「鶴せんせい、この若者をどう思いますか?」雲海市中央病院の最も高価な集中治療室で、秦せんせいと雲野鶴だけが残っていた。
葉錯は秦家の英雄の令を受け取ったが、それを大したことと思わず、すぐに立ち去った。
雲霓は葉錯が去るのを見て、一旦ほっとしたが、秦扶蘇が彼を見送るように引っ張ってきた。雲霓は心の中で百パーセント嫌がっていたが、葉錯の意味深な笑みを見て、自分の「お好きにどうぞ」という言葉を思い出し、急に不安になり、仕方なく大人しく葉錯を玄関まで見送ることにした。
雲野鶴は秦せんせいの質問を聞いて、もちろん彼が葉錯のことを言っているのを理解した。まばらな髭をいじりながら、「秦せんせいは既に英雄の令を渡されたのですから、きっと心の中に答えがあるはずです。なぜ私に聞くのですか?」と言った。
秦せんせいは手を振って、「君の意見を聞きたいんだ」と言った。
雲野鶴は少し考えてから、「秦せんせいは、この葉家の若者の素性が気になるのですか?」と尋ねた。
秦せんせいは首を振って、「彼の素性は確かに知りたいが、それほど重要ではない。私たちは年を取り、もう長くは生きられない。未来は若い世代のものだ。扶蘇は落ち着きはあるが、鋭さが足りない。一方、この葉という若者は、見た目は物静かだが、骨の髄まで殺気を持っている。私よりも強い殺気だ。私は戦場で長年戦ってきたが、このような人物は初めて見た。これほどの殺気があれば、普通なら殺人鬼になっているはずだが、この若者は殺気を抑制し、自在にコントロールしている。本当に不思議だ。さっきあれだけの銃が頭に向けられても、まばたきひとつしなかった。これは私が若い頃でもできなかったことだ」
雲野鶴は「彼と扶蘇が互いを補完できると思われているのですか?」と尋ねた。
秦せんせいは頷いて、「その通りだ。扶蘇には王者の慈悲と儒雅さがあるが、十分な冷酷さがない。この葉という若者は覇気がある。もし彼と扶蘇が手を組めば、我が秦家の将来は、また違った様相を見せるかもしれない」
雲野鶴の目に一瞬の憂いが浮かんだ。「私は、この葉錯という若者は骨の髄まで傲慢で、人の下に付くことを潔しとしない性格だと思います。彼に扶蘇を補佐して秦家のために働かせるのは、難しいでしょう」