087 断尾戦法

竜の卵を失った魔物は完全に狂暴化した。

彼女は狂ったように前へ突進した。

まるでブルドーザーのように次々と木々に激突した。

森の中で。

大量の魔物たちが慌てふためいて外へと逃げ出した。

緊張感が急速に広がっていった。

……

ロジャーは悠々と木の枝を飛び移っていた。

雲梯術による速度と敏捷性の加護は、この巨大な生物に対して非常に効果的だった。

時には急な方向転換だけで。

雷奔龍との距離を大きく引き離すことができた。

この雌の雷奔龍はエリートモデルではなかった。

速度と爆発力の面で劣っていた。

だからこそロジャーはこれほど余裕を持って相手の感情を煽ることができた。

「うおおお!」

大量の雷が口から噴射された。

多くの木々が焦げ付いて真っ黒になった。

近くにいた不運なリスたちまでもが、炭化してしまった。

しかしロジャーはわずかな麻痺を感じただけだった。

彼は落ち着いてペースを制御し。

雷奔龍を西方へと誘導していった。

三分後。

前方の木々が疎らになってきた。

広々とした溪谷が目に入った。

突然。

ロジャーは地面に降り立ち、一気に加速して走り出した!

平地では、ロジャーのこの程度の走力では雷奔龍の足元にも及ばなかった。

急がなければならない!

案の定。

雷奔龍は首を振りながら森から猛スピードで飛び出してきた。

その上下の顎は150度まで開き、鋸歯状の牙を剥き出しにして恐ろしい形相をしていた。

地響きを立てる足音とともに。

両者の距離は縮まっていった。

その目にはロジャーしか映っていなかった!

「うおおお!」

雷奔龍は巨大な頭を振り下ろして噛みついてきた。

千載一遇のその瞬間。

ロジャーは「野性解放」を発動した!

そして地面を転がった。

最終的に雷奔龍の致命的な一撃を余裕で回避した。

ロジャーは振り返ることなく溪谷へと走り込んだ。

背後からはより激しい音が聞こえてきた。

それは雷奔龍の巨体が溪谷の入り口に挟まれた音だった!

「急げ急げ!」

「準備を!」

ロジャーは溪谷に突入し。

類角魔たちに戦闘命令を下した!

溪谷の奥から。

身長3.2メートル、特大サイズの「守護者の鎧」を着た類角魔戦士が大股で歩み出てきた。

彼は巨大な盾を手に持ち、その盾には雷のような銀光が閃いていた。

これは「タワーシールド」だ。

類角魔たちが原始林の木材とロジャーが提供した龍鱗で作り上げたものだ!

タワーシールドの防禦力は60にも及び、守護者の鎧による全方位の防護と合わせれば。

狂った雷奔龍と正面から一定時間戦えるだけの性能を持っていた。

……

「ガラガラ!」

溪谷の両側から岩石が崩れ落ちた。

巨大な魔物は無理やり裂け目を作り出し、突進猛進して溪谷に入ってきた。

しかしその瞬間。

足元の土砂が突然崩れ落ちた!

雷奔龍の体は次々と沈んでいき。

瞬く間に頭部だけを残すまでになった。

「シューッ!」

魔物は悲痛な怒りの咆哮を上げた。

ロジャーは合図を送った。

類角魔たちは土煙を浴びながら近づいていった。

前方には深さ7メートルの巨大な穴が現れた。

穴の底には尖らせた木杭が無数に突き刺さっていた。

雷奔龍はこれらの木杭に刺されて苦しそうだった!

痛みに耐えながら頭を振り上げる。

雷光が閃いた。

「押さえ込め!」

ロジャーは叫びながら深い穴の後方へと走った。

タワーシールドを持った類角魔は躊躇なく飛び込み、跳躍の勢いを利用して盾ごと体当たりし、見事に雷奔龍の頭部に着地した!

相手は即座にふらつき、「スタン」状態に陥った。

ロジャーはタイミングを見計らい、一気に雷奔龍の背中に飛び乗った。

鱗の間で閃く火花を無視して。

魔物の尻付近まで這い寄った。

手の中に用意していた鉄釘を「纏龍絲」の指套に取り付けた。

そしてるつぼから槌を取り出し、鉄釘を鱗の隙間に打ち込んでいった。

雷奔龍は無力に尾を振り回した。

ロジャーは纏龍絲を引きながら体の上を走り回った!

「ジジジ」という音とともに。

ロジャーは雷奔龍の尾を一周することに成功した。

最後に指套のもう一端も雷奔龍の尻に打ち込んだ!

シュッという音と共に。

纏龍絲は自然と収縮し、鱗の隙間から魔物の粗い表皮に食い込み、どんどん締め付けていった!

これらを終えると、ロジャーは遠く離れた。

しばらくして。

雷奔龍はスタン状態から目覚めた。

おそらく痛みを感じたのだろう、より一層狂暴化した。

タワーシールドさんは覚悟を決めて立ち向かった!

彼は防御に徹し、攻撃は仕掛けなかった。

魔物は何度も頭を盾にぶつけ、タワーシールドさんは血を吐きながらも。

それでも必死に耐え続けた!

角魔一族の強大な血統が燃え上がり始めた。

一見膠着状態に見えた戦況。

しかしロジャーは明確に観察していた。

雷奔龍が尾を振るたびに纏龍絲はより深く食い込んでいった!

痛みで尾を振り。

振れば振るほど痛みが増す!

これは悪循環だった。

わずか2分で。

尾の部分の鱗は完全に剥ぎ取られていた。

纏龍絲自体も深く肉に食い込み、骨を切り始めていた!

ロジャーはタイミングが来たと判断した。

「全員で攻撃だ!」

「計画通りに行動せよ!」

彼の号令一下。

類角魔たちは雄叫びを上げながら突撃を開始した。

深い穴の中の魔物が身を翻そうとしたが、タワーシールドさんの強力なシールドバッシュを受けて再び気を失った!

このような好機を、類角魔たちが見逃すはずがない。

彼らは両手大斧を振りかざし、整然と穴に飛び込んでいった!

先頭を切ったのは烏古だった。

落下の勢いを利用して、一撃で龍の尾の露出した部分を切り裂き、深い傷跡を残すことに成功した。

しかし彼は留まることなく、一撃を放つと即座に離れた!

二番手の類角魔が続き、その傷跡めがけて再び斧を振り下ろした!

そして三番手、四番手、五番手と続いた!

竜の尾の傷はどんどん大きくなっていった。

十番目の類角魔の強烈な斬撃により、その尾は遂に切断された!

大量の血が噴き出した。

魔物の全身の鱗が震え、悲痛な咆哮を上げた。

原始林全体が震撼した。

これこそがロジャーが雷奔龍のために用意した贈り物——断尾戦法!

……

狩猟はここまで来た。

雷奔龍は既に大勢が決していた。

それにとって。

尾を失うことはバランスを失うことであり、さらに大きな隙を見せることになった!

タワーシールドさんが前方で受け止める。

他の者たちはロジャーが第二段階で定めた撹乱戦術を完璧に実行していた。

数時間後。

この巨大な存在は遂に全てのライフポイントを消耗し尽くした。

轟然と倒れた。

……

データ欄に討伐完了のヒントが表示されるまで。

ロジャーはようやく安堵の息を吐いた。

本当に大変だった!

事前に纏龍絲を作り、落とし穴を設置し、類角魔に両手大斧を用意し、さらに「断尾戦法」という極めて的確な狩猟方法を使用したにもかかわらず——

戦闘の全過程は依然として非常に苦戦を強いられた!

タワーシールドさんが十分に頑健でなければ。

誰がこの超巨大化した魔物の度重なる衝撃に耐えられただろうか?

戦闘終了後。

タワーシールドさんは直ちに瀕死状態に陥った。

他の者たちの状態も酷かった。

これに対して。

ロジャーは大きく手を振り、一人二本の「龜力強中強」を配った。

タワーシールドさんには、十本与えた。

この謎の健康飲料の効果で。

類角魔たちはすぐに元気を取り戻した。

タワーシールドさんにはさらに変態の兆しが見えた!

猛者の部下たちが威勢を取り戻すのを見て。

ロジャーは心からの笑みを浮かべた:

「みんな十分休んだか?」

彼は竜獣の死骸を指さして言った:

「骨を抜き、筋肉は捨てて、鱗は防具用に取っておけ。簡単だろう?」

類角魔たちは顔を見合わせた。

最終的に烏古の先導で、「よいしょよいしょ」と作業を始めた。

ロジャーは終始見守りと指揮を担当した。

夕暮れ時に翼竜の群れが来て、近くの巨木の梢に止まり、静かに待機していた。

ロジャーは彼らを気にも留めなかった。

ただ類角魔たちにもっと急ぐよう促すだけだった。

原始林の縄張りははっきりと分かれており、雷奔龍のような高位生態の魔物は数えるほどしかおらず、短時間で強大な魔物が近づくことはないだろう。

しかし時間が経てば話は別だ。

一日後。

一行は溪谷を離れた。

すぐに。

その翼竜の群れが真っ先に突撃を開始した。

巨木の梢が微かに震えた。

地上にも多くの影が飛び出してきて、ロジャーが意図的に残した豊富な肉を奪い合った。

混戦が一触即発の状態となった。

しかしロジャーたちは、既に悠々と遠ざかっていた。

……

その後の一週間で。

ロジャーは同じ方法でもう一頭の巣を守る雌の雷奔龍を倒した。

今回収穫した竜の卵は33個にも及んだ。

それらを全て破壊した後。

対応する罪の印は累計61個に達した。

進捗バーも四分の一程度まで来た。

ロジャーが拳を振るう時。

既に非常に明確な電光が見えるようになっていた。

……

「攻撃効果:雷電(あなたの全ての攻撃に雷電効果が付与され、実際のダメージは攻撃の10%)」

……

この10%のダメージを侮ってはいけない。

大部分の魔物や人型生物の雷耐性は低い。

さらに麻痺効果も付与され、まさに不意打ちの利器だ。

現在の進捗から見ると。

彼はあと180個ほどの罪の印で卒業できる。

一週間に一巣、一巣20個として計算すると。

最大で二ヶ月半で雷法極致に達することができる。

その時は一撃で天空に雷光が満ちる。

威力は置いておいても、格好良さは間違いなく最高だ。

しかし次の一週間。

ロジャーは三頭目の雷奔龍の活動痕跡を見つけることができなかった。

むしろ彼自身に少しの変化が現れた。

……

原始林に入って20日目。

大雨の降る午後。

地下キャンプで。

ロジャーはゆっくりと目を開け、その眼差しには喜びの色があった。

不思議な感覚が彼の全身を巡っていた。

データ欄に。

……

「あなたは三つ目の気穴を開いた(右足)」

「あなたの気が50%増加した」

……

半年かけて苦労して。

三つ目の穴がついにロジャーによって開かれた。

突破時のその至福の喜び。

一般人には理解できないものだ!

三つ目の気穴の誕生は、単に彼の体内に物を詰められる場所が一つ増えただけではない。

さらに彼が黒虎師匠の三つ目の武術を学べることを意味していた!

……

「あなたの悟性+1(15)」

「あなたはスライディングを会得し始めた」

……

「あなたはスライディングの一部の奥義を会得した、会得進度+20」

……

十時間後。

……

「あなたはスライディングの全ての奥義を会得した!」

「あなたは武術:スライディングを獲得した!」

……

ロジャーは静かに脳裏にあるその玄妙な奥義を感じ取っていた。

視線はスライディングの説明に留まった。

……

「スライディング:平沙派の絶技、創始者黒虎」

「説明:大量の'気'を消費し、目標に強力な転倒攻撃を仕掛ける。目標が転倒した後、高確率で'スタン'、'バランス崩壊'および'嘔吐'などの状態異常が発生する;

自身の体重の10000倍以上の目標は転倒させることができない;

耐久値が90%以上の目標は転倒させることができない;

転倒させることができる目標の最大体重はあなたの'気'によって決定され、現在転倒可能な最大体重は70トン」

……

「あぁ、これは……」

ロジャーは呆然となった。

……