第87章 バスの中の悪女

また週末がやってきた。葉錯は大きく伸びをして、ベッドから起き上がり、洗面所へ向かった。

葉お母さんは驚いて言った。「どうしてこんなに早く起きたの？」

葉錯は答えた。「今日は用事があって出かけるんだ。」彼は母の眉や目尻に浮かぶ笑みを見て、自分が持ち帰った十萬元が家計に大きな支えとなり、いつも心配ばかりしていた母がようやく笑顔を見せるようになったのだと分かった。

葉錯は心が温かくなった。元々今日は秦家に行って、これからは秦家の手伝いでもして、そこからお金を稼ごうと考えていたのに、思いがけず十萬元を手に入れることができた。

十萬円は葉錯家にとっては天文学的な数字だった。この貧しく、不幸の多い家庭にとって、まさに雪中の炭のような助けとなった。

身支度を整え、葉錯が出かけようとしたその時、葉芊芊が突然部屋から出てきて、葉錯を見つめながら、少し敵意を含んだ表情で言った。「お兄ちゃん、どこに行くの？」

葉錯は答えた。「ちょっと出かけてくる。」

葉芊芊は冷たく鼻を鳴らした。「私も一緒に行く。遊びに行きたい。」

葉錯は言った。「用事があるんだよ。君が来て何になるの？」

葉芊芊はすぐに鋭く言い返した。「蘇雅とデートでしょう？」

葉錯は笑って言った。「そんなことないよ。」

「じゃあ雲霓と？」

葉錯は呆れて言った。「雲霓とはたまたま会っただけだよ。君たちが考えているような関係じゃない。」

葉芊芊は言った。「じゃあ、どの女の子と付き合ってるの？」

葉錯は本当に言葉を失った。心の中で呟いた：君の目には、僕はお嬢さんたちを誘惑する人間に見えるのか？

葉芊芊は近づいてきて、葉錯の腕にしがみついた。「どうでもいい。私も一緒に行く。でなければ、今日はプールに連れて行って。」

葉錯は眉をひそめた。「来週連れて行くから、今週は本当に用事があるんだ。」

「ダメ、今日がいい。」

葉錯は頭を抱えた。心の中で不思議に思った。以前は素直だった妹が、最近おかしくなってきている。蘇雅に告白してから、なぜか妙な敵意を向けてくるようになった——敵意というより、まるで子供が大人の注目を引こうとして、わざと理不尽な要求をするような感じだった。

葉錯は彼女の頭を撫でた。「お兄ちゃんが約束する。来週必ずプールに連れて行くから、今週は本当に用事があるんだ。」