夢の世界。
救済の光支部。
「反対です!」
オリヴィアは厳しい表情で言った。「我々の教団はまだ弱小で、他の神秘結社への遠征には適していません!」
「分かっています。私一人で行くつもりです!」
琳は唇を噛んだ。
兄の訃報を知ってから、心に大きな穴が空いたように感じ、その代わりに復讐の炎が燃え盛っていた。
もしあの時、緋色の月の存在に深く蝕まれていなければ、正気を失っていなければ、兄と一緒に逃げられたかもしれない!
「あなたも駄目です。あなたは我々の教団の聖女であり、重要な戦力なのです。」
オリヴィアは深い溜息をつき、その声には諦めと無力感が滲んでいた。「私たちは黒日教団の先遣隊を壊滅させました。彼らは必ず新たな刺客を送ってくるでしょう。ディアートは主が加護する街です。邪教徒に渡すわけにはいきません。私たちはこの街のために戦わなければなりません。その時こそ、復讐の機会となるのです!」
「それに...もしあなたの兄が生きているのなら、早く救出する必要がありますが、今は...もっと強くなってから報復すればいいのです!」
「強く...報復...」琳の瞳に焦点が戻ってきた。「ありがとう、オリヴィアお姉さま。私、分かりました。」
「はぁ...説得できることを願うばかりです。」
オリヴィアは琳の背中を見つめながら、苦々しく首を振った。
彼女は神秘の道を進むことがいかに困難であるかを痛感していた!
この世界にはもともと超越の力など存在せず、昇級するためには、より深遠な神秘学の知識と、より多くの靈性、さらには血祭りの力さえも必要とされる!
これらを得るためには、常に大きな困難と危険が伴う。
特に、神秘の道を歩みながら、自身の理性と自由意志を保とうとすることは、さらなる困難を重ねることになる。
...
バン!
琳は自室のドアを閉めた。
「オリヴィア、ありがとう。でも、もう待てないの。」
彼女は独り言を呟き、窓を開けた。
ビロードのカーテンを開くと、荒廃した通りが見え、緋色の月光が水のように流れていた。
琳は真剣な表情で祈り始めた。「未知を彷徨う虚妄の霊よ、絶対中立の存在よ、沈黙の観測者よ...」