088 黒虎師匠(応援お願いします!)

スライディングの効果は、ロジャーの予想をはるかに超えていた。

彼はこれが単なる補助的な制御能力だと思っていた。

まさかこれほど強力な武術とは!

「70トンの上限か、これなら一発のスライディングで雷奔龍を……」

「ああ、ただし無防備な状態でないと、一撃で倒される危険がある」

ロジャーは「スライディング」の応用場面について細かく考えた。

正面からの強攻は間違いなく最も愚かな選択だ。

これは黒虎師匠の一貫した考え方とは全く異なる。

側面からの奇襲こそがスライディングの真髄!

そう考えると。

彼は思わず興奮してきた。

データ欄に突然また新しい変化が現れた。

……

「あなたは平沙派絶技の究極奥義を悟った」

「ヒント:あなたは三大秘伝書から'黒虎師匠'が残した追加メッセージを感じ取った」

……

ロジャーの目の前の景色が徐々に霞んでいく。

留仙壁に触れた時のような感覚が現れ始めた。

彼は落ち着いて。

静かにその不思議な変化を感じ取っていた。

四肢百骸の中で。

気が活発に楽しげに流れている。

それらは笑っているようだった。

突然、耳元で力強い声が響いた:

「武術とは、格闘術なり!」

「格闘の道には二つの法則のみ。それは『不意打ち』と『急所攻撃』だ!」

「人を殺すには、股間を狙い、肛門を破壊し、目を潰し、喉を締め、腎臓を打ち、筋を断ち、骨を砕く……その形も魂も滅ぼすまでだ!」

「魔物を殺すにも、同じことだ!」

「獣の鱗を剥ぎ、龍の尾を断ち、蛇の七寸を打ち、狼の腰を砕き、虎の皮を破り、熊の口鼻を打つ……」

「正人君子などと言うな。」

「この終末の世では命は草の如く、身は浮き草の如し!」

「私はただ生き残りたいだけだ!」

この激しい声に伴って。

ロジャーは小柄な影が様々な場面で敵と戦う光景を目にした!

影の姿は見えなかったが。

敵の姿ははっきりと見えた——

数十メートルの巨大な怪物もいれば;

邪惡で強大な成年の巨竜もいた;

四本の手に二十八個の指輪をはめた恐ろしいリッチもいた;

表情の冷たいデビルロードや、複数の翼を持つ審判の天使もいた!

……

最後の場面で。

その小柄な黒い影は、高慢な審判の天使の翼を残酷にもぎ取った。

最後にその頭を足で強く踏みつけ、完全に潰れて変形するまで踏み続けた。

審判の天使は身長二メートル四十センチもあった。

しかしその頭を踏みつけていた影は。

わずか一メートル五十センチしかなかった。

……

「これが黒虎師匠か?」

ロジャーは深く衝撃を受けた。

平沙派武術を極めると、まさかここまで凄まじい力を得られるとは!

武術を学ぶ者なら誰でも分かる。

身長一メートル五十センチが何を意味するか。

先天的な欠陥は、後天的な努力を一万倍重ねても埋められないことがある。

しかし黒虎師匠はそれを成し遂げた。

成し遂げただけでなく、極限にまで到達した。

ロジャーは思わず敬意を表した。

黒虎の武術理念は殺気に満ちており、清泉宗のような超然とした風格に比べると少々格が落ちる。

しかしロジャーはむしろこの理念の方が現実的だと感じた。

もちろん、どちらが優れているということはない。

ただしこの混沌とした世界では。

黒虎師匠の武術理念の方が生存と戦いには明らかに適している。

……

「あなたは黒虎師匠の真伝を得た」

「あなたが習得している全ての平沙派武術が自動的に一段階上昇した」

……

「これが高悟性の利点か?」

ロジャーはデータパネルの変化を見て、喜色満面だった。

武術家の拡張には独特のレベル区分があり、大きく五段階に分けられる:

初窺門徑。

登堂入室。

融會貫通。

武道極意。

絶頂宗師。

ロジャーは拡張内の様々な武術の修行状況を確認した。

思わず赤面してしまった。

……

「清泉宗武術:開山拳(初窺門徑)粉碎掌(登堂入室)」

……

「平沙派武術:スライディング(融會貫通)膝当て(融會貫通)股間狙いの蹴り(融會貫通)」

……

「私という堂々たる清泉宗の弟子が。」

「出会い頭に'黒虎三連撃'とは?」

「これは相応しくないだろう?」

ロジャーは表情を歪めた。

……

数時間後。

原始林の空き地で。

一匹の吊り目に白い額を持つ密林斑斕虎が身を低く伏せていた。

それは喉から低い唸り声を発していた。

その前に一人の大柄な類角魔が立っていた。

自分より二レベル上の「密林斑斕虎」と対峙しているにもかかわらず。

類角魔は少しも怯まなかった。

彼は素手で相手に向かって歩いていった。

密林斑斕虎は相手の傲慢な態度に激怒し、突然前方に飛びかかった。

その瞬間。

横のいばらの地から、気の波動に包まれた人影が飛び出してきた!

平沙派絶技!

スライディング!

「このスライディングで気を80%消費した!」

「これで密林斑斕虎を吹き飛ばせないはずがない!」

スライディング中のロジャーはそう考えていた。

突然、その大虎が素早く方向を変え、猛然と自分に向かって飛びかかってきた!

吼!

密林斑斕虎の唾液がロジャーの顔にかかった。

類角魔が素早く飛びかかって密林斑斕虎の肩甲骨を掴まなければ。

ロジャーは転がって避けるしかなかっただろう!

ふうふうふう!

大量の気が周囲に散っていった。

ロジャーは無表情で顔の唾を拭いながら、深い思考に入った:

「一体どこが間違っていたんだ?」

「なぜ私のスライディングはこんなに遅いんだ?」

彼は密林斑斕虎と殴り合っている類角魔を見て、黙って白鴉の冠を取り出して被った。

「殺さないでくれ。」

「後でまた試してみたいから。」

この試行は三日三晩続いた。

実験対象は密林斑斕虎のような下位から、淺齒象や恐爪獣のような高位の魔物まで順次変更された。

そしてロジャーはついに「スライディング」の正しい使い方を習得した。

この武術は気との関連が非常に深かったのだ!

スライディングの前に。

必ず足の經穴に気を溜める動作が必要だった。

気を溜める時間が長いほど、消費する気も多くなり、威力は増すが、スライディングの速度は遅くなる。

十分の気を消費するスライディングは、お年寄りの散歩のように遅い。

八分の気は普通の人の歩行速度程度。

五分の気はかなり速くなる。

三分の気は前世の地球での人類の短距離走世界記録に近い。

そして一分の気のスライディングは、まさに電光石火。

近距離では、相手に反応の余地すら与えない!

「スライディング」に「先手必勝」を組み合わせれば、「近距離での強制100%転倒」となる!

スライディングを受ける側がロジャー自身でない限り。

……

二週間後。

原始林の奥深く、人工的に掘られた深い穴の中で。

改良された木杭だらけの雷奔龍がタワーシールドさんに必死に突進していた。

両者は激しく戦っていた。

突然、横から電光と白い気を纏った美男が飛び出してきた!

その動きは格好良かったが、とても遅かった。

スローモーションのコメディのようだった。

しかし雷奔龍のような巨大で鈍重な体では、この気を満タンに溜めたスライディングを避けることはできない!

轟という音とともに!

その黄白の電光が雷奔龍の後肢に激しく衝突した瞬間。

この巨大な生き物の体は横に倒れ始めた!

ロジャーは片手で地面を突いて身を起こし、素早く逃げ出した。

次の瞬間。

雷奔龍は地面に無様に倒れ、天を揺るがすような土煙を上げた。

それは数十秒に及ぶ「スタン」状態に陥った!

「全員攻撃!」

ロジャーが言うまでもなく。

巨斧を振るう類角魔たちが一斉に襲いかかった。

乱暴な斧撃の後。

太い竜の尾が熟練の技で切断された。

遠くで。

ロジャーは埃を払いながら。

たった今手に入れた一巣の竜の卵のことを考えると。

心からの笑みがこぼれた。

また充実した一日だった。

……

二時間後。

筋肉質の部下たちが「よいしょ、よいしょ」と戦利品を片付けている時。

突然ロジャーの視界に黒い影が飛んできた。

瞬く間に。

その影は彼の側まで飛んできて、必死に彼のズボンの裾にすり寄った。

ロジャーは少し驚いてガーゴイルのつるつるした頭を撫でながら:

「戻ってこられたのか?」

「一ヶ月も会わなかったから、もう成功して逃げ出したのかと思ったよ?」

原始林に入った直後。

ロジャーはこいつを斥候として放したのだが、まさか帰ってこないかと思っていた。

ガーゴイルは申し訳なさそうに身振り手振りで説明した。

隷属の契約から、異常な波動が伝わってきた。

ロジャーの表情が徐々に険しくなった:

「森の中に陣営があるって?」

「お前は捕まって、一ヶ月も閉じ込められていた?」

「まさか死靈術師か?」

……