第183章 用事があれば女神に頼る

呼ばれたエルフ傭兵団の団長たちは非常に素直で、影の代行者である暗黒ドワーフの爐石は、用意していた説得の言葉を全く使う必要がなかった。相手はすぐに契約を結んでしまったのだ。

エルフたちが退出した後も、彼は署名された血の契約を見つめ、黙り込んでいた。

「神官様、何をお考えですか？」

もう一人の暗黒ドワーフが彼の前に現れた。先ほど咸ちゃんを案内した灰色の衣を着たドワーフだ。

爐石は少し沈黙した後、言った：

「彼らの承諾が...あまりにも簡単すぎたと思っているんだ。」

灰衣のドワーフは頷いた：

「神官様のおっしゃる通りです。このエルフたちが何か企んでいるのではと心配です...それに、我々の計画を全て相手に話してしまったのは、少し...」

「少し大胆すぎて軽率だったということかな？」

爐石は微笑んだ。

灰衣のドワーフは頷いた：

「我々はこれほど長く準備してきました...もし何か問題が起きて、黒岩城を一気に制圧できなければ、反抗の機会を完全に失うことになりかねません...」

爐石はそれを聞いて、首を振って言った：

「心配無用だ。私は最初からこれらのエルフに頼るつもりはなかった。契約書に書かれた計画は全て偽りだ。」

「なんですって？」

灰衣のドワーフは愕然とした。

「ふふ、私が全ての希望をこれらのエルフに託すわけがないだろう。ただ彼らを利用して混乱を引き起こすだけだ。巴林の言う通り、これらのエルフは実力は高くないが、死を恐れない。彼らが暴れ出せば、確かにいい機会になる...」

爐石は言った。

そして、また笑みを浮かべた：

「しかし...巴林のもう一つの指摘も正しい。これらのエルフの背後には確かに強大な存在がいる！任務、献祭、真なる神...監視の内容を見る限り、彼らはこれらの言葉をよく口にしていた。相手の具体的な真名は隠されていたが、間違いなく神話級の存在だろう。」

神話級の存在！

半神以上の存在こそが、神話級なのだ！

「だから...この血の契約もあまり気にする必要はない。半神級の存在が手を下せば、我々が設定した血の契約など簡単に解くことができる。」

「もし彼らが契約書の内容を信じてくれればなおよし、もし信じずに死神神殿に全てを告げたとしても、我々に害はない。」

「どうせ...死神神殿は我々が暗躍していることを既に知っているのだから、この程度の情報は大したことではない。それに血の契約の計画は、エルフたちは知らないが、死神神殿のあの方が見抜けないはずがない。エルフたちには他の証拠もないのだから、むしろ死神神殿がエルフたちを疑うかもしれない...」

「しかし、もしエルフたちが本当に血の契約の内容を信じ、自ら城内で死神神殿に立ち向かい、我々にチャンスを与えてくれるなら、その時は彼らに何か見返りを与えてもいい。」

「ふふ、血の契約では彼らに二日間の期限を与えた。様子を見守るとしよう。」

爐石は笑って言った。

「さあ行こう。これ以上ここにいれば、彼女の手先が来るかもしれない。」

...

一方その頃。

血の契約を結んだ後、咸ちゃんたちは退出した。

イヴの操作の下、三人は並んで歩き、黒岩城の人気のない路地に着くまで進んだ。

「彼らの言葉は信用できません。暗黒ドワーフの上層部と友好的な協定を結んだ以上、裏切るような行動はできません。」

「咸ちゃん」は正義感あふれる口調で言い、興奮した表情で可愛い牙を見せた。

「その通り！我々エルフは高潔な種族だ。友を裏切るような行為はできない。先ほどの血の契約は敵地での止むを得ない行動だった。今は脱出できたのだから、全てを真摯に対処しなければならない！」

「デマーシア」は正義感に燃えて同意し、厳かな表情を浮かべたが、おかしな爆発頭が少し雰囲気を壊していた。

「同感です！一度死んでも、エルフを信用を失う種族にはしてはいけません！しかも闇と影の神はソレン商会とも関係があるそうで、我々エルフ族の敵でもあります！」

「トマト先生」は頷き続け、一番普通に見えた。

その後、三人は口を揃えて言った：

「この件は真なる神の信仰に関わる争いです。女神様に報告して、女神様の判断を仰ぎましょう！」

...

空気が一瞬静まり返った。

突然、三人の体が震え、先ほどの制御不能な状態から解放され、再び体を自由に動かせるようになった。

咸ちゃんは目を見開き、手足を動かしながら言った：

「やっと体を動かせるようになった。これが過場シーンってやつ？すごく気まずい会話だったね...」

「ハハハハ！金持ちの咸ちゃん、さっきの話し方とその表情...ハハハハ...マジで面白かった。その幼い顔で真面目な表情するの似合わないよ...威厳なんて全然なくて、可愛いだけ。特にその二本の牙が...ハハハハ...録画しておいたよ...」

デマーシアは笑いを抑えきれずに言った。

「うるさい！消せ！」

咸ちゃんは顔を曇らせ、彼を強く蹴り飛ばし、地面に顔を突っ込ませた。

一方、トマト先生は手元の契約書の写しを見ながら、不満そうに言った：

「『エルフの国』は全体的には良いけど、このストーリー展開は少し硬すぎるね...私は'私'自身の口から闇と影の神が人間の商人とも関係があることを知ったなんて...」

「多分ストーリーのバグじゃない？公式の設定では、私たちが先にこの情報を知っているはずだったのかも。このヒドゥンクエストは偶然トリガーされたのかもしれない。」

咸ちゃんはハイヒールでデマーシアのお尻を踏みながら言った。

「じゃあ...次のストーリーは女神様に会いに行くってこと？」

トマト先生の目に期待の色が浮かんだ。

「あれ？私の個人システムに血の契約の呪いのデバフが出てきたんだけど、みんなもある？」

その時、地面から這い上がろうとしていたデマーシアが個人ステータスの変化に気づいた。

「あれ？私もあるわ、説明を見てみると……うーん……暗黒ドワーフと結んだ血の契約の呪い、契約を破ると死亡する、偉大なる存在の力でしか解除できない……期限は二日間。」

咸ちゃんが読み上げた。

「……」

「……」

「……」

「やばい！最近ずっとトイレ掃除のクエストばかりやってて、他のクエストは全然やってない。完全復活の回数がもう0なんだ！この二日間は絶対に死ねない！」

デマーシアは顔色を変えた。

「貢献度で復活回数を交換すればいいじゃない。そんなに高くないし、私は30回以上貯めてるわよ。あなたのネットワークビジネスは順調そうだから、お金に困ってないでしょう？」

咸ちゃんは不思議そうに言った。

「……」

「……」

「金持ちの咸ちゃんにとっては高くないかもしれないけど、私のネットワークビジネスの貢献度は紫黒中級の鎧と交換したばかりで使い切っちゃったんだ……もう死ねない！それで……ちょっと貸してくれない？」

デマーシアはため息をつきながら言った。

「うるさい！牧兄さんに借りに行きなさい！」

デマーシア：……

「呪い……きっと解除する方法があるはずよ。偉大なる存在って……もしかして女神様？」

トマト先生は眉をひそめた。

そう言い終わるや否や、三人の視界に新しいシステムメッセージが浮かび上がった——

【ディン——】

【あなたたちは得た情報をイヴ女神様に報告し、女神様の判断を仰いでから次の行動を計画することを決定しました……】

このメッセージを見て、咸ちゃんたちは精神が引き締まった。

「女神様に報告するって、もしかして以前の女神様による召喚で、女神様と対話することができるってこと？」

咸ちゃんの目が輝いた。

「きっとそうだよ！前回のストーリー展開も女神様の神殿に召喚されて、豪華な報酬をもらったんだ！」

デマーシアは興奮して言った。

「女神様なら呪いを解くことができるはず！それに次のストーリー展開の鍵にもなるわ！」

トマト先生は判断を下した。

言い終わると、三人はお互いに頷き合い、決意を固めた：

「行きましょう、今すぐ女神様の神殿へ！」

そう言うと、三人は足早に黒岩城を後にした。

……

またメインクエストが来た！しかも隠しメインクエストだ！

咸ちゃんたちがクエストを発見したというニュースはすぐにプレイヤーの間で広まった。

より正確に言えば、まずは三大ギルドの間で広まったのだ……

今回発見されたクエストの詳細は不明だが、暗黒ドワーフの内部問題に関係しているようで、さらに咸ちゃんたちは再び「女神様との謁見」という特別なストーリーイベントを発生させたのだ！

これは『エルフの国』では相当レアなストーリーイベントだ！

そして前回の経験から考えると、三人はまた豪華な報酬を獲得することになるだろう。

もちろん……このニュースは得意げに話すデマーシアから漏れ出たものだ。

この男は連続で二回も「女神様との謁見」イベントを発生させ、他のプレイヤーたちは羨ましさで歯ぎしりするほどだった。

そしてこの出来事は、他のプレイヤーたちにこの隠しメインクエストへの期待を高めさせた……

前回のクエストでは、ゴブリンとの戦闘が直接開始され、多くのプレイヤーがその時に黒鉄ランクに昇級したのだ！

想像できるように、今回のストーリークエストもまた大きな展開になるだろう。そしてドワーフに関係している可能性が高い……

前回は黒鉄下位への昇級だったが、今回は……もしかしたら多くのプレイヤーが黒鉄中位に昇級できるかもしれない！

すぐさま、レベルアップが近いプレイヤーたちは、モンスター狩りとレベリングのペースを上げ始めた。実力を上げて、これから始まるクエストでより多くの経験値と貢献度を得ようと考えたのだ。

一方、咸ちゃんたちはイヴの神殿に到着していた。

すでにイヴ女神様からの神託を受けていた聖女アリスは神殿で準備を整えており、神殿に入ってきた三人のプレイヤーに軽く頷きかけて言った：

「母なる神様はすでにあなたたちの来意をご存知です。神様はあなたたちとの謁見を承諾されました。」

言い終わると、彼女は率先して神像の前に進み、敬虔に跪いた。

咸ちゃんたちも心の喜びを抑えながら、同じように聖女アリスの傍らに跪いた。

エルフの聖女の導きのもと、三人は神像に向かって祈り始めた：

「自然の母に栄光あれ、生命の女神に栄光あれ、偉大なるエルフの主イヴ・ユグドラシルに栄光あれ！」

瞬時に、眩い聖光が神殿を包み込み、跪いていた三人のプレイヤーを飲み込んでいった……

彼らは一瞬の戸惑いを感じた後、周囲の景色が完全に変わっていることに気付いた。