにこの野郎が利に目がくらんで義を忘れ、父親が失脚するや否や雨宮望美と密会するようになり、噂を立てられるのを恐れて婚約を即座に解消しなかっただけなのに、今では耐え忍んでいたかのように言い、なんと厚かましい!

雨宮靖臣は心の中で冷笑を繰り返しながらも、あえて何も言わず、意味ありげに雨宮由衣の方を見た。

案の定、黒田悦男を見るや否や、雨宮由衣は萎縮し、最初から最後まで一言も言えなかった。