この秘傳書の習得条件にロジャーは驚かされた。
彼の認識では、「スライディング」は特に実用性のない派手な戦闘技だった。
おそらく極度怒りの状態でしか、少しも役に立たないだろう。
しかし、15点の悟性と3つの気穴という制限を見て、事態はそう単純ではないと気付いた。
ロジャーの心の中で。
「股間狙いの蹴り」と「膝当て」という二つの絶技を持つ黒虎師匠は並の人物ではない。
彼が"実戦における必殺技"と評價する武術は、当然一目置くべきものだ!
「悟性なら簡単だ、いつでもポイントを振れる。」
「問題は気穴だな。今は左右の手しか開いていないし、三つ目がいつ開けるか分からない。」
ロジャーは残念そうに「スライディング」をしまい込んだ。
幸い上級氣功師になってからは、体内の気が量的に倍増しただけでなく、活性度も上がっていた。
おそらく半年以内には、三つ目の気穴を開く見込みがある。
……
その後しばらくの間。
セラ川のイボイノシシの群れは、パラマウント荘園の南側で独特な風景線となった。
中には水流に流されて岸に打ち上げられるイボイノシシもいた。
そんな時は、専門の見張り兵士が長い棒で彼らを川に突き返した。
これらのイボイノシシは食べることも触れることもできない。
セラ川沿岸では。
毎年イボイノシシの死骸に触れて死亡する者が出ている。
死骸に触れた者は皆、極めて異様な形で死を迎えた:
突然頭が落ちたり、体が爆発したり、あるいは一瞬にしてグチャグチャの肉塊と化したりする。
これらの死に方は最も恐ろしい呪いよりも戦慄を覚えるものだった。
毎年この時期になると、領主府は至る所に告示を貼り、村人たちに一時の欲に負けてイボイノシシの死骸に触れないよう警告していた。
ロジャーももちろん手を出す勇気はなかった。あのイボイノシシが美味そうに見えても。
しかし彼は一つの現象に気付いた。
イボイノシシの死骸が最も多い時期でも、セラ川の水は普通に飲用できた。
これはイボイノシシの"呪い"が川の水とは無関係だということを示している。
「元凶はあの謎の白い霧に違いない」
彼は心の中でそう推測した。
……
イボイノシシの死骸群の事件が過ぎ去った後、死靈術師の侵入という噂も完全に否定された。
パラマウント荘園は再び平穏を取り戻した。
天気は寒くなり。
森羅農場にはすぐに初雪が訪れた。
他の人々と同様に、ロジャーも外出を控えめにした。
冬の間ずっと家に籠もっていた。
「職人」としての様々な仕事に従事していた。
……
例えば大型の「元素瓶」の製作。
これは灰色ドワーフの首にあるこぶから作られる。
魔爆蛙の鰓腺と同様に、これらのこぶには大量のエレメントが含まれており、活性も極めて高い。
ロジャーは長い時間をかけて、適切な濃縮方法を模索した。
極めて高い活性のため。
保存期間中に突然爆発しないよう、大量の不活性化剤を加える必要があった。
そのため、この新型の元素瓶は元のものより大きくなった。
ロジャーはこれを「こぶ弾」と名付けた。
これは初心不忘の術である。
こぶ弾の属性は闇と火が主で、威力は非常に強力で、元素瓶の3〜4倍ほどある。
火屬性のこぶ弾一発で、堅固な建物を容易に破壊し、地面に大きな穴を開けることができる。
一冬の間に。
ロジャーは地下室にこぶ弾を40個増やした。
……
こぶ弾の他にも。
ロジャーは灰色ドワーフの貫通矢をさらに改良した。
各矢じりに強力な放血効果のある溝を2つ追加した。
これにより貫通性を保ちながら、より抜きにくくなり、標的からより多くの出血を引き起こすことができる。
この矢を彼は「放血の矢」と名付けた。
今後出会うかもしれない高HPの敵に対抗するためだ。
……
そして藥劑學の面では。
ロジャーは活力ポーションの精製に新たな進展があった。
既存の活力劑を三倍に濃縮すると、チューブ状の金色のゲル状物質を作ることができる。
このゲル状物質は活力ポーションをはるかに超える回復能力を持つだけでなく。
健康食品として日常的に服用することもできる!
効果は體力の微量な改善と疲労耐性の向上だ。
ロジャーの推算によると、長期服用で體力が20%から50%ほど増加する。
つまり1〜2の属性ポイントに相当する!
そのため開発した日から、彼は毎日欠かさず服用していた。
唯一の欠点は生臭く、刺激的な味だということだ。
しかし健康のため、ロジャーは我慢した!
このゲル状物質を彼は「龜力強」と名付けた。
うん、これも初心不忘の術である。
……
より多くの時間を。
ロジャーは読書に没頭していた。
あの訪問の後、ロジャーは領主府に返礼訪問もした。
アランは熱心に彼を迎え、また半日ほど話し込んだ。
相見恨晩とまではいかないが、かなり気が合った。
ロジャーが読書好きだと聞いて、アランはすぐに彼を自分の私設図書室に案内した。
書物が乏しいこの時代に、アランは十二の大きな本棚もの蔵書を持っていた!
それ以来ロジャーは図書室の常連となった。
彼が訪れる度に、アランは時間を作って少しの間話をしに来た。
時には話が盛り上がりすぎて公務に支障をきたすと、フレイヤが激しく咳き込んで暗示を送った。
間もなく。
領主府の多くの人々は、あの若く美しい近衛長が肺病を患っているのではないかと心配し始めた。
……
この冬、アランや李維との時折の雑談を除いて。
ロジャーはほとんど一人で過ごしていた。
時には退屈を感じることもあった。
幸いにも積雪が1メートル近い時期でも、ジョニータートルが夜中にドアをノックしに来て、ロジャーの孤独を和らげてくれた。
この心温まる友情に、彼は思わず涙ぐみそうになった。
水魔たちに至っては。
さらに頻繁に手を取り合って訪ねて来た。
おかげでロジャーはあまりにも孤独を感じることはなかった。
こうして。
あっという間に四ヶ月が過ぎた。
……
春。
大雪が解け始める頃。
水鬼の森。
新鮮な血肉の匂いが寒風に乗って漂い、次々と魔物の注意を引いていた。
よろめく人影が厚い積雪の上を歩き、「サクサク」という音を立てていた。
大きな血肉の真ん中に。
質素な平服を着た男が立っていた。
彼は細長い刀を手に持っていた。
黙々と視界に現れる水魔を数えながら、ロジャーは手の中の赤月刃を徐々に握り締めた。
彼は攻撃を仕掛けなかった。
水魔たちの無謀な攻撃に対して、彼は素早く回避するだけだった。
全身に暗紫色の長い毛が生え、異常に肥大した水魔が現れるまで。
……
「水鬼サンチェス LV29(エリート)生命力409 防禦力29」
……
その後のデータをロジャーは見なかった。
なぜなら、この時。
彼はすでに動き出していた!
刀光一閃。
赤い残像を纏った赤月刃は死神の鎌のように、ロジャーの素早い動きに合わせて水魔の群れの間を縫うように動き回った!
一面の雪原に。
すぐに水魔が死んで形成した緑色の膿水が広がった。
十数回の呼吸の後。
水鬼の森全体で、眼球が飛び出し、肥大した体つきのエリート水魔だけが残っていた。
「ゴォ〜カッ〜」
その喉から不快な音を発した。
「焦るな、お前の番だ」
ロジャーは厳かに水鬼サンチェスを見据えた。
この時、彼の手にある赤月刃は薄い暗赤色の気の膜に包まれていた。
一瞬のうちに。
ロジャーは刀を構え加速し、まるで弾丸のように標的に向かって突進した!
それと同時に。
水鬼サンチェスの体表に驚くべき変化が起き始めた。
暗紫色の長い毛が絶え間なく成長し、広がっていった。
瞬く間に全身を覆い尽くした。
余分な毛は細長い棘となった!
外見から見ると、まるで紫色の太ったサボテンのようだった!
しかしロジャーはその異変など目に入っていないかのように、ただ猛然と突進していった。
その紫色の肉塊の前に到達すると。
彼の身に纏う気が突如として変化した。
赤月刃の上の。
十数層の薄膜が一瞬にして消え去った。
ロジャーの背後で。
すべての光が突然吸い込まれた。
白く輝く上弦の月がゆっくりと昇り始めた。
……
法相:上弦の月!
……
電光石火の間に。
ロジャーは赤月刃を振るい、その紫色の肉塊に向かって、立て続けに五回の斬撃を放った!
これは十九月の華の第十二式——
「弦月七折りの術」!
この一撃一撃が、エリート水魔の高い防禦力を易々と破った!
他の水魔と同じ末路を辿った。
エリート水魔が完全に一滴の膿水と化すのを見届けると。
ロジャーは深いため息をつき、白い絹布を取り出して、ゆっくりと赤月刃を拭い始めた。
「新しい技の実戦での性能は本当に良いな」
この過ぎ去った冬の間に。
ロジャーは月の輝きの第七式から第十二式を習得した。
そのために、彼は60点の義侠値を支払った。
2481点の義侠値を持つ彼にとって、これは些細なことだった。
新しい技を手に入れた後。
ロジャーはこの秘技の最初の六式が単なるウォーミングアップに過ぎないことに気付いた。
月の輝きの前六式は「構え」であり、基本であり、赤月刃の正しい使い方の指南書だった。
そして第七式から。
一式ごとに敵に命中すれば「刀意」を一層積み重ねることができた。
一旦刀意が十層に達すると。
強大な法相を召喚することができた。
……
「法相:上弦の月」
「持続時間:0.6秒」
「効果:上弦の月の持続時間中、攻撃するたびに自動的に戦闘クールダウン状態に入る」
……
つまり。
この0.6秒の間、ロジャーが放つ一撃一撃に「十年一劍」の効果が付与される!
これを0.4秒で5回の斬撃を放てる「弦月七折りの術」と組み合わせると。
小無敵と呼ばれる。
……
「今最も核心的な問題は「月の輝き」の日増しに凶悪化する効果と赤月刃の脆弱な耐久性との矛盾だな」
ロジャーは新たに付いた数個の傷を見て、心が痛んだ。
彼は気を引き締めて水鬼の森の奥へと進んでいった。
水鬼サンチェスは特技を落とさなかった。
これには少し不満だった。
しかし彼はこの旅の目的を忘れてはいなかった——
一週間前。
あるハンターが水鬼の森の近くで大量のジョニータートルを目撃したと主張していた。
だから彼は親友を探しに来たのだ。
結局のところ、過去4ヶ月間で彼が集めた寿命は300年ほどに過ぎなかった。
進捗バーを満タンにするにはまだ半分ほどの量が必要だった。
パラマウント荘園で待ち続けるのはもはや適切ではなかった。
積極的に動く必要があった!
……
雲梯術と風乗りを駆使して、ロジャーは水鬼の森を素早く移動した。
しかし一匹のジョニータートルにも出会えなかった!
おそらく昨夜の大雪ですべての痕跡が消されてしまったのだろう。
ロジャーが首を傾げていた時。
望氣術が突然異常な色を捉えた。
ロジャーは素早くそちらに近づいた。
厚い積雪を掻き分けると、そこには岩の下に隠された浅い穴があった。
見慣れた匂いが漂ってきた。
乳白色の模様がロジャーの目に飛び込んできた。
……
「ヒント:ジョニータートルの卵の巣を発見した」
……