065 マイルストーン:冷酷無情

農場の空き地で一時間以上もがんばった。

ロジャーはようやく哀れなガーゴイルを解放した。

後者は大赦を受けたかのように、普段の倍の速さで飛び去った。

仕方がない。

殴られるだけで反撃できない練習相手なんて、人のすることじゃない。

思う存分の打撃を加えた後。

ロジャーは実戦での心得をいくつか掴むことができた。

「股間狙いの蹴り」も「膝当て」も。

その最も理不尽な点は実は「集中力削減」にあった!

集中力は非常に見落としやすい属性だ。

一般的に。

戦闘前に自分の集中力状態を確認するのは詠唱者だけだ。

やはり低い集中力は詠唱成功率に深刻な影響を与えるからだ。

他の職業にとって、集中力の高低はそれほど重要ではない。

しかしロジャーは気付いた。

この二つの奥義による集中力削減は致命的なものだった!

魔獣のガーゴイルでさえ、膝当てを食らった後はよろめき、一時は飛行能力さえ失った!

これは一般人が膝当てを食らった場合。

東西南北も分からないほどの重症になる可能性があることを意味する。

この発見によってロジャーは二つの奥義をさらに高く評価するようになった。

秘傳書に記された「平沙派黑虎」は。

彼の心の中で曲風マスターに次ぐ位置まで上がった。

「秘傳書はアランが持ってきたもので、彼は寶石都市に行ったことがある。」

「八さんが言っていた、寶石都市は清泉宗本部の山門がある場所だ。もしかしてそこには他の武術門派もあるのかな?」

「黒虎師匠は他の奥義も残しているのだろうか。」

奥義を習得したロジャーは少し落ち着かない気持ちになった。

仲間と手合わせしてみたい気持ちが強かった。

しかし今夜はそれは無理だろう。

キッチンにはまだ数百キロの亀肉が処理を待っているのだから!

……

夜になって。

ロジャーはリビングとキッチンの間を行き来しながら、着々と作業を進めていた。

地下室に貯蔵された活力ポーションはすでに100本を超えていた。

販売ルートを探しながら、新しいものを作り出す時期でもあった。

ロジャーは自分が薬剤師であることを忘れていなかった。

一人前の薬剤師として、様々な新型ポーションの製造に挑戦することは必須だった。

唯一の残念なことは。

農場に生き物、つまり実験対象が不足していることだった。

そう考えると、ロジャーは思わず軒先のガーゴイルに目をやった。

魔獣は経済的ではあるが。

不便な点もあるのだ!

「この忙しい時期が過ぎたら、町でウサギを何匹か買わないと。」

ロジャーは考えながら、慣れた手つきで草莎紙を広げた。

彼は「薬理分析と推演術」を試みていた。

ミストラの薬剤学は材料を適当に混ぜ合わせた結果ではない。

それは一定の薬理に従っているのだ。

基本原理を理解した者だけが、薬剤師になれる。

ロジャーは草莎紙に活力剤の学名を書き、続いて他の材料も書き出した。

特定の論理的枠組みに従って。

彼の筆は次第に速くなっていった。

十分後。

彼は無表情で草莎紙を丸めて、ゴミ箱に投げ入れた。

そばのるつぼに新しいガラス瓶を取り付けながら。

ロジャーは深い思考に陥った:

「おかしい。」

薬理推演がおかしいのではなく、彼の状態がおかしかった。

何となく落ち着かない感じがする。

この感覚は以前にも何度か経験があり、その度に良くないことが起きていた。

屍羅妖討伐の途中で感じた時だけは、結果が良かった。

顔を洗った後、占いをすることにした。

望氣術がゆっくりと発動する。

ロジャーは息を殺し、自分を対象に選んだ。

占い。

……

「今日は危険に遭遇する」

……

かすかな動悸。

データ欄に。

……

「占いの結果:危険が近づいていることを感知した。それほど強くはないが、的中する直感だ」

……

「やはり。」

ロジャーは深いため息をついた。

少し考え込んだ後、キッチンとリビングを見渡し、最後に白地に赤い模様の腕章に目を留めた。

占い。

……

「潜在的な危険は紅袖兄弟會と関係がある」

……

「占いの結果:危険の源を理解した。二つの斥候隊が死んだことを、紅袖兄弟會が簡単に許すはずがない。彼らはいつでも報復してくる可能性がある。早ければ今夜にも」

……

ロジャーは眉をひそめた。

占いの結果は通常、彼の潜在意識の投影だった。

いわゆる悪い予感とは、実は彼自身が危険の到来を予測していたということだ。

占術はただの補助的な役割しか果たせない。

「紅袖ブラザーフッドのことか?」

ロジャーの目が次第に冷たくなった:

「ただの盗賊の集まりが、兄弟を名乗るとは」

……

深夜の森羅農場には、まだ微かな明かりが残っていた。

数人の怪しげな人影が、周囲に仕掛けられた罠や警報を熟練の技で避けながら、大きな木造の家に近づいていった。

これは9人の小隊だった。

8人の斥候と1人の魔法杖を持った中年の詠唱者で構成されていた。

全員が夜行衣を着用し、右腕には白地に赤い模様の腕章を付けていた。

「待て!」

先頭を行く者が屋根の上の黒い影を指さし、警戒の声を低く上げた:

「ガーゴイルだ!」

他のメンバーは規律正しく足を止めた。

全員が緊張してそのガーゴイルを見つめていた。

ガーゴイルは微動だにせず、まるで彫像のようだった。

「偽物かもしれない」

最初に口を開いた者が躊躇いがちに言った。

「確認してみよう」

中年の魔法使いが慎重に鑑定術を放った。

「本物のガーゴイルだ!」

木造家屋の明かりを見つめながら、彼は歯ぎしりしながら言った:

「二つの部隊の仲間たちは、こいつに殺されたに違いない」

「下級追放術の準備をする。お前たちはそいつを誘い出せ!」

そう言うと、彼は懐から銀色の巻物を取り出し、低い声で詠唱を始めた。

不思議な元素の力が空気中に広がっていった。

すぐに、追放術による異次元の門が静かに開かれた。

「早く!」

中年の魔法使いが催促した。

準備万端だった斥候隊長は合図を送った。

ぽんという音。

パチンコから放たれた石がガーゴイルの額に当たり、鋭い音を立てた。

しかしガーゴイルは動かなかった。

斥候隊長は「おや?」と声を上げ、続けて三発の石を放った。

ガーゴイルはまだ動かなかった。

誰かがこっそりと矢を放った。

矢先がガーゴイルの体で火花を散らしたが、それでもガーゴイルは目覚めなかった。

一方、魔法使いの下級追放術の持続時間は半分を過ぎていた。

「もしかして偽物か?」

誰かがつぶやいた。

中年の魔法使いも確信が持てなくなっていた。

斥候たちは次々とガーゴイルを起こそうと試みた——

大胆な者の一人が静かに屋根に上がり、ガーゴイルに向かって思い切り平手打ちを食らわせた。

追放術の効果が切れるまで。

ガーゴイルは目覚めなかった。

「騙されたな。偽物だ」

中年の魔法使いは悔しそうだった。

頭の中では、どうやって首領に巻物の費用を払ってもらおうかと考えていた。

斥候隊長が手を振った。

他のメンバーは鳥獣のように散り、整然とした隊形で木造家屋の様々な角から忍び込んでいった。

中年の魔法使いと斥候隊長だけが外に残った。

その時、彼らの背後から微かな足音が聞こえた。

二人は急いで振り返った。

暗闇から、農夫のような格好をした男が現れ、手には二本の太い人参を持っていた。

「おや?お客様かな?」

その男は好奇心そうに彼らを見た。

中年の魔法使いが何か言おうとした時、背後から斥候隊長の警告の声が聞こえた:

「気を——」

彼の言葉は途切れ、尾てい骨からの激痛が彼をほぼ二つに引き裂いた!

中年の魔法使いは恐怖に満ちた目で斥候隊長が苦しみながら倒れるのを見た。

漆黒の夜でさえ。

彼には相手の死体から垂れ下がる血まみれの腸と、それを掴んでいるガーゴイルがはっきりと見えた!

誰かに言われるまでもなく。

不測の事態が起きた瞬間から、彼は命を守る魔法の詠唱を始めていた。

しかし残念ながら。

もう遅かった!

ガキッという鋭い音。

股間から骨を刺すような痛みが走り、脳を激しく揺さぶった。

短い呪文の詠唱は突然途切れた!

武術!

股間狙いの蹴り!

「あぁっ!」

地獄のような悲鳴が森羅農場の夜空に響き渡った。

ロジャーは容赦なく人参を彼の口に押し込んだ。

そして媚びるような表情を浮かべるガーゴイルの方を向いた。

彼は思わず文句を言った:

「お前というガーゴイル、こんな卑怯な技しか使えないのか?」

ステータス画面に。

……

「初めて平沙派の奥義を成功させた。新しいマイルストーン-冷酷無情を獲得」

「マイルストーンポイントを1獲得」

「冷酷無情:あなたは独特かつ効率的な近接戦闘技術を持っている」

「対応する称号:武の道を知らぬ若者(あなたの行動様式は一部の正統派から認められていない)」

……