セラ大橋の状況は非常に特殊だった。
セラ川の両岸を結ぶ唯一の橋として、その存在自体が奇跡と呼べるものだった。
それは大災害の前から存在していた建造物だ。
災厄を経ても、なお屹立している。
セラ川に架かる他の忘れ去られた橋の廃墟に比べて。
この大橋は自然と濃厚な歴史の気配と神秘的な色彩に包まれていた。
かつて、この大橋は呪いの地として見なされていた。
なぜなら、その当時。
大橋を渡ろうとする冒険者は誰もが、川面に突然立ち込める霧と狂風の中で姿を消してしまったのだ!
翌日になると。
人々は川面に彼らの浮かぶ死体を目にすることになった。
ある説によると、これらの死体こそが「水魔」の起源だという。
時が経つにつれ。
大橋は自然と呪いを帯びた恐ろしい建造物として認識されるようになった。
しかし、後にこの誤解は徐々に解かれていった。
船でセラ川を渡ろうとした者も、橋を渡る時と同じ運命を辿ったからだ。
一連の探索を経て、人々はついに呪いは大橋にあるのではなく、底知れぬこの川そのものにあることに気付いた!
「セラ川の底には恐ろしい魔物が潜んでいる」という噂も広まり始めた。
それ以降、ほとんどの人々は川を渡ることを諦めた。
パラマウント荘園と寶石都市は完全な断絶状態に置かれた。
そしてある日。
知恵と勇気を兼ね備えた一人の冒険者がこの地にやって来た。
慎重な調査と研究の末、彼はセラ川を安全に渡る方法を発見した。
それは一年で最も寒い数日間に、大橋を直接渡るというものだった。
霧も立ち込めず、狂風も吹かない。
なぜなら、その時期のセラ川は分厚い氷に覆われているからだ!
その冒険者はセラ川を初めて渡り切った人物となった。
彼は寶石都市へ行き、そしてこの地に戻って来た。
人々の支持を受け、彼は自らの手でパラマウント荘園を建設した。
「機転の阿蘭」という名声は、こうして広まっていった。
他人が誤って入り込まないよう。
アランは大橋の入り口に堅固な砦を建設した。
砦の近くには二つの警備隊が駐屯している。
そして大橋の鉄門の鍵は、アランの密室に隠されていた。
これにより、あの分厚い鉄門を開けることができるのは領主本人だけとなった。
アランの名声を考慮して、冒険者たちも文句を言う勇気はなかった。
みな大人しく厳冬の到来を待つだけだった。
しかし、予期せぬ事態が起こった。
昨年の冬、アランは鉄門を開かなかった。
領主府の「気象術師」は、昨冬は気候が暖かすぎて、川面の氷の厚さが足りず、渡河は危険だと主張した。
そのため、寶石都市へ向かおうとしていた冒険者たちは曙光町に足止めされることとなった。
彼らは更に一年待つことにした。
しかし、待ち続けた結果。
今年の冬も大橋は開放されないという知らせが届いたのだ!
……
以上が、ロジャーが10枚の銅令を使って集めた関連情報だった。
告示は最近貼り出されたばかりだった。
掲示板の前には人が群がっており、ざっと見ても五、六十人はいて、みな屈強な冒険者たちだった。
彼らは小声で議論し、それぞれの意見を述べ合っていた。
不満をこぼす者もいたが、小声で呟くだけだった。
しかし、誰一人として領主府の決定に異議を唱える勇気はなかった。
アランの威信の程が窺える。
その告示をもう一度丁寧に読み返した後。
ロジャーは町の中へと歩き出した。
……
曙光町の状況は、ロジャーが想像していたよりも良好だった。
整然と並ぶ家々と縦横に走る街路は、明らかに合理的な計画に基づいて作られていた。
衛生状態も同様に良好だった。
街路には動物の糞を専門に処理する作業員までいた。
「完備された下水道システムまであるとは。」
「桐麻町とは大違いだ。」
ロジャーは心中で感嘆した。
アランがこれほどの称賛を得ているのも理由のないことではないようだ。
少なくとも町の計画と統治の面では。
ロジャーは時代を先取りした多くの輝かしい点を目にした。
例えば。
曙光町には情報交換のための専用区域があった。
それは簡易な木造の屋根が架けられた広場だった。
それぞれの木造の屋根の下には、異なる情報交換の区域が設けられていた。
「農場地區」、「冒険者区」、「公共事務區」、「商業街」などだ。
人々は各区域の掲示板を読むことで最新の情報を得ることができた。
また、少額の費用を支払えば、自分の要望を対応する掲示板に貼ることもできた。
これにより、住民たちのコミュニケーションの需要が大いに満たされていた。
掲示板だけなら、ロジャーは桐麻町でも見たことがあった。
しかし、このように上から下まで整然と設計されたものは。
確かに初めて目にした。
広場の入口には、文字の読めない住民のために代筆を行う露店が何軒もあった!
曙光町の繁栄ぶりが窺える。
……
ロジャーは曙光町を一日中歩き回った。
最後に、町はずれにある雑貨屋の前にやってきた。
この雑貨屋は「商業街」の掲示板で見つけたものだった。
冒険者向けの専門店だという。
ロジャーが店に入ってみると、確かに商品が非常に充実していた。
彼は欲しかった「顯影藥水」を手に入れただけでなく。
ついでに「猛男ベルト」の隠しポケットの在庫も補充した。主な内容は以下の通り:
……
「石灰袋:生石灰、盲目化効果があり、水に触れると発熱する」
「閃光瓶:光素が充満した黒い瓶、割れると閃光術の効果を発する」
「煙玉:投擲物、人を咳き込ませる霧を発生させ、敵の視界を遮る」
……
残念ながら「強酸瓶」と「臭い玉」は品切れだった。
そうでなければロジャーも少し買っておきたかった。
結局、世渡りというものは。
備えあれば憂いなしだからな。
……
雑貨屋を出た時にはすでに夕暮れ時だった。
曙光町は夜間半外出禁止制度を実施しているため、ロジャーは炭火の宿への帰り足を速めた。
セラ大橋の件は確かに厄介だった。
明日、町でコネを探してみようと考えていた。
領主府と繋がりが持てないか、より有用な情報が得られないかと。
農場地區の小道を歩きながら。
ロジャーも手持ち無沙汰ではなく、領主府の学者が編纂した一般的な魔物の手引書を夢中で読んでいた。
歩いているうちに。
彼の足取りが次第に遅くなっていった。
見られているような感覚!
次の瞬間、ロジャーの背後から暗い風が襲いかかってきた。
本能のように雲梯術を発動。
ロジャーは身を躍らせて距離を取り、振り返ると、虎のような顔つきの……
亀?!
「ジョニータートルか?」
ロジャーは彼を襲撃しようとしたこの魔物を認識した。
この亀の甲羅は直径約1メートルで、地面に伏せるとマンホールのようだった。
彼は素早く望氣術を放った。
……
「ジョニータートル LV22 生命力470 防禦力49 弱雷」
「特性I:絶対防御」
「絶対防御:ジョニータートルは四肢と頭を甲羅の中に引っ込めることができ、この状態では防禦力が大幅に上昇する」
「特性II:猛襲」
「猛襲:ジョニータートルは極めて素早い移動速度を持ち、特に全力で襲撃する際には、その移動速度は大幅な加算値を得る」
……
ロジャーが一瞬ぼんやりしている間に、そのジョニータートルは猛烈な勢いで襲いかかってきた。
その目標は、明らかにロジャーの腰に付けた膨らんだポーチだった!
ロジャーは軽やかに後方へ跳び、反対の手で青銅の剣を抜き、激しく突きを放った!
ガチャンガチャン!
剣先がジョニータートルの首筋を掠め、甲羅の上に鋭い電光を走らせた。
「やはり絶対防御か」
ロジャーは歯を食いしばり、少し心痛めながら青銅の剣を収めた。
地面のジョニータートルは機敏に四肢と頭を伸ばし、銳利で不気味な牙を空気にさらし、ロジャーに向かって低い咆哮を発した。
それは一歩一歩と迫ってきた。
ロジャーは一歩一歩と後退するしかなかった。
彼は先ほど魔物の手引書を読んでおり、この生き物についてある程度理解していた。
このジョニータートルこそが、現在のパラマウント荘園最大の脅威だった!
3環の魔物の名に恥じない、驚異的な防禦力を持つだけでなく、移動速度も大多数の冒險者を上回っていた。
彼らは人を傷つけはしないが、同様に悪事を働く。
パラマウント荘園の住民のほとんどが、ジョニータートルに盗まれたり奪われたりした経験があった。
食料、武器、金銀、衣服……
ジョニータートルは何でも欲しがった!
屬性から見ると。
こいつは体力が高く防禦力も高く、非常に倒しにくい。
最も厄介なのは。
彼らの復讐心が特に強いことだ!
一度でも挑発して殺しきれなかった場合、それは間違いなく後々まで禍根を残すことになる。
この種の魔物に対しては、「機転の阿蘭」でさえ手を焼いていた。
……
ロジャーはこの種の魔物が好きではなかった。
40以上の防禦力。
おそらく赤月刃でなければ防御を破れないだろう。
しかも一撃で、赤月刃の耐久性が大幅に減少するはずだ。
「もういい、割に合わない」
ジョニータートルとしばらく戦った後、ロジャーは撤退を決意した。
彼は雲梯術を発動し、戦いながら退却した。
しかしジョニータートルの速度はロジャーの想像をはるかに超えていた。
雲梯術の加護があっても、完全に振り切ることができなかった。
炭火の宿に近づいた頃。
ロジャーの表情がついに暗くなった。
彼は足を止め、周囲を見回してから、精巧な腕輪を取り出して手首に着けた。
ジョニータートルが猛烈な勢いで襲いかかってきた。
ロジャーの唇が動いた。
「ミストラ第七呪文」!
青白い電光が彼の手のひらから放たれた。
恐ろしい光弧が森の夜空を切り裂き、魔物に激しく打ち込まれた。
……
「ジョニータートル1体を倒した」
「25XPを獲得した」
……
次の瞬間。
ロジャーは地面に横たわる焦げた魔物を呆然と見つめた。
思わず感嘆の声を上げた:
「わぁ~お~」
……
「寿命が31536000秒増加した」
……