「また一つの珍品だ」
ロジャーは心が躍った。
「新月の玉佩」は平沙派の門派の珍品に違いない——
各武術流派には、それぞれの珍品がある。
繁栄している大門派は複数の珍品を持つこともある。
ほとんどの場合。
珍品同士は互いに衝突することはない。
つまり、ロジャーは「白鴉の冠」と「新月の玉佩」の特技を同時に持つことができる。
彼は即座に「はい」を選択した。
新月の玉佩から淡い光が放たれた。
温かい気が一気に彼の体内に流れ込んだ。
全身が心地よく、爽快感に包まれた。
三十分後。
……
「本日の気命共鳴が完了しました」
「進捗:1/14」
「新月の玉佩の主に一歩近づきました」
……
白鴉の冠の「毎日1時間×30日」と比べると、新月の玉佩の方がずっと簡単そうだ。
ロジャーはこれが黒虎師匠の真伝を受けたことと関係があるのではないかと推測した。
……
その後しばらくの間。
ロジャーは引きこもりの生活を送った。
定期的な気命共鳴の他は。
藥劑學と戦略物資の製作により多くの精力を注いだ。
農場の他の人々もこれを当たり前のことと受け止めていた。
彼が不在だった期間中。
アランは「羅傑様は農場で修行を続けており、一度も離れていない」という印象を上手く作り上げていた。
そしてこの過程で、「市中隱遁」も大きな役割を果たした。
多くの人々は羅傑様という人物を知っていながら。
具体的な事態に直面すると、無意識のうちに彼の存在を忘れてしまうのだ。
もちろん。
これは年明け以降、ジョニータートルと水魔の数が激減し、農作物が魔物の被害を受けることが少なくなったおかげでもある。
この期間中。
ロジャーは一度こっそりと水鬼の森を訪れた。
その結果は彼を悲しませた。
かつては賑わっていた水鬼の森は無人となり、水の茨だけが一層繁茂していた。
水魔の弟が姿を消したのはまだしも。
ジョニータートルたちも空の卵の殻だけを残していった。
卵の殻があるということは。
母亀たちはまだ変わらず執着していたということだ。
しかし孵化した子供たちはどこへ行ってしまったのか。
この問題は一時期ロジャーの心の病となった。
彼はそのために何日も憂鬱な日々を過ごした。
あっという間に。
時は九月末となった。
……
静かな夜の楼閣で。
ロジャーは最後の気命共鳴を行っていた。
しかし何故か。
今夜は心が落ち着かなかった。
何度も集中できない状態が続いた。
「この感覚は...おかしい」
ロジャーは表情を引き締めて新月の玉佩を置いた。
手動で占いをする必要もなく。
3環の望氣術からすでに示唆があった。
……
「ヒント:危険が近づいていることを感じ取りました。これは非常に強く、正確な直感です」
……
「ヒント:潜在的な危険は埋骨の地か灰岩城に関係している可能性があります」
……
「やはり」
ロジャーは躊躇することなく、断固として占いを選択した。
今では彼も徐々に理解していた。
占いで消費される運気は、占う事象の重大さと密接に関係している。
普通の些事で消費される運気は一、二日で回復できる。
大きな事象ではより多くの運気が必要となる。
しかしロジャーが占いの結果からより多くの利益を得られるなら。
それは少しの運気を投資して大きな運気を得る取引のようなものだ。
そう考えると実際にはとても割に合う。
しかし注意すべきは。
投資というものには大きなリスクが伴うということだ。
そのためロジャーは常に占いに対して抑制的で慎重な態度を保っていた。
今日のような状況でのみ、彼は躊躇なく行動に出た。
……
「占い:灰岩城の異変」
……
史詩級の光景が突如としてロジャーの目の前に広がった。
まるで巨大な鷹となって、灰色の空を舞うかのようだった。
鷹の目で大地を見下ろす。
見渡す限りの赤褐色の大地から、無数の白骨が地面を突き破って現れた。
ネガティブエネルギーが際限なく注ぎ込まれていた。
最下級のスケルトン兵営と幽靈守衛から、レベルの高いゾンビサーバントと白骨の戰士、さらにスケルトンアーチャー、灰色騎士、放浪者、氷霊の触手まで……
その高い城壁の上に。
ロジャーは巨大な骨竜を目にした。
骨竜の目には鬼火が燃え、冷淡に前方を見つめていた。
その背後には、無数の骨竜軍団が控えていた!
骨竜の背に。
巨大な鎧に身を包んだ者が十字巨劍を高く掲げた。
その瞬間!
空一面の暗雲が巻き返された。
「我々の時間は、もう多くない」
「死者だけが、生きたまま境界を越えられる!」
その声には言い表せないほどの寂寥感が漂っていた。
言葉が落ちると。
百を超える骨竜が翼を羽ばたかせ、城壁から滑空していった。
光景は急激に収束した。
最後の最後に。
ロジャーは灰岩城の上空を覆う黒々とした暗雲を目にした。
あの雲。
どこかで見覚えがあった。
……
灰岩城が南下して戦争を仕掛けようとしている。
これにロジャーは驚かなかった。
しかし骨竜騎士のあの言葉が深く彼の脳裏に刻まれた。
「死者だけが、生きたまま境界を越えられる」
彼は思わずしばらくその言葉を反芻した。
アランから受け取ったセラ川の情報と照らし合わせると、彼の眉間に深いしわが寄った。
しばらくして、彼は首を振りながら独り言を呟いた:
「これが真実だとは思えない」
彼の眼差しは再び確固としたものとなった。
認めざるを得ない。
今回の占いはロジャーに大きな衝撃を与えた。
骨竜騎士の言葉はさておき。
灰岩城の上空にあった暗雲は、かつて彼が屍羅妖を討伐した時に見た雲にそっくりだった。
あの人を押しつぶすような感覚。
間違いない。
「山雨欲来風満楼か……」