第215章 身を引く傭兵

エルフの森、フィレンツェ。

NPCの手伝いを終えたばかりのデマーシアは、自分の惨めな個人威信度を確認し、ため息をつきながら、天命の都への転送魔法陣に入った。

光が一瞬きらめき、彼は天命の都の中央広場に戻った。

しかし、到着するなり、何か様子がおかしいことに気づいた。

「今日は人が少ないな？」

まばらな広場を見て、デマーシアは少し驚いた。

プレイヤーの主都である天命の都は、普段なら朝から晩まで賑わっているはずだ。特にフィレンツェへの転送魔法陣がある中央広場は、街で最も繁華な場所のはずだった。

特に夜は、第三次テストのプレイヤーが加わってからは、毎晩キャンプファイヤーが開かれ、最近では焼き鳥の屋台まで公然と出るようになっていた。うーん...アリスもすっかり諦めて放任状態だった。

しかし今夜は...

キャンプファイヤーは設置されているものの、広場の人出が異常に少なかった。

それだけでなく、デマーシアは多くの人々が急いで装備を整え、街の南東方向へ走っていくのに気づいた。

「みんなどこへ行ったんだ？」

デマーシアは呆然とした。

彼は急いで南東方向へ走っていくプレイヤーの一人を引き止めて、困惑した様子で尋ねた：

「兄弟、どこへ行くんだ？広場の人たちは？」

そのプレイヤーはデマーシアを見て、少し意外そうな表情を浮かべた：

「デマーシアさん？まだ行ってないんですか？」

「さんって...全サーバーで個人威信度最低のダメ人間なのに...」

自分の威信度を見て、デマーシアは泣きたい気持ちになった。

プレイヤー：...

彼は咳払いをして、言った：

「えーと...誰も教えてくれなかったんですか？黒龍城の方で隠密任務が発生したみたいで、人類傭兵団が来て戦闘が始まってるんです！銀級のBOSSもいて、魔法装備を身につけているそうです！みんなそっちに向かってますよ！」

「人類傭兵団？隠密任務？」

デマーシアは少し驚き、急いでチャットシステムを開くと、案の定、メッセージが爆発的に増えていた...

自然の心ギルドのチャット欄は大騒ぎになっていた：

「大変だ！人間の軍隊が黒龍城を攻撃してる！」

「えっ？人間の軍隊？」

「傭兵団みたいです！城内に突入しました！もう大混乱になってます！」

「強いの？」

「はい！それに銀級のBOSSもいます！魔法装備フル装備の魔剣士です！」

「マジか！またイベント発生したな！」

「急げ急げ！パーティー組んで戦いに行こう！倒せば銀級装備が手に入るぞ！」

フレンドリストも真っ赤になっていた：

「デマーシア！パーティー組もう！黒龍城で戦闘が始まってる！」

「おい、どこにいるんだ？」

「返事してくれ！」

李牧からも何度も呼び出しがあった：

「どこだ？集合するぞ！」

「...」

「トイレ掃除終わった？」

デマーシア：...

前回、トイレ掃除の途中でギルドからの連絡に引っ張られて地下世界でマルチ商法に巻き込まれ、数日間のトイレ掃除の努力が水の泡になって以来...デマーシアはNPCの好感度を上げる時は、泣く泣くチャットをブロックするようになっていた。

だから...今日はこの時まで知らなかったのだ！

「いつからの話だ？！」

彼は期待を込めて尋ねた。

「うーん...そんなに前じゃないです。十数分前くらいかな。ニャー姉が最初に発見したみたいです！今も捕まってるみたいですけど！」

そのプレイヤーが答えた。

彼はモエモエ委員会のメンバーだった。

デマーシアは納得した：

「またあの貧乳の中学生ロリか？運が良すぎだろ！」

プレイヤー：...

「デマーシアさん、もう行かないと。チームメイトが呼んでるので、先に失礼します！」

彼は口角を引きつらせながら、デマーシアに手を振って、急いで走り去った。

デマーシアは少し呆然とした後、数秒間迷ってから、急いで武器を取り出し、李牧に連絡を取りながら、天命の都の南東にある黒龍城への転送陣がある場所へと急いだ...

...

黒龍城の大広間にて。

次々と現れるエルフたちを見て、鱷魚の顔は徐々に青ざめていった...

元々は黒龍の活動のために拡張された広大な城の大広間は、今や完全武装したエルフたちで埋め尽くされていた。

見渡す限り、数百人を下らない数だった！

彼らは押し合いへし合いしながら、罵声を浴びせかけ、傭兵たちに向かって突進してきた。最前列はすでに傭兵たちと交戦を始めていた。

しかし、人数が多すぎるため、後ろの者たちは陣形を展開できず、混乱した状態で押し合っていた。

しかし、エルフたちが押し合いへし合いする滑稽な光景を見ても、鱷魚は少しも喜べなかった。

エルフたちが次々と現れるにつれ、彼の心境は徐々に変化していった。喜びから驚きへ、そして驚きから恐怖へと！

三十人のエルフなら、彼らは楽々と対処できた。

百人のエルフでも、全力を出せば、傭兵たちの助けを借りて、素早く勝利することも不可能ではなかった。

しかし今は...

大広間には既に三百人を超えるエルフが押し寄せていた！

それだけではない。彼らは全員が完全武装し、その大半が黒鉄中位の実力を持っていた！

さらに驚くべきことに、後ろの魔法陣はまだ光を放っていた。

もし魔法陣の上に転送されてきたエルフたちが立ち尽くしていなければ、おそらくどこからともなくさらに多くの者たちが転送されてくるところだった...

これは...どうしてこんなに多くのエルフがいるのだ？！

世界中に残った若いエルフが全員集められたのか？！

エルフ族...いつからこんなに溢れるようになったんだ？

鱷魚は呆然としていた。

聖マニア帝国の最大の奴隷市場でさえ、エルフ奴隷の数が最も多かった時でも、二百人にも満たなかったはずだ。

しかも、その中で若いエルフは半分にも満たなかった！

ところが、ここには...数百人のエルフがいて、全員が若く健康な者ばかりだ！

「団...団長...まだ戦いますか？」

ある傭兵が、団長の顔色が次第に悪くなっていくのを見て、恐る恐る尋ねた。

「戦えるわけないだろう！縛り上げたエルフを連れて、特に女性を優先して、撤退だ！」

鱷魚は罵りながら、即座に撤退を選択した。

すでに数百人もの黒鉄中位のエルフが集まってきているのだ！

彼の白銀中位の実力と百人の部下を合わせれば、戦えば勝利するのは時間の問題だが——

あちらの転送魔法陣がまだ光り続けているではないか！

鱷魚は...後からどれだけのエルフがやってくるのか、想像するのも恐ろしかった。

永遠の主よ！

これらのエルフは、一体どこから現れたのだ？

しかし、鱷魚にはもうこの問題を考える時間はなかった。

すでにここで十数分も費やしてしまっている。

そしてこれほどの戦いは、いつ黒竜を呼び戻してしまうかもしれない。

もし黒竜が戻ってきたら、彼らの百人以上がここで命を落とすことになるだろう。

だから...好機を逃さず、すでに縛り上げたエルフを連れて撤退するのが正解だ！

鱷魚は目を光らせ、懐から魔法の巻物を取り出すと、すぐにそれを破った！

かすかな魔法の波動が過ぎた後、彼の手には大量の灰黒色の煙が現れた。

鱷魚が手を振ると、煙は瞬く間に広がり、エルフたちの視界を遮った...

大広間では、プレイヤーたちの咳き込む声が次々と聞こえた。

「人を連れて！撤退するぞ！」

すべてを終えると、鱷魚は号令をかけ、まず自ら縛り上げられた女エルフを担いで外へ走り出した...

残りの人間傭兵も同様に、予め壁際に縛り付けていたエルフたちを連れて、城の外へと逃げ出した。

「げほげほ...これは何の煙だ？むせる！」

「まずい！奴らが逃げた！」

「早く追いかけろ！」

傭兵たちが縛られたプレイヤーを連れて城を出た後、残りのプレイヤーたちも急いで追いかけた。

しかし、城を出た後、鱷魚は冷笑を二度浮かべ、再び懐から巻物を取り出した。

それは金色の縁取りがされた魔法の巻物で、複雑な魔法の紋様と銘文が刻まれていた。

ベテランの銀級強者として、一つや二つの切り札を持っていないはずがない。

そしてこの巻物こそ、鱷魚が数年前に古い遺跡を探索した際に手に入れた、失われた空間魔法の巻物だった！

同時に、これこそが鱷魚が黒竜に発見されるリスクを冒してまで城に潜入する決め手となったものだ！

彼が呪文を唱え始めると、魔法の巻物も柔らかな光を放ち始めた...

そして、巻物は自然に燃え上がり、人の心を震わせる魔法の波動が広がり、鱷魚の前に光り輝く門を形成した！

七環魔法——【転送門】！

この魔法は最大で五分間持続し、入った者を五キロメートル先まで転送することができる！

そして鱷魚は、すでに陣営で準備を整えており、巻物を起動すれば、すぐに転送先を五キロメートル先の自分たちの陣営に設定できるようにしていた！

これらすべては、彼が早くから計算していたことだった！黒竜の反撃から逃れるためだ。

ただ、まさかエルフから逃げるために使うことになるとは思わなかった...

「行くぞ！」

光の門が開くと、鱷魚は部下たちに命令した。

傭兵たちも急いで、呆然とした「戦利品」たちを連れて光の門の中へと入っていった...

最後の傭兵が入った後、城からエルフたちが追いついてきた。

「まずい！奴らが逃げる！」

「転送魔法か？！」

「早く！追いかけろ！」

彼らは武器を掲げ、蜂の群れのように鱷魚に向かって殺到してきた。

迫り来るエルフたちを見て、一瞬、鱷魚は何人かのエルフも転送門に引き込もうという衝動に駆られた...

転送門の向こうには自分の仲間が千人もいるのだ。待ち伏せすれば、これらのエルフは来る者も去る者も皆殺しにできる！

鱷魚は、ここのエルフが自分の傭兵団よりも多いとは信じていなかった！

おそらく、数百人がほぼ限界だろう？

しかし...この考えはほんの一瞬で消え去った。

なぜなら、空に次第に大きくなる黒い影が見えたからだ...

黒竜だ！

黒竜が...戻ってきた！

好機を逃さないことこそ、傭兵団が長く存続できる真理なのだ。

鱷魚は空を深く見つめ、追いついてきたエルフたちに冷笑を浮かべながら言った：

「運がいいな！さらばだ！」

言い終わると、彼も光の門の中に入った...

そして、光の門がわずかに明滅し、闇の中に消えていった。

取り残されたプレイヤーたちは、ただ呆然と顔を見合わせるばかりだった...

「本当に慎重な奴だな！」

プレイヤーの視点から鱷魚の一連の行動を見ていたイヴは、心の中で少し感心した...

「ただ...なぜ人を連れ帰る必要があったのだろう？」

城の外で、チャットシステムを通じて連れ去られた数十人の不運な者たちと連絡を取り合っているプレイヤーたちを見て、イヴはため息をついた。