第62章 一剣西来

目の前の三人の魔修の実力は強く、全員が結丹初期であり、下等仮丹に過ぎないものの、三人が連携して攻撃を仕掛けてくる状況下では、築基初期の齊明は当然ながら相手にならなかった。

齊明は身法を駆使して回避し、三人の魔修の攻撃法術を避けた。巨大な爆発音が響き渡り、齊明が先ほど立っていた場所には大きな穴が幾つも開いていた。

「剣気斬」

シュッ!

齊明は右手を振り、五行法剣の威力を引き出し、築基期法術の「剣気斬」を放った。振り下ろした手から三メートルもの剣気が放たれた。

「たかが築基如きが、分を弁えぬとは」

三人の魔修は不気味な笑みを浮かべ、膨大な法力を放出し、齊明の剣気を易々と粉砕した。双方の実力と境地には明らかな差があった。

「せ...先輩...」

元鳳と蘇軽音は凡人に過ぎなかったが、それでも齊明が劣勢に立たされているのを見て取り、美しい瞳に不安と恐怖の色を浮かべた。

「はっはっは...」

三人の魔修は大笑いした。「齊明よ、青雲峰の真伝弟子、天啓宗の絶世の天才が、今日我ら三人の手にかかって死ぬとはな」

「考えただけでも興奮するわ」

「天才を虐殺する快感といったら、もう絶頂モノだな」

「結丹の魔修か」

齊明は少しも慌てた様子を見せず、むしろ非常に冷静だった。「先ほどの戦いで分かったが、私は『混沌青蓮剣経』を修得したとはいえ、丸々一つの境地の差は、やはり埋められない。まして相手は三人の結丹初期の魔修だ」

明らかに。

齊明は先ほどの戦いで、自分と結丹境との差を確認しただけだった。

しかし。

齊明が自身の本命法剣、すなわち「混沌青蓮剣胎」を完成させることができれば、結丹境の修士と互角に渡り合えるかもしれなかった。

「霍長青」

齊明は言った。「奴らを殺せ」

「承知しました」

霍長青は頷き、ようやく傍らの大木の陰から姿を現した。その姿は一瞬にして消え、まるで瞬間移動したかのように齊明の傍らに現れた。

「もう一人いたのか」

「気をつけろ」

「この修士からは危険な気配を感じる」

三人の魔修が言った。

「御剣術」

カン!

霍長青が出手し、右手を振ると、腰の蜀山法剣が空中に飛び出し、その操りによって、まるで生きた龍のように舞い踊った。

剣気が四方に溢れ出る。

「死ね!」

カン!カン!カン!!!

霍長青の実力は極めて強く、すでに結丹後期で、しかも三品仮丹を凝らしており、下等仮丹の中では最高位の品級だった。

そのため。

わずか結丹初期の三人の魔修は霍長青の相手にならず、全力を尽くしても、なお霍長青に完全に押さえ込まれていた。

「お前は...結丹後期か」

「まずい!!!」

「齊明の側に結丹後期の『護道者』がいるとは、くそっ、なぜ情報にこれが載っていなかった?逃げろ!!」

彼らは恐怖に慄いた。

ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!

血飛沫が散る。

激しい戦いの末、三人の魔修は全て霍長青に斬り殺された。首を一刀両断され、三つの首なし死體が倒れ、流れ出た血が血溜まりとなって広がった。

「ご主人様、敵は始末いたしました」

霍長青は剣を収め、齊明に報告した。

「よくやった」

齊明は頷いた。「戦利品を漁れ」

「はい」

霍長青は応えた。

「齊...齊真伝様...」

元鳳と蘇軽音は三人の魔修の言葉を聞いて、齊明の真の身分を知り、心は興奮と不安で一杯だった。

実際。

元鳳は最初に齊明の声を聞いた時から、どこか懐かしい感覚があったのだが、すぐには確信が持てなかった。今、三人の魔修の言葉を聞いて、完全に確信が持てたのだ。

齊明は彼女たちを一瞥しただけで、何も言わなかった。彼女たちが知ったのなら知ったで構わない、齊明も自分の身分を隠すつもりはなかった。

「ご主人様」

霍長青はすでに戦利品を集め終え、恭しく齊明に差し出した。「これが三人の魔修の持ち物全てです。ご確認ください」

「ふむ」

齊明は頷き、霍長青の手から品々を受け取った。

突然。

「邪畜め!一剣西來!」

カン!

その時。

齊明は一つの声を聞いた。それほど大きな声ではなかったが、全員の耳に届き、まるで魂の深部で響き渡るかのようだった。

思わず。

全員が顔を上げた。

「何が起きた?」

「あれは...」

見れば。

西の方角に。

一筋の剣光が。

言葉では表現できないほどの浩瀚な剣光が。

絢爛?

無量?

壮大?

壮観?

無上?

否!

これらの言葉、これらの表現では、この一剣の恐ろしさと偉大さを形容することはできない。琥珀のような輝きを放ち、まるで天地が育んだ一剣のようだった。

天地の架け橋を貫いた。

強すぎる。

あまりにも強すぎる。

「楊厲!!!」

龍鰐尊者は顔を上げ、その巨大な龍の顔で「一剣西來」を直視し、巨大な龍の瞳には恐怖と驚愕が満ちていた。「貴様!!!」

「宗主!!!」

「宗主様が出手なさったのだ!」

「これは...」

馮老たちは大いに驚いた。

同時に。

心には無限の喜びが湧き上がった。

なぜなら。

宗主が出手した。

龍鰐尊者は間違いなく死ぬだろう。

言うまでもない。

天啓宗の全ての者の心の中で、現宗主の楊厲は無敵のような存在であり、天啓宗を支える最大の柱であった。

「宗……宗主……」

「こ……これは……」

「終わった、終わったぞ……」

妖獣の長老たちも恐怖で全身を震わせていた。

吼!吼!!!

龍鰐尊者が咆哮を上げ、まるで真の龍と化したかのように、その巨大な体から無尽の妖力が湧き上がり、全身の力を結集させた。

「龍鰐呑天」

轟!

龍鰐尊者は最強の手段を繰り出した。彼は巨大な龍鰐法相を現し、天地を覆う巨獣のごとく、虛空界に充満していた。

バキッ!

しかし。

「一剣西來」が貫通し、枯れ木を砕くがごとく、これこそが無敵の剣道、絢爛たる剣道、天下無双の剣道であった。

バキッ!バキッ!

龍鰐尊者の最強の手段は「一剣西來」によって真っ二つに切り裂かれ、「剣道」の威力によって消滅した。

「いやあぁぁ!!!」

この瞬間。

龍鰐尊者は楊厲の實力がいかに恐ろしいものかを身をもって知った。彼は楊厲の剣道がどれほどの境地に達しているかを痛感した。

計り知れない。

まさに人間界の天花板のような存在。

しかし。

龍鰐尊者が支払わねばならない代価。

それは彼の命であった。

ブシュッ!!!

鮮血が飛び散る。

純金色の血が降り注いだ。

「一剣西來」は龍鰐尊者の頭部から体を貫き、尾部から抜け出た。万メートルの巨体を貫通したのだ。

そして。

「剣道」の威力が龍鰐尊者の体内で生気を消滅させ、元神さえも灰燼と化した。その巨大な龍の瞳の輝きは急速に失われていった。

妖庭尊者。

龍鰐。

陥落!

天啓宗宗主楊厲、一剣にて絶滅せり!

轟轟轟!!!

龍鰐尊者の巨体が落下し、数座の山峰を砕き、地を揺るがした。齊明も地面の激しい震動を感じ取った。

「す……すごい強さだ……」

齊明は深く息を吸い込んだ。天啓鏡化身を通じて、彼は「一剣西來」の威力を最初から最後まで目撃した。まさに一剣で妖庭尊者を絶殺したのだ。

無敵の威勢。

さすがは天啓宗の宗主。

「宗主様をお迎えいたします」

馮老ら四人の真伝長老。

そして十二峰の內門長老たち。

彼らは一斉に深々と礼を行い、非常に恭しい口調で言った。

「龍鰐尊者は既に死んだ」

シュッ!

齊明は天啓鏡化身を通じて一つの人影を目にしたが、その周りには霧が漂い、はっきりとは見えなかった。「後は任せる」

「はい」

「承知いたしました」

「宗主様の仰せのままに」

馮老たちは声を揃えて答えた。

次の瞬間。

その人影は虚空に消えた。

まるで最初から存在しなかったかのように。

「ふぅ……」

齊明は安堵の息を吐いた。「龍鰐尊者は既に宗主によって討たれ、残りの妖獣の長老たちや、潜入してきた魔修や放浪修士たちはもはや脅威ではない」

「今回の暴動は基本的に鎮圧されたと言えるだろう」

「ただし……」

齊明は少し考え込んでから言った。「龍鰐尊者の實力は確かに強大で、四人の真伝長老が力を合わせても辛うじて防ぐことしかできなかった」

「しかし天啓宗の實力はさらに測り知れず、底力は豊かだ。宗主の實力は強大で計り知れない。龍鰐尊者がこのように大々的に天啓盛會を混乱に陥れたのは完全な自殺行為だった。彼の本当の目的は一体何だったのだろうか?」

しかし。

齊明が現在知っている情報は少なすぎて、何も推測することができなかった。

「誰だ?」

突然。

齊明は一筋の気配を感じ、素早く振り向くと、青い衣装を着た長髪の青年が虚空から現れ、両手を背中で組んで前方に立っているのを見た。

齊明の目には、この青年からいかなる波動も感じられず、まるで凡人のようだった。しかし虚空から現れることのできる者が凡人であるはずがない。

「確かに良い素質の持ち主だ」

この長髪の青年は齊明には目もくれず、その視線は蘇軽音に向けられていた。端正な容貌、白く長い指、人の心を魅了するような瞳で、静かに蘇軽音を見つめていた。

思わず。

蘇軽音は頭を下げ、この長髪の青年と目を合わせる勇気が出なかった。

「私と来なさい」

長髪の青年は手を差し出した。その両手は白く長く、一点の瑕疵も見当たらず、まるでこの世で最も完璧な芸術品のようだった。「私が汝を弟子として受け入れよう」

「私は……私は……」

蘇軽音は何と答えるべきか分からなかった。

元鳳は既に息を殺していた。彼女は少しでも動くことを恐れていた。

「弟子の齊明、宗主様にご挨拶申し上げます」

この時。

齊明も気付いた。

龍鰐尊者が討たれたことで、天啓鏡化身への制限が解かれ、齊明は天啓鏡化身の能力を全て発揮できるようになり、目の前のこの長髪の青年から「一剣西來」と全く同じ気配を感じ取った。

そのため。

齊明は心中で大いに驚き、長髪の青年の身分を推測した。

自然と。

齊明は相手に礼を行った。

正直なところ。

齊明は本当に驚いていた。

なぜなら。

楊厲の身分と地位、そして彼の實力は、既に南域の最高峰に位置し、南域無敵の称号さえ持っていた。

しかし。

このような身分と地位、そして實力を持つ者が。

わざわざ自ら現れたのは。

ただ蘇軽音を弟子として迎えるためだけなのか?

思わず。

齊明は蘇軽音を深く見つめた。彼女の身分と来歴は本当に普通の農家の娘に過ぎないのだろうか?もっと深い身の上があるのではないだろうか?