第140話 奔放な想像!

妖刀が手から離れ、黒衣の少女は徐々に狂気の状態から目覚め、顔に再び茫然とした表情を浮かべた。

すぐに、彼女は何かを思い出したかのように、久野芳子の遺体の傍に駆け寄り、地面に跪いた。

彼女は相変わらず言葉を発せず、涙も流さなかったが、悲しみに暮れているのが見て取れた。

萧塵はようやく理解した。少女は冷淡なのではなく、ただ感情を表現することができないだけだった。

彼女の身には、きっと常人には理解できない経験があるのだろう。

萧塵は岩から飛び降り、赤い妖刀の前に着地し、それを抜き取った。

彼は明らかに妖刀から自分を拒絶する妖力を感じたが、彼の実力をもってすれば、この妖力を抑えることは容易だった。

刀身を軽く撫でると、そこには「村正」の二文字が微かに見えた。

「伝説の東瀛の妖刀村正か!」

萧塵も村正については耳にしていた。

しかし、それは作り話だと思っていたのに、実際に存在し、しかも並外れた力を持っていた。

妖刀はすでに主を得ており、萧塵には強引に奪う意思はなかった。

あの黒衣の少女については、先ほど明らかに妖刀の力に支配され、親を失った悲しみも重なって正気を失っていたのだから、萧塵は彼女を責めるつもりはなかった。

「刀を返すぞ、気をつけろよ!」

軽く投げると、妖刀は黒衣の少女の傍に飛んで戻り、萧塵は立ち去った。

最初から最後まで、彼はただ様子を見に来ただけで、何かに関わるつもりはなかった。

少女は久野芳子の遺体を抱きながら、萧塵の去っていく背中をぼんやりと見つめ、その姿が見えなくなるまで見送った。

……

北霊山は燕京の近くにあり、萧塵は燕京に立ち寄ることにした。

もちろん観光だけが目的ではなく、かつての玉笛門の真相についてもっと知りたかった。

以前、林萱穎が言っていたところによると、彼女の祖父の林興城は玉笛門の状況について深く知っているようだった。

無心堂は燕京で有名で、十数店舗を構える。萧塵は容易に一軒を見つけた。

近くの支店に入ると、中には客が少なく、店主が一人と、カウンター前でスマートフォンを触っているおしゃれな女性が一人いた。

「お客様、何かお探しですか?」

店主は親切に声をかけてきた。

萧塵は店内を軽く見回すと、骨董品店のような雰囲気で、装飾品を販売していることがわかった。