鍾品亮が今日やろうとしていることは鐘發白の承認を得ることだった。そのため、鐘發白は特別に側近の部下を一人、アウディ車で学校の門前で待機させていた。
「林逸さま、どうぞ車にお乗りください!」鍾品亮は車のドアを開け、招き入れるジェスチャーをした。
このアウディの運転手はとても不思議に思った。今日の鍾少爺はどうしたのだろう、なぜ部下のような態度なのか?他の人のためにドアを開ける?しかし彼は来る前に鐘發白から、聞くべきでないことは聞かず、運転に専念するようにと言われていたので、この運転手も見なかったことにした。
林逸が車に乗り込むと、鍾品亮はようやく助手席に座った。
「鍾少爺、どちらへ参りましょうか?」鍾品亮が座ると、運転手は尋ねた。
「亮白ホテルだ」鍾品亮は命じた。
運転手は頷き、車を発進させ、素早く目的地へと向かった。
林逸は車の中で、一見のんびりと景色を眺めているように見えたが、実際には鍾品亮とこの運転手の様子を静かに観察していた。しかし道中、この二人には特に変わった行動は見られなかった。
亮白ホテルは、名前こそ俗っぽいが、実際には非常に豪華なホテルであり、松山市では鵬展インターナショナルホテルを除けば、最高級のホテルの一つだった!
それは20階以上ある高層ビルで、前には立派な駐車場と花壇があった。林逸はホテルの規模を見て、鍾品亮の家は確かに裕福なようだと思った。
「林逸さま、どうぞ!」鍾品亮は駐車係の警備員がドアを開けに来るのを待たずに先に車を降り、林逸のためにドアを開け、恭しく彼の側に立った。
駆けつけてきた駐車係の警備員は大いに驚いた。彼らは鍾品亮を知っており、彼が鐘社長の息子であることを知っていた。なぜ今日は若旦那様が他人の従者になっているのだろうか?
「陳兄、車のかぎを私に渡して、それから帰っていいよ。後で自分で車を運転するから!」鍾品亮は運転手に言った。
運転手は当然ためらうことなく車のかぎを鍾品亮に渡し、頷いてから足早に立ち去った。
林逸は内心で笑った。どうやら鍾品亮がこれからやろうとしていることは、他人に隠れてやることのようだ。この運転手さえも信用していないとは。そこで林逸は警戒心を高めた。
前には案内係がいたが、鍾品亮はそれでも恭しく腕を伸ばし、林逸より先に歩いていた。