第131章 悩める宋凌珊

宋凌珊は楊懷軍にそう指摘されて、確かにそういえば思い出した。あの容疑者は数ヶ月も行方不明になってから逮捕されたのだった。

「楊隊長、つまり……」

宋凌珊は少し不確かな様子だった。

「この事件は、少し待ってもいい。容疑者が警戒を緩めた時が、チャンスだ」

楊懷軍は言った。「そうでなければ、焦っても仕方がない」

「えっと、楊隊長、でも私は陳局長のところで軍令状を立てちゃったんです……」

宋凌珊は途端に困った表情になった。事件がこんなに複雑だと分かっていれば、軍令状なんて立てなかったのに。自分で自分を苦しめているようなものだ。

「そうか……」

楊懷軍はそれを聞いて言葉を失った。宋凌珊は本当に大胆だ。こんなことは自分でもできない!

この事件は複雑で、背後の利害関係は、表面上見えているものだけではない!

楚鵬展とはどんな人物か?

省内の有名企業家で、広い人脈を持っているだけでなく、陳家とも親しい。そんな背景がある中で、その娘が狙われたということは、犯人の背景と力は想像に難くない!

普通の人間が楚鵬展に手を出すのは自殺行為だ。だから楚鵬展に手を出せる者というのは、もっと上の層に関わってくる!

そのレベルの人間は、楊懷軍の家柄をもってしても軽々しく関わりたくない。だからこの事件は、本当に難しい!

「宋さん、この軍令状は、少し早まったな」

楊懷軍は今となっては、水を差すのも無駄だが、それでも言わざるを得なかった!

彼は宋凌珊に心の準備をさせなければならなかった。「楚鵬展の娘に手を出せる者が、どのレベルの人間か分かるだろう。これは更に上層部の利害対立に関わることだ。あの強盗犯たちは単なる馬前卒に過ぎない。彼らを倒すのは難しくないが、彼らを庇護する者が問題だ!少なくとも、これらの人々が庇護を失うまでは、この強盗犯たちを見つけるのは非常に困難だ。風が収まって、これらの人々が強盗犯たちを見捨てた時、彼らを見つけるのは朝飯前だ」

宋凌珊は行動が少し衝動的ではあるが、決して愚かではない。楊懷軍の言葉の意味をよく理解した。

そもそも局長のところへ行って軍令状なんて立てるべきではなかった。むしろこれらの困難を説明すれば、局長も自分を追い詰めることはなかっただろう。