第451章 あなたは蜜餞より甘い

庄司雅道は実際それほど恐れるに値しない。老夫人の手腕なら、彼のことを突き止めるのは時間の問題だ。厄介なのは彼の背後にいる人物だ。

そしてその黒幕が誰なのか、彼女にも分からなかった。

「分かりました。老夫人の方で何か情報があれば、すぐに連絡してください」と雨宮由衣が言った。

井上和馬は即座に頷いた。「承知しました!」

雨宮由衣は眉を少し上げて、「井上執事は私をそんなに信用してくれるの?」

井上和馬は、あのスパイがすでに死んでいることを知っているはずだ。彼女が知っているそれらの情報は、スパイから聞いたものではない。理屈の上では、彼は彼女の正体を疑うべきだった。

井上和馬は落ち着いた表情で言った。「私は結衣様を信じています。そして九様の人を見る目も信じています」

雨宮由衣は笑みを漏らした。「なかなかいいわね。あの人よりずっと悟りが高いわ!」

井上和馬は雨宮由衣が誰のことを言っているのか分かっていた。軽く咳払いをして、「影流は...ただ少し生真面目なだけで...」

雨宮由衣はそれ以上何も言わず、手を振って言った。「あなたの当主様を見に行くわ!夜の薬はもう煎じてあるでしょう?私が持って行くわ!」

「はい、準備できています。持ってまいります!」

しばらくして、雨宮由衣は井上和馬から薬椀を受け取り、階段を上って寝室へ向かった。

「ギィ」とドアを開ける音がした。

庄司輝弥がバルコニーの籐椅子に寄りかかって座っているのが見えた。目の前の丸テーブルには急須とお茶、一冊の本が置かれており、夜風に本のページがそよそよと揺れていた。

珍しく、仕事をしていない庄司輝弥の姿を見た。

なぜか、そこに静かに座っている庄司輝弥は、まるで天地の間にただ一人だけが存在するかのような寂しさを感じさせた。

庄司輝弥は仕事をしているときは神のような存在で、全てを計画通りに掌握している。しかし、突然暇になると、まるで道に迷った人のように、突然自分がどこへ向かうべきか分からなくなったかのようだった。

この男は...

仕事以外に楽しみがないのだろうか?

遊んでサボることは人間の本能ではないのか?

病気で休める貴重な機会なのに、自分で楽しみを見つけることもせず、ただそこに座って考え事をしているなんて!

雨宮由衣は薬を持って諦めながら近づいた。「お薬の時間よ!」