第534話 すごそうな感じ

千メートルから三千メートル、五千メートル、そして一万メートルまで、十一と若い護衛の表情は、困惑から驚愕へ、そして恐怖へと変わり、最後には目を見開いて言葉を失っていた。

十一はストップウォッチを見つめながら、唾を飲み込み、当主の方を振り向いて一瞥した。

三ヶ月なんて必要ないじゃないか?

千メートルに慣れただけで、もう元気いっぱいじゃないか?

まさに...異常すぎる...

実は最初、彼も雨宮由衣は単に普通の人より力が強いだけだと思っていたが、まさか体力もこれほど恐ろしいとは。

だから、もう...教えることは何もないんだが...

そう思った瞬間、雨宮由衣の輝く期待に満ちた瞳と目が合った。「十一コーチ、走り終わりました!次は何を学びますか?」

十一は喉が詰まり、当主に助けを求めるような視線を送った。

庄司輝弥は隣の少女を見て尋ねた。「何を学びたい?」

雨宮由衣はすぐに答えた。「実戦です!走るだけじゃ面白くないですよ!」

庄司輝弥:「十一に訓練場に連れて行かせよう。」

雨宮由衣は何度もうなずいた。「はい、いいですよ!お兄さんは付き添わなくていいです。鍼灸の時間ですから、私が訓練を終えたら我孫子先生のところに行きます!」

庄司輝弥:「ああ。」

最初から最後まで抵抗できない十一:「...」

...

訓練場。

早朝、そよ風が吹き抜け、心地よい空気が残りの眠気を一掃した。

「十一コーチ、来ましたよ!」雨宮由衣は訓練着に着替え、腰まで伸びた黒髪をポニーテールに結び、凛々しい姿で現れた。

「ああ...」十一は雨宮由衣を見つめ、苦しそうにうなずいた。

「十一コーチ、今日は何を学びますか?」雨宮由衣は期待を込めて尋ねた。

「えーと、こうしよう。今日は格闘技の基本を教えましょう!」しばらく考えた後、十一は決めた。

力は千の技を破る。あの夜バーでは、雨宮由衣は主に力の優位性があった。もし格闘技を身につければ、効果は倍増するだろう。

雨宮由衣は興奮した表情を浮かべた。「十一コーチの格闘技は、暗殺衛士の中でもトップクラスですよね!」

その言葉を聞いて、十一は誇らしげな表情を浮かべかけたが、すぐに暗い表情に変わった。

暗殺衛士になる前、彼は自分の戦闘能力に絶対の自信を持っていた。誰をも恐れず、何度も暗殺衛士部隊総隊長の座を争った。