第40章 秦扶蘇の要求

手の中のものを見て、葉錯はやはり隠しておいた方がいいと思った。今日はどうも運が悪いようで、誰に出くわすかわからない。蘇雅に見られでもしたら、あの子は考えすぎる性格だから、どんな方向に想像を膨らませるか分からない。そうなったら自分では説明のしようがない。

葉錯はその下着の箱を懐に入れ、少し歩いたところで、向こうから自転車に乗った男子学生が微笑みながら近づいてくるのが見えた。

秦扶蘇!

この男子学生は、小説によく出てくるような、女の子に特に人気のあるタイプだった。優雅で温和な性格で、しかも大半の金持ちの息子のような見栄を張る様子もない。四大公子の他の三人のように、どこへ行くにも高級車を連ねて、お付きの者を従えているわけでもない。

秦扶蘇はいつも一人で、ゆっくりと自転車に乗り、まるで学園の中で最も普通の一員のようだった。しかし、どこへ行っても、彼の雰囲気は自然と人々の目を引きつけてしまう。

生まれながらにして目立たずにはいられない人というものがいる。彼らは言葉を発しなくても、一つの眼差しだけで、人々の心を服従させることができる。

秦扶蘇も明らかにそういう人物で、これは大家族の後継者に必須の資質だった。この資質のおかげで、葉錯のような反骨精神の持ち主でさえ、彼の言うことを聞かなくても、あまり嫌いになれないのだった。

葉錯と秦扶蘇は一度しか会ったことがなかったが、心の中では秦扶蘇の勇気を認めざるを得なかった。あの時、秦せんせいの病気は、治療しなければ、このまま放っておけば確実に命取りになるところだった。自分が意図的に自信なさそうな態度を取ったにもかかわらず、秦扶蘇は自分のことを全く知らない状況で、自分に賭けてきた。この度胸は並外れていた。

葉錯はこういう大家族には興味がなかった。規則や制約が多すぎると感じていたからだ。彼らと長く付き合えば、自分も窮屈になってしまう。しかし、秦家は確かに自分のいくつかの面倒事を解決してくれた。自分に好意を示してくれたわけだから、あまり彼らの顔を潰すわけにもいかなかった。

秦扶蘇は遠くから葉錯を見つけると、すぐに自転車を止め、穏やかな笑顔を浮かべて「おはよう」と声をかけた。