影流と蘇我保司の怪我が重かったため、日本に入国後、まず近くの場所で治療を受けることになった。
落ち着いてから、ずっと気になっていた一同は、ようやく十一から事の顛末を聞くことができた。
十一は自分に向けられた視線に応えながら、最初から説明を始めた。「あの時、確かに由衣様を安全な場所まで送り届けたのですが、到着後、由衣様が突然、立ち去ることを拒否したんです!」
「立ち去ることを拒否?」井上和馬が呟いた。
「はい、私たちはみな怒りました。以前ホテルにいた時、命がけの状況なのに、服や化粧品の入った箱を持って行くと言い張って...今回もまた我儘を言うのかと思いましたが、実は...」
思い出しながら、十一の声は興奮気味だった。「彼女が持ち出すと主張した箱の中身は、全てデスローズを偽装するための小道具だったんです...」