楊おじいさまは当然唐墨秋の身分を知っていて、彼女が近づいてくるのを見ると、急いで挨拶の準備をした。彼らの楊家は雲海市ではまだ大きな家族と言えるが、華夏全体では毛一本にも値しない存在で、そうでなければあの秦社長にずっと取り入ることもなかっただろう。
楊おじいさまは自分の誕生日パーティーに唐墨秋が現れるとは全く思っていなかった。彼の目には、唐墨秋は彼のような身分では手が届かない存在だった。
彼は唐墨秋の出現に有頂天になっていたが、唐墨秋は彼を一瞥もせず、直接葉錯に近づいた。カードを渡した後、さりげなく皆に言った。「お話を続けてください。私はただ通りかかって、このカードの持ち主を見つけたので、返しただけです。」
楊おじいさまは目を細めて、唐墨秋が葉錯に黒いカードを渡すのを見て、心の中で非常に不思議に思い、それが何なのか分からなかった。
しかし、隣にいた秦社長は非常に驚き、そのカードを見て思わず口にした。「秦家英雄令?」
その場にいた多くの人々は驚いた:秦家英雄令?それは何だ?
楊おじいさまは疑い深い性格で、元々このぱっとしないカードを気にしていなかったが、今秦社長の言葉を聞いて、思わず全身が震え、雷に打たれたように、その場でほとんど倒れそうになった。
彼は恐怖に満ちた表情で葉錯の手にある薄いカードを見つめ、自分が聞き間違えたことを本当に願った。
しかし秦社長は次の瞬間、葉錯に向かって深々と一礼し、敬意を表して言った。「秦家英雄令を見ることは、秦家当主にお会いするのと同じです!私が目が利かず、あなたが英雄令主だと知らずに礼を尽くさなかったことをお許しください。」
周りの人々は秦家英雄令が何なのか知らなかったが、秦社長がこのように恭しく、おびえた態度を見て、皆はこれが非常に重要なものであることを理解した。
秦社長は秦家の傍系の子孫で、核心的な人物ではなかったが、秦という姓を頼りに雲海市で風雲を巻き起こし、楊家さえも彼に取り入らせていた。そして今、彼は恐れ慄きながら葉錯に礼をしている。葉錯はいったい何者なのか?