第166章 虫の母の臣服と昇格！
イヴは空中に浮かんでいた。
聖光が彼女の周りを取り巻き、その比類なき姿をより高貴で神秘的に引き立てていた。
澄んだ美しい声が渓谷に響き渡り、威厳に満ちていた……
「すげえ、かっこいい！」
「さすが女神様、出る手が違う！」
「女神様の化身、大好き！私たちもいつか召喚できるようになるのかな！」
イヴが一瞬で巨大な蜘蛛の母を制圧し、その言葉に上位存在としての冷静さと蜘蛛の母への無関心が滲み出ているのを見て、プレイヤーたちはますます興奮していった……
青い星では、『エルフの国』のサービス開始から一ヶ月以上が経っていた。
ゲーム内で最も人気のあるNPCを挙げるとすれば、それは間違いなくイヴ女神様だった！
完璧なキャラクターモデリング、映画以上に華麗なエフェクト、そして陣営リーダーとしてのバフ効果、さらには誰かの有名声優が演じているとしか思えない完璧な声優演技により、プレイヤーたちはほぼ全員が女神様の信者と化していた。
彼らは『エルフゲーム』にログインする時でさえ、「ゲームをする」とか『エルフの国』をプレイするとは言わず、冗談めかして「じゃあ、イヴ女神様を守りに行ってくる」とか「じゃあ、世界樹を守りに行ってくる」と言うようになっていた。
もちろん、それは冗談に過ぎない。
プレイヤーたちは皆知っている。イヴ女神様は体調が優れないとはいえ、『エルフの国』における最強の戦力だということを！
彼女が出会った敵は、ほとんど一撃で倒されていた。
そして、ストーリーが困難になると、女神様はほぼ必ず登場し、プレイヤーたちの強力な後ろ盾となっていた。
うーん……そう考えると、ゲーム内で誰が誰を守っているのか、まだわからないかもしれない……
まあ、どうでもいい。
とにかく、エルフの勢力を発展させることは、女神様の勢力を発展させることだ。
女神様の勢力を発展させることは、女神様を守ることではないか？
うん……間違いない。
もちろん、本当に女神おねえさまに守られるのも、悪くないかもしれない！
女神様は美しく強大で、クエストを出せて、重要なストーリーではボスと戦ってくれる上に、崇拝もできて……
そして……李牧さんも言っていたように、このゲームのNPCは全て独自の感情とメモリーシステムを持っているのだから、陣営リーダーであるイヴ女神様がないわけがない。
女神様は……単なる背景や象徴ではなく、感情のない便利屋でもない。
人格を持った陣営リーダーNPCなのだ！
なんて素晴らしいんだ！
神の使徒が女神様の化身を召喚できることを知ってから、多くのプレイヤーが密かにエル・ムーンライトに何度も神の使徒になる方法を尋ねていた。
しかし残念ながら、毎回同じ答えが返ってくるだけだった：
「心身を完全に女神様に捧げた者のみが、その使徒となることができる」
そういえば、どうすれば心身を完全に女神様に捧げたことになるんだろう？
ずっとゲームをプレイしているだけでもいいのかな？
プレイヤーたちには分からなかった。
ストーリーのトリガーになるかもしれないと、神殿で女神の像に向かって毎日祈りを捧げる人まで現れたが……効果はなかった。
最終的に、プレイヤーは神の使徒にはなれないという結論に達するしかなかった。
少なくとも……今のところは。
だって……
本当にイヴ女神様を信じろというのか？
とはいえ、実際のところ天朝の民の大半は信仰とは何かすら知らない……
お金がかからないなら、少しは信じてもいいんじゃない？
信じるってどういうことだ？
しかし、神の使徒になれないからといって、プレイヤーたちの女神様への熱狂が止まることはなかった。
女神様が出手する機会はそう多くない。
女神様の勇姿を直接目にできるのは、貴重な機会だ！
その場にいたプレイヤー全員が目を見開き、興奮して女神様の動きを見守っていた。
スクリーンショットや動画の撮影は、もう基本的な操作になっていた……
地面では、神の鎖に封印された地穴蜘蛛が低い唸り声を上げ、その声には恐怖と怯えと怒りが混ざっていた……
それは抵抗しようとしたが、身動き一つ取ることすらできなかった。
半神すら封印できる神の鎖は、まだ世俗の等級制限を突破していない魔獣如きが抗えるものではなかった。
服従するか、死ぬかだ！
イヴがこの言葉を発した時点で、実際にはもう選択の余地はなかった。
なぜなら真なる神が望めば、その魂に強制的に真神の印を刻み、配下とすることは容易だったからだ。
ただし、もしその過程で必死に抵抗すれば、たとえ印を刻むことができても、蜘蛛女王の魂に損傷を与え、さらなる成長の可能性を失わせてしまう可能性があった。
そして、それはイヴの望むところではなかった。
生命の女神として、イヴは強制的に服従させた後で神力を使って相手の魂を修復することもできた。
しかし、スムーズに服従させることができるのに、なぜわざわざ余分な神力を使う必要があるだろうか？
一言多く言うだけの話なのに……
どうしてもダメなら威嚇すれば、数ポイントの神力値を節約できるかもしれない！
そして数ポイントの神力値があれば、現段階のプレイヤーたちを何度も復活させることができるのだ。
これが、イヴが以前黒竜メリエルの魂に強制的に印を刻まず、屈服させてから刻んだ理由でもある。
黒竜と同様に、イヴが注目しているのは蜘蛛女王の実力だけでなく、その潜在能力でもあった。
それはすでに黄金上級の極みに達しており、さらに進めば伝説級だ！
そして伝説級の実力は、まさに大陸の最高戦力の一つとなり、半神と真なる神に次ぐものとなる。
イヴの配下には今まさにこのレベルの人材が不足していた。
プレイヤーたちは恐るべき第四の天災ではあるが、まだあまりにも弱小だった。
もちろん、もう一つの理由は、イヴが相手を信者として迎えたいと考えていたことだ。
群れの意識を持つ生命として、蜘蛛女王が巨大な群れを制御するためには、その魂が非常に強大でなければならない。
もし信者として迎えることができれば、提供される信仰の力は成年した巨竜に劣らないかもしれない。
そのため、総合的に見て、イヴは相手が自ら降伏し、魂を開いて真神の印を受け入れることを望んでいた。
ただし……彼女は蜘蛛女王の決意を過小評価していたようだ。
イヴの脅しを聞き、イヴの強大さを知っても、それは屈服を選ばなかった。
相手の頭に手を置くことで、イヴは蜘蛛女王の心の中にある感情を感じ取ることができた……
それは恐れ、恐怖、屈辱、怒り、そして……深い悔しさだった！
悔しさ？
イヴは少し驚いた。
彼女は蜘蛛女王の状態をもう一度注意深く調べると、すぐに異常な点を発見した。
この蜘蛛女王は……傷を負っていた！
しかし、それは外部からの損傷ではなく、体内の魔力システム全体の損傷だった。
セイグス世界では、魔力を持つ生物は皆、体内に魔力循環のシステムを持っている。
これは……青い星の玄幻小説における修行者の経脈のようなものだ。
調べてみると、イヴはこの地穴蜘蛛の女王の体内で、魔力循環システムが非常に乱れていることを発見した。
それだけでなく、さらに詳しく観察すると、相手の魂にも僅かな損傷があることがわかった……
調査を終えた後、イヴは瞬時に状況を理解した！
この黄金上級ゴールドランクの蜘蛛女王は、まさに昇級の重要な時期にあったのだ！
以前リベンデールの地下に潜んでいたのは、他でもない、伝説郷への昇級のためだった。
伝説郷への昇級には大量の資源を吸収する必要があり、鉱物資源が豊富なリベンデールは、明らかに彼女に選ばれていたのだ。
しかし……今や失敗してしまった。
その失敗の原因も、イヴには分かっていた。
それは、おそらく弁当さんたちが投げ込んだ爆薬だろう……
威力は三環から四環の爆裂魔法程度だったが、タイミングが悪すぎたのだ！
伝説郷への昇級の重要な時期には、移動はおろか、大きな妨害を受けてはいけないのだ！
その後、彼女がそれほど怒り狂い、プレイヤーたちを狂ったように追いかけたのも無理はない……
魔獣の昇級はもともと困難で、彼女の負った傷は更なる進化への道を完全に断ち切ってしまったのだ！
これらを知って、イヴは苦笑いを浮かべた。
彼女は心の中で地穴蜘蛛の母のために黙祷を捧げた……
これは……本当に可哀想だ。
イヴには、彼女がどれほど悔しい思いをしているか想像できた。
結局……一度伝説郷に昇級すれば、それは全く別の世界なのだから。
「どうやら神力値を使う必要があるようだけど、これはむしろ良いかもしれない！」
イヴはそう考えながら、心に決意を固めた。
彼女は少し考えた後、神力を使って蜘蛛女王とテレパシーを交わした：
「もし私に従うなら、あなたの傷を癒し、伝説郷への昇級を助けることができる！」
威厳のある声が蜘蛛の母の心の中に響き渡り、その体が少し震えた。
一瞬のうちに、イヴは手のひらから「驚き」と「疑問」の感情を感じ取った。
かなり警戒的だな。
イヴは心の中で笑いながら、テレパシーを続けた：
「私は自然とライフとエルフを司る世界樹、古神――イヴ・ユグドラシルだ！」
「私に従い、私の眷屬となれば、さらなる高みへの機会を与えよう。」
今度は、蜘蛛女王の体は抵抗を見せなくなった。
イヴは、彼女の感情が落ち着いてきたように感じ、怒りの感情が徐々に消えていくのを感じた。
そして同時に、周囲のすべての地穴蜘蛛が突然イヴのいる方向に向かって、伏し拝むように跪いた……
何千何万もの地穴蜘蛛が一斉に跪く光景は、まさに圧巻だった。
「うおっ！蜘蛛が全部跪いた！」
「女神様に降参したってこと？」
「すごいな！女神様の一言で、全部従わせちゃった……」
プレイヤーたちは驚嘆の声を上げた。
イヴと蜘蛛の母の会話はテレパシーだったため、彼らはイヴの約束を知らなかった。
蜘蛛女王の降伏を感じ取ったイヴも微笑み、自然な流れで彼女の魂に眞神の印を刻んだ。
「よろしい、従うことを選んだからには、相応しい力を授けよう！」
今度は、イヴは直接声に出して言った。
言い終わると、イヴは神の鎖を解き、5ポイントの神力を抽出して、一般生物が吸収できる生命力に変換し、地穴蜘蛛の女王の体内に注入した！
生命力が注入されると同時に、蜘蛛女王の体から突然緑色の光が放たれ始めた！
生命力はすぐに彼女の傷を癒し、傷ついた魂を養い、そして……体内の魔晶石へと集まっていった！
魔晶石は、魔獣のエネルギーの核であり、彼らの力の源でもある。
魔獣の昇級は、本質的には魔晶石の昇華であり、それによって体と魂の昇級がもたらされる。
生命力が集まるにつれ、地穴蜘蛛の女王の魔晶石に流れ込むエネルギーは、まるで扉を開く最後の一押しのような力となり、彼女の気配が突然上昇し始めた！
全てのプレイヤーが、蜘蛛の母から恐ろしい力が立ち昇るのを感じた……
「どうなってるんだ？」
「女神様が何か体内に注入したみたいだ……」
全員の驚いた目の前で、地穴蜘蛛の女王の体が急速に縮小し始め、すぐに数十メートルから数メートルまで小さくなった……
しかし、その気配は以前よりもはるかに恐ろしく、獰猛な虫の鎧に金色の模様が浮かび、より高貴な印象を与えていた。
一瞬のうちに、プレイヤーたちは全員気付いた。
この蜘蛛の母が……昇級したのだと！
「うわ……女神様が触っただけで昇級したの？」
「マジか、私も女神様に触ってほしい！」
「ちょっと待って……黄金上級からさらに上って何レベルなの？」
彼らはあれこれと話し合った。
そして、プレイヤーたちは驚いたことに、蜘蛛の母の体がさらに小さくなり、変化し始めるのを目にした……
最終的に、人型へと姿を変えた。
全ての伝説の魔獣は、
人型に変身する能力を持っているのだ！