今回は公開オーディションだったので、吉田正が投資家を探しても無駄だった。制作側はこれほどの世論リスクを冒してまで途中で配役を変えるはずがない。
「配役が変わったって、誰に変わったの?」雨宮由衣は心の中の疑念を押し殺し、平然と尋ねた。
アシスタントは目を泳がせ、口を開くのを躊躇い、おずおずとファックスを渡した。「これは...制作側から今しがた届いたファックスです。雨宮兄、ご自分で見てください。主要キャストの一覧です。午後には公表されます!」
雨宮由衣はファックスを受け取り、一目で目を通した。次の瞬間、男性二番手の林楽天役の後ろに、はっきりと「宮本旭」という二文字が書かれているのを見た。
「宮本旭?」その名前を見た後、雨宮由衣は思わず眉をひそめた。
やはり...誰なのか、そんなに大きな力を持っているのか。彼女がここまでやったのに、制作側が突然配役を変更できるなんて。