しかし、彼はもう一度確認する必要があった。
等々力辰のさっきの演技は、単なる偶然の幸運なのか、それとも本当にそれだけの実力があるのか。
そう考えた蘇我隆治は即座に口を開いた。「第十三幕、第七場、それぞれ自分の理解で演じてみなさい!」
蘇我隆治の言葉とともに、興奮していた人々は一瞬にして息を潜め、緊張した面持ちで二人を見つめた。
弾幕で南聖のファンたちは不満げに反論し始めた……
[まだ終わってないよ!何を急いでるの!さっきのは運が良かっただけかもしれない!]
[そうだよ、等々力辰はさっき小賢しいことをしただけ。南聖は一人で演じたから効果が薄かっただけで、等々力辰は南聖を利用して演技したんだ!ずるいよ!]
……
等々力辰は周りの反応に気を取られず、蘇我隆治が第十三幕、第七場と言った時、一瞬表情が凍りついた。
この場面は、雨宮兄が直接指導してくれた上に、特に重点的に説明してくれた場面だった。まさか蘇我監督がこれを選ぶとは。
等々力辰が呆然としている間に、南聖はすでに状態を立て直して演技を始めていた。
さすがは専門的な訓練を受けた俳優だ。南聖はすぐに最高の状態に調整し、次のシーンに入っていった。
「シュッ」と南聖は剣を抜く仕草をし、瞬時に相手に向かって攻めかかった。眉間に宿る殺気と憎しみは実体を持ったかのようで、画面越しに全ての観客の目に届くほどだった……
[す...すごい!これが南聖の本当の実力なんだ!たった一つの眼差しだけで、背筋が凍るような感覚!]
[血に飢えた悪魔を完璧に演じきった!]
皆が南聖の突然爆発したさっき以上に素晴らしい演技に感嘆している中、等々力辰は密かに比較検討していた。
南聖のさっきの演技方法は、雨宮兄に指導される前の自分の演技方法とまったく同じだった。
もし雨宮兄がこの場面について教えてくれていなかったら、きっと自分も南聖と同じような演技をしていただろう。
しかし今は……
南聖の演技は満場の喝采を浴び、彼のマネージャーである吉田正もほっと胸をなでおろし、副監督とプロデューサーも何度もうなずいていた。
しかし、中央に座る蘇我隆治の表情は少しも変わらず、直接等々力辰の方を見て、「等々力辰、始めなさい!」と言った。