032 珍品

西側の山腹。

戻ってきたロジャーは小道を素早く登っていく。

夜の闇と混亂に紛れて、雲梯術を全力で発動した。

数回の跳躍で、山頂付近まで到達した。

先ほど彼が引き起こした混亂で二台の弩車を破壊できたが、灰色ドワーフの数があまりにも多すぎた。

三台の弩車が無事に運び上げられ、山頂の三方向にそれぞれ設置された。

先ほどの事件があったため、残りの灰色ドワーフたちは明らかに警戒を強めていた。

彼らは三つのチームに分かれ、弩車を中心に互いに援護し合っていた。

これにロジャーは少々手を焼いた。

塔の上の翡翠龍郷が大半の注意を引きつけているものの、山頂には隠れる場所が少なかった。

軽率に行動すれば、位置が露見し、すぐに灰色ドワーフたちに追われることになるだろう。

かといって、雲梯術で強引に飛び越えることもできない。

灰色ドワーフの人壁戦術は、そんな無謀な考えを笑い話どころか致命的なものにしてしまう。

「私の雲梯術のレベルがもう一、二段階上がらない限りは無理だな」

灰色ドワーフたちが弩車の調整を進めていく様子を、なすすべもなく見つめていた。

ロジャーは本腰を入れなければならないと悟った。

……

竜牙村の正門前。

灰色ドワーフたちの悲鳴が四方に響き渡る。

轟々と燃えるドラゴンブレスが通り過ぎた跡には、焼け焦げた死体と焦土だけが残されていた。

生命力の強い灰色ドワーフたちがまだ息をしているものの。

龍炎に腐蝕された肌は治りようもなく、やがて骨まで染み通る痛みとともに、その破壊力のある熱の残り火が彼らの命を奪うだろう。

生まれながらの龍威の威圧の下、多くの灰色ドワーフたちは前進を躊躇い始めた。

これにより翡翠の幼龍郷は両側の弩車の処理に時間を割くことができた。

明らかに、それも悪意に満ちた殺戮兵器に気付いていた。

間もなく、幼龍は翼を羽ばたかせ、強い上昇気流に乗って西側の山腹へと直接飛んでいった!

山頂の灰色ドワーフたちは慌てて角度を調整し、弩車で幼龍を攻撃しようとした。

しかし角度が大きく外れていた。

放たれた二本の巨大な弩矢は、ただ幼龍の怒りを煽るだけだった。

ゴォッ!

再びドラゴンブレスが襲いかかる。

正門前のものと比べると、このドラゴンブレスの規模は遥かに小さく、範囲も五分の一ほどだった。

それでもなお。

真竜の怒りはドラゴンブレスに強大な破壊力を与えていた。

瞬く間に、一台の弩車が翠緑の炎に焼き尽くされた。

近くにあったもう一台の弩車も巻き添えを食らい、使い物にならなくなった。

シュッ!

凛とした天風の中、一筋の疾影が死神の命取りのように飛来した。

幼龍の体が小さく、素早く回避できなければ、その太い弩矢に翼を貫かれていたかもしれない!

「シュ……ガオッ!」

幼龍は怒りと恥ずかしさの混ざった鳴き声を上げた。

激しく翼を打ち下ろすと、弩矢を放った東部の山腹へと真っ直ぐに突っ込んでいった!

その羽ばたきで生じた気流は、近くの灰色ドワーフたちを吹き飛ばした。

「今だ」

長らく隱密を保っていたロジャーは好機を見計らい、最後の弩車の近くに手持ちの投擲物を投げつけた!

……

「元素瓶(火屬性):高濃度火元素の凝集物」

「魔力豊度:11」

「投擲/起爆:有効燃燒範囲内、炎術ダメージ18/毎秒」

「製作者:ロジャー」

……

ガラス瓶は弩車に当たると同時に砕け散った。

先ほどの「油術+火矢」よりも凄まじい火炎が天を衝いて立ち上がった!

多くの灰色ドワーフは悲鳴を上げる暇もなく、火元素の焼却によって命を落とした。

「やったぞ!」

ロジャーは満足げに手を叩いた。

弩車が全て破壊されさえすれば、幼龍は生命の危険にさらされることはない。

幼龍が倒れない限り。

超強力なメインタンクが前線で全ての灰色ドワーフの注目を集めているようなものだ。

ロジャーは自由に行動できる。

しかしその時、火炎の中から咆哮する灰色ドワーフが飛び出してきた!

驚くべきことに、火炎の中を走っているにもかかわらず、彼の体には一切の損傷がなかった!

「あの灰色ドワーフの首領か?」

ロジャーは彼のことを少し覚えていた。

灰色ドワーフの首領は怒りに任せてロジャーに向かって突進してきた。

両手にはそれぞれ手斧を持ち、非常に銳利そうだった。

この時になって、ロジャーは彼の頭に載っている滑稽な帽子に気付いた。

帽子というよりも、むしろ「冠」と呼ぶべきものだった。

前世の中国古代の人々が身につけていたものに少し似ていた。

勢いよく迫ってくる灰色ドワーフの首領に対して。

ロジャーは平然と雲煙の歩法を発動し、彼の正面突撃を避けながら、望氣術を放った。

……

「武術泥棒-灰色ドワーフの首領 レベル13 生命力360」

「特性I:粗い石肌」

「粗い石肌:沼地の灰色ドワーフの皮膚は非常に粗く、大部分が岩石に近い硬度を持つ表皮で覆われており、これにより極めて強い耐性を持つ、特に物理ダメージに対して」

「特性II:武術専門」

「武術専門:この灰色ドワーフは何らかの奇妙な機会に恵まれたようで、これにより優れた武術技巧を身につけている」

……

「なんだと?」

「武術を使う灰色ドワーフ?」

少し突飛な設定に思えたが、彼の頭の冠のことを思い出すと、ロジャーはすぐにこの設定を受け入れた。

瞬く間に、両者は戦いの渦中に巻き込まれた。

これはエリートモデルを持つ魔物の領域で、レベルもロジャーより一つ上だった。

そのため戦いが始まるや否や、ロジャーは大きなプレッシャーを感じた。

灰色ドワーフの手斧は凌厲で猛々しく、一撃でも食らえば命を落としかねなかった。

確かに彼は優れた武術技巧を習得していた。

十数合を経て。

ロジャーはますます驚愕した。

この相手は攻撃が激しいだけでなく、細部の処理も非常に繊細だった。

攻撃時の一つ一つの技の繋がりにも同様に深い層がある。

彼の戦い方は徐々に編まれていく巨大な網のようで、ロジャーの生存空間を少しずつ蝕んでいった。

ロジャーはすぐに気付いた。

昇級しなければ、自分はこいつの相手にならないかもしれない!

昇級したとしても、一撃で仕留める機会はないかもしれない。

なぜなら赤月刀を持っていないからだ!

「武術を使う灰色ドワーフか、なかなかやるな」

「じゃあ……失礼する」

ロジャーは心を決めた。

全身の姿勢を整え、優雅な旱地拔蔥で逃走した!

勝てないなら逃げればいいじゃないか?

お前ら灰色ドワーフは生まれつき足が短いんだからな!

ロジャーは正々堂々と考えた。

しかしその時、彼の心に警戒感が走り、背後から冷たい風が吹き付けた。

ビリッ!

この突然の襲撃を避けるため、ロジャーは地面を何度も転がり、服まで破れてしまった!

振り返って見ると、灰色ドワーフの首領は彼を追うために、手に持っていた手斧を投げていたのだ!

認めざるを得ないが、彼の投擲技術は非常に優れていた。

もし反応が遅れていたら……

ロジャーは考えただけでも背筋が寒くなった。

シュッ!

また一つの手斧が飛んできた。

今度は心構えができていたので、ロジャーは余裕を持って避けた。

灰色ドワーフの首領は怒りの咆哮を上げた。

ロジャーは彼をじっと見つめ、目に何とも言えない困惑の色を浮かべた:

「なんでそんなに俺に怒ってるんだ?」

次の瞬間。

彼は劍を構えて反撃に転じた!

青銅の剣の劍光が冷たく輝き、瞬く間に灰色ドワーフの首領の胸に数個の血の穴を開けた!

「武器を失って、本当に俺が怖くないと思ったのか?」

ロジャーは失笑した。

彼は武術を使う灰色ドワーフなら、多少は頭が回ると思っていた。

まさか、こんな間抜けだとは。

……

「そうそう、武術は鍛えても頭を使わないと……次はなんて言うんだっけ?」

二分後。

ロジャーは灰色ドワーフの首領の穴だらけの死体を見ながら、思わず首を振って溜息をついた。

彼はかすかに光る冠を取り、鑑定級をかけた。

……

「白鴉の冠/珍品/???」

……