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第42章 高手

萬象樓の一階で、滕青山は刀を抱えて立ち、護衛たちを一切眼中に入れていなかった。

ドン、ドン……

護衛の一人が素早く階段を上り、萬象樓の樓主に報告に向かった。萬象樓は全部で三階建てで、一階と二階には多くの売り場が並び、三階だけは部外者の立ち入りが禁止されていた。この萬象樓の階段手すり脇の最初の部屋が、樓主が普段過ごす場所だった。

「師叔!師叔!」若い護衛が飛び込んできた。

「大声を出すな、体裁が悪い」部屋の中では、白衣の儒雅な中年の男が墨を振り撒き、絵を描いていた。

「師叔、下に達人が来ております。見たところ、とても恐ろしい相手のようです」護衛は急いで報告した。

「達人?」儒雅な中年の男は眉をしかめ、筆を置いて護衛を見た。「詳しく話せ」

護衛は慎重に説明した。「たった今、その剣客が武器を預けることを拒み、入り口の二人の師妹を吹き飛ばしました。そして我々師兄弟たちを、まるで眼中にないかのように無視しています。私たちは勝手な判断ができませんでした。また彼は、重要な用件で師叔にお会いしたいと申しております。それで……」

「軽はずみな行動は慎め」儒雅な中年の男は即座に言った。「お前たちは内勁を十数年修練しているが、経験が浅い。一般人相手なら何とかなるが、そういった恐ろしい達人相手では遠く及ばない。彼を上へ案内しろ。大師兄と二師兄も一緒に上がってくるように」

「はい、師叔」護衛はすぐに退出した。

儒雅な中年の男は心中で疑問に思った。「どこの者か分からないが、とりあえず様子を見るとしよう」萬象門は天下統一の野心はなかったが、彼らの'萬象樓'は九州全土の各都市に店を構えており、都市の規模に応じて、店舗の規模や達人の数も異なっていた。

この萬象樓では、この樓主だけが萬象門の核心弟子であり、後天極限の達人だった。

萬象門の門派全体の人員の半分以上が、九州大地の各萬象樓に分散していた。また萬象門は非常に裕福だったため、人材の採用も容易だった。

「ドン、ドン……」

足音が響いた。

若く見える剣客が二人の護衛と共に入ってきた。この剣客は一瞥しただけで書机の傍に座る儒雅な中年の男に目を固定した。