竜の卵を失った魔物は完全に狂暴化した。
彼女は狂ったように前へ突進した。
まるでブルドーザーのように次々と木々に激突した。
森の中で。
大量の魔物たちが慌てふためいて外へと逃げ出した。
緊張感が急速に広がっていった。
……
ロジャーは悠々と木の枝を飛び移っていた。
雲梯術による速度と敏捷性の加護は、この巨大な生物に対して非常に効果的だった。
時には急な方向転換だけで。
雷奔龍との距離を大きく引き離すことができた。
この雌の雷奔龍はエリートモデルではなかった。
速度と爆発力の面で劣っていた。
だからこそロジャーはこれほど余裕を持って相手の感情を煽ることができた。
「うおおお!」
大量の雷が口から噴射された。
多くの木々が焦げ付いて真っ黒になった。
近くにいた不運なリスたちまでもが、炭化してしまった。
しかしロジャーはわずかな麻痺を感じただけだった。
彼は落ち着いてペースを制御し。
雷奔龍を西方へと誘導していった。
三分後。
前方の木々が疎らになってきた。
広々とした溪谷が目に入った。
突然。
ロジャーは地面に降り立ち、一気に加速して走り出した!
平地では、ロジャーのこの程度の走力では雷奔龍の足元にも及ばなかった。
急がなければならない!
案の定。
雷奔龍は首を振りながら森から猛スピードで飛び出してきた。
その上下の顎は150度まで開き、鋸歯状の牙を剥き出しにして恐ろしい形相をしていた。
地響きを立てる足音とともに。
両者の距離は縮まっていった。
その目にはロジャーしか映っていなかった!
「うおおお!」
雷奔龍は巨大な頭を振り下ろして噛みついてきた。
千載一遇のその瞬間。
ロジャーは「野性解放」を発動した!
そして地面を転がった。
最終的に雷奔龍の致命的な一撃を余裕で回避した。
ロジャーは振り返ることなく溪谷へと走り込んだ。
背後からはより激しい音が聞こえてきた。
それは雷奔龍の巨体が溪谷の入り口に挟まれた音だった!
「急げ急げ!」
「準備を!」
ロジャーは溪谷に突入し。
類角魔たちに戦闘命令を下した!
溪谷の奥から。
身長3.2メートル、特大サイズの「守護者の鎧」を着た類角魔戦士が大股で歩み出てきた。
彼は巨大な盾を手に持ち、その盾には雷のような銀光が閃いていた。
これは「タワーシールド」だ。
類角魔たちが原始林の木材とロジャーが提供した龍鱗で作り上げたものだ!
タワーシールドの防禦力は60にも及び、守護者の鎧による全方位の防護と合わせれば。
狂った雷奔龍と正面から一定時間戦えるだけの性能を持っていた。
……
「ガラガラ!」
溪谷の両側から岩石が崩れ落ちた。
巨大な魔物は無理やり裂け目を作り出し、突進猛進して溪谷に入ってきた。
しかしその瞬間。
足元の土砂が突然崩れ落ちた!
雷奔龍の体は次々と沈んでいき。
瞬く間に頭部だけを残すまでになった。
「シューッ!」
魔物は悲痛な怒りの咆哮を上げた。
ロジャーは合図を送った。
類角魔たちは土煙を浴びながら近づいていった。
前方には深さ7メートルの巨大な穴が現れた。
穴の底には尖らせた木杭が無数に突き刺さっていた。
雷奔龍はこれらの木杭に刺されて苦しそうだった!
痛みに耐えながら頭を振り上げる。
雷光が閃いた。
「押さえ込め!」
ロジャーは叫びながら深い穴の後方へと走った。
タワーシールドを持った類角魔は躊躇なく飛び込み、跳躍の勢いを利用して盾ごと体当たりし、見事に雷奔龍の頭部に着地した!
相手は即座にふらつき、「スタン」状態に陥った。
ロジャーはタイミングを見計らい、一気に雷奔龍の背中に飛び乗った。
鱗の間で閃く火花を無視して。
魔物の尻付近まで這い寄った。
手の中に用意していた鉄釘を「纏龍絲」の指套に取り付けた。
そしてるつぼから槌を取り出し、鉄釘を鱗の隙間に打ち込んでいった。
雷奔龍は無力に尾を振り回した。
ロジャーは纏龍絲を引きながら体の上を走り回った!
「ジジジ」という音とともに。
ロジャーは雷奔龍の尾を一周することに成功した。
最後に指套のもう一端も雷奔龍の尻に打ち込んだ!
シュッという音と共に。
纏龍絲は自然と収縮し、鱗の隙間から魔物の粗い表皮に食い込み、どんどん締め付けていった!
これらを終えると、ロジャーは遠く離れた。
しばらくして。
雷奔龍はスタン状態から目覚めた。
おそらく痛みを感じたのだろう、より一層狂暴化した。
タワーシールドさんは覚悟を決めて立ち向かった!
彼は防御に徹し、攻撃は仕掛けなかった。
魔物は何度も頭を盾にぶつけ、タワーシールドさんは血を吐きながらも。
それでも必死に耐え続けた!
角魔一族の強大な血統が燃え上がり始めた。
一見膠着状態に見えた戦況。
しかしロジャーは明確に観察していた。
雷奔龍が尾を振るたびに纏龍絲はより深く食い込んでいった!
痛みで尾を振り。
振れば振るほど痛みが増す!
これは悪循環だった。
わずか2分で。
尾の部分の鱗は完全に剥ぎ取られていた。
纏龍絲自体も深く肉に食い込み、骨を切り始めていた!
ロジャーはタイミングが来たと判断した。
「全員で攻撃だ!」
「計画通りに行動せよ!」
彼の号令一下。
類角魔たちは雄叫びを上げながら突撃を開始した。
深い穴の中の魔物が身を翻そうとしたが、タワーシールドさんの強力なシールドバッシュを受けて再び気を失った!
このような好機を、類角魔たちが見逃すはずがない。
彼らは両手大斧を振りかざし、整然と穴に飛び込んでいった!
先頭を切ったのは烏古だった。
落下の勢いを利用して、一撃で龍の尾の露出した部分を切り裂き、深い傷跡を残すことに成功した。
しかし彼は留まることなく、一撃を放つと即座に離れた!
二番手の類角魔が続き、その傷跡めがけて再び斧を振り下ろした!
そして三番手、四番手、五番手と続いた!
竜の尾の傷はどんどん大きくなっていった。
十番目の類角魔の強烈な斬撃により、その尾は遂に切断された!
大量の血が噴き出した。
魔物の全身の鱗が震え、悲痛な咆哮を上げた。
原始林全体が震撼した。
これこそがロジャーが雷奔龍のために用意した贈り物——断尾戦法!
……
狩猟はここまで来た。
雷奔龍は既に大勢が決していた。
それにとって。
尾を失うことはバランスを失うことであり、さらに大きな隙を見せることになった!
タワーシールドさんが前方で受け止める。
他の者たちはロジャーが第二段階で定めた撹乱戦術を完璧に実行していた。
数時間後。
この巨大な存在は遂に全てのライフポイントを消耗し尽くした。
轟然と倒れた。
……
データ欄に討伐完了のヒントが表示されるまで。
ロジャーはようやく安堵の息を吐いた。
本当に大変だった!
事前に纏龍絲を作り、落とし穴を設置し、類角魔に両手大斧を用意し、さらに「断尾戦法」という極めて的確な狩猟方法を使用したにもかかわらず——
戦闘の全過程は依然として非常に苦戦を強いられた!
タワーシールドさんが十分に頑健でなければ。
誰がこの超巨大化した魔物の度重なる衝撃に耐えられただろうか?
戦闘終了後。
タワーシールドさんは直ちに瀕死状態に陥った。
他の者たちの状態も酷かった。
これに対して。
ロジャーは大きく手を振り、一人二本の「龜力強中強」を配った。
タワーシールドさんには、十本与えた。
この謎の健康飲料の効果で。
類角魔たちはすぐに元気を取り戻した。
タワーシールドさんにはさらに変態の兆しが見えた!
猛者の部下たちが威勢を取り戻すのを見て。
ロジャーは心からの笑みを浮かべた:
「みんな十分休んだか?」
彼は竜獣の死骸を指さして言った:
「骨を抜き、筋肉は捨てて、鱗は防具用に取っておけ。簡単だろう?」
類角魔たちは顔を見合わせた。
最終的に烏古の先導で、「よいしょよいしょ」と作業を始めた。
ロジャーは終始見守りと指揮を担当した。
夕暮れ時に翼竜の群れが来て、近くの巨木の梢に止まり、静かに待機していた。
ロジャーは彼らを気にも留めなかった。
ただ類角魔たちにもっと急ぐよう促すだけだった。
原始林の縄張りははっきりと分かれており、雷奔龍のような高位生態の魔物は数えるほどしかおらず、短時間で強大な魔物が近づくことはないだろう。
しかし時間が経てば話は別だ。
一日後。
一行は溪谷を離れた。
すぐに。
その翼竜の群れが真っ先に突撃を開始した。
巨木の梢が微かに震えた。
地上にも多くの影が飛び出してきて、ロジャーが意図的に残した豊富な肉を奪い合った。
混戦が一触即発の状態となった。
しかしロジャーたちは、既に悠々と遠ざかっていた。
……
その後の一週間で。
ロジャーは同じ方法でもう一頭の巣を守る雌の雷奔龍を倒した。
今回収穫した竜の卵は33個にも及んだ。
それらを全て破壊した後。
対応する罪の印は累計61個に達した。
進捗バーも四分の一程度まで来た。
ロジャーが拳を振るう時。
既に非常に明確な電光が見えるようになっていた。
……
「攻撃効果:雷電(あなたの全ての攻撃に雷電効果が付与され、実際のダメージは攻撃の10%)」
……
この10%のダメージを侮ってはいけない。
大部分の魔物や人型生物の雷耐性は低い。
さらに麻痺効果も付与され、まさに不意打ちの利器だ。
現在の進捗から見ると。
彼はあと180個ほどの罪の印で卒業できる。
一週間に一巣、一巣20個として計算すると。
最大で二ヶ月半で雷法極致に達することができる。
その時は一撃で天空に雷光が満ちる。
威力は置いておいても、格好良さは間違いなく最高だ。
しかし次の一週間。
ロジャーは三頭目の雷奔龍の活動痕跡を見つけることができなかった。
むしろ彼自身に少しの変化が現れた。
……
原始林に入って20日目。
大雨の降る午後。
地下キャンプで。
ロジャーはゆっくりと目を開け、その眼差しには喜びの色があった。
不思議な感覚が彼の全身を巡っていた。
データ欄に。
……
「あなたは三つ目の気穴を開いた(右足)」
「あなたの気が50%増加した」
……
半年かけて苦労して。
三つ目の穴がついにロジャーによって開かれた。
突破時のその至福の喜び。
一般人には理解できないものだ!
三つ目の気穴の誕生は、単に彼の体内に物を詰められる場所が一つ増えただけではない。
さらに彼が黒虎師匠の三つ目の武術を学べることを意味していた!
……
「あなたの悟性+1(15)」
「あなたはスライディングを会得し始めた」
……
「あなたはスライディングの一部の奥義を会得した、会得進度+20」
……
十時間後。
……
「あなたはスライディングの全ての奥義を会得した!」
「あなたは武術:スライディングを獲得した!」
……
ロジャーは静かに脳裏にあるその玄妙な奥義を感じ取っていた。
視線はスライディングの説明に留まった。
……
「スライディング:平沙派の絶技、創始者黒虎」
「説明:大量の'気'を消費し、目標に強力な転倒攻撃を仕掛ける。目標が転倒した後、高確率で'スタン'、'バランス崩壊'および'嘔吐'などの状態異常が発生する;
自身の体重の10000倍以上の目標は転倒させることができない;
耐久値が90%以上の目標は転倒させることができない;
転倒させることができる目標の最大体重はあなたの'気'によって決定され、現在転倒可能な最大体重は70トン」
……
「あぁ、これは……」
ロジャーは呆然となった。
……