第38章 絶対に撃たないで

林逸は再び銃をハゲの頭に押し付けながら言った。「彼らに言え、動くなと。さもないと人質を殺すぞ!」

「お、お前ら...動くな...」

ハゲは本当に泣きたい気分だった。これは先ほど銀行で自分たちが警察に言った言葉ではないか?

こんなに早く報いが自分に回ってくるとは。これぞ現世報というものか。まさに今のような状況だ!

「ふむ、いいぞ」

林逸は満足げに頷いて、尋ねた。「では話してもらおうか?花火兄さんとは誰だ?」

「私の上司です...他のことは分かりません。彼に命令されただけです。お兄さん、撃たないでください...」

ハゲも命が惜しい人間だった。先ほどまで威張り散らしていたが、自分の命が危険に晒されると、ハゲも怖気づいた。

元々この仕事を引き受けたのは金のため、贅沢な暮らしをするためだった。しかし命を賭けてまでする価値はない。

林逸は眉をひそめた。このハゲは小物で、内情など何も知らないことは明らかだった。

「よし、車を止めろ」

林逸はハゲに命令した。

「止める?何のために?」

ハゲは驚いた。

「降りるためだ。このまま彼女を誘拐し続けるつもりか?」

林逸は目を見開いて尋ねた。

「いえ...つまり、警察署に連れて行かないんですか?」

ハゲは驚いた。林逸が彼らを見逃してくれるとは思わなかった。

「それが俺と何の関係がある?」

林逸は白目を向けて言った。「俺は警察じゃない。給料でももらってるわけじゃないしな」

ハゲは林逸の言葉を聞いて大喜びした。最初は警察署に連れて行かれると思っていたが、今や一難を逃れられそうで、当然ながら非常に嬉しかった。

任務は失敗したものの、銀行から大金を奪えたのだから、残りの人生を贅沢に過ごすには十分だった。

そこで、ハゲは興奮して急いで運転手に車を止めるよう指示した。

林逸はハゲから銃を取り上げ、楚夢瑤に渡した。「これを持って、後でタイヤを狙え」

「はい...」

楚夢瑤は林逸がなぜそう言ったのか分からなかったが、銃を受け取り、しっかりと握りしめた。

林逸は楚夢瑤に先に降りるよう促し、その後自分も降りた。降りる際に言った。「俺か夢瑤に撃ちたければ撃てばいい。ただし、必ず殺せよ。もし殺せなかったら、俺はお前らの燃料タンクを狙う。分かったか?ハゲさん?」